余命 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132556

感想・レビュー・書評

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  • 気がついたらヒロイン滴になった気持ちで読みすすんでいた。
    涙ぐむシーンが何ヶ所かあった。タイトルから予感ができるラストであるが周りの人からの助けや暖かい気持ちが伝わってきた。
    あまり悲しいエンディングのストーリーは好まないけど読後は清々しい気持ちだった。
    日常の有難さが思い知らされる。
    映像化されているから松雪泰子と椎名桔平が頭によぎりながら読んだ。

  • 女医が乳癌の再発の中、出産を決意し、残された時間を強く生きぬく物語。全体を通して夫婦愛も強く太く描かれている。
    「余命を知るのは、新しい時計をもつようなものだ」といった言葉にハッとする。
    主人公のふるさと奄美大島の大きな海が物語全体を優しくしている。

  • CATVにて映画を見た。最初からみたつもりが、どうやら、がん治療を行わずに出産に向き合うことを一人で決めたというシーンあたりから見た模様。どうしても全てが知りたくて、BOOKOFFに走りGET。一気に読み切りました。映画で印象に残っていたシーン、せりふ。案外原作そのままだったんだ・・と思いました。余命1〜2年という予想を覆す年月を生きていたこともあり、何だかほっとした。滴本人の生き方に対してはいろいろ思いもあるが、映画でも脇を固めた「かとうかずこさん」「宮崎美子さん」などの温かい人柄に感動した一冊となりました。

  • 滴の行動は正しかったのか?読み終えてから疑問がわいてきた。保井の言うように、医療の進歩によって妊娠中にがん治療をしながら生む方法があったかもしれない。しかし、彼女はそのカードをもっていなかった。きっと誰かに相談すればすぐにそのカードの存在に気が付いただろう。でも「ひとたび誰かに口にしてしまえば、自分は崩れる。先の見えない病人になってしまう」という恐怖が勝った。人間として生きるために彼女はもっとも苦しいカードを引いた。医師として、あと自らの寿命を数えたことも、彼女にそのカードを引くことを後押ししたのかもしれない。

    ここから先は、強がりな女性が、独りよがりな決断で、夫を傷つけ、結果的に周囲を巻き込み多大なる心配をかけてしまう。現実にそういう人がいればイライラしてしまうような話だ。それなのに、まるでノンフィクションを読んでいるかのような感覚を覚え、すっかり感情移入してしまった。それは滴がそのカードを引いたことを後悔していないからだと思う。彼女は自分のしたことに責任を負っている。それが、不遇な運命にすがすがしさを残している。

  • 松雪泰子さんの主演で映画化され・・・姉から借りて読みました

    結婚十年目にやっと妊娠
    しかし、同時に乳癌が再発

    自分も医者なのに なぜ 夫にも再発の事実を告げずに何の治療もしないまま子供を産もうとしたのか
    自分が死んでも この世に赤ちゃんを残したい
    その気も分からないでもないけど
    医学の知識もありながら10年以上も同じ時を過ごしたのに全く相談されず残される夫の事も 自分を産むことで命を失った と将来自分を責めるかもしれない 子供の事 
    考えたのかなぁ

    母子家庭に対する支援って結構あるけど 父子家庭に対する支援って薄い・・・って言うか殆ど無いよね
    ただ赤ちゃんだけ産んで残されても・・・育てて行くって並大抵じゃないよ
    お母さんならお腹の中で十月十日 少しずつ母になる準備が出来るけど お父さんは ある日突然 生まれました 今日からお父さんです って・・・
    お母さんと二人でもなかなかお父さんになりきれず虐待とか 色々あったりするのに
    旦那さんだって同じ医学部に通った経歴のある人ならなおさら
    相談するべきだったんじゃないのかなぁって・・・
    まあ、旦那さんも 生まれた子供も 強くまっすぐ聡明に生きていったみたいだから(そういう人たちと見越しての行動だった?)

    親しき仲にも礼儀あり
    もっと良く相談しようよって思っちゃいました
    せっかく縁あって家族になったんだからさぁ

    失う命もつらいけど
    残される命も つらいんだよ(;_;)

  • 何度読んでも、いい本だと思う。
    どうして滴はそんな選択をするのか?とは思うけど、
    彼女は彼女なりの幸せな人生を送った、と思える。
    谷村志穂、どの話も、結構重めだけど、好きです。

  • 色々と思った事もあるけど何か言い尽くされてそうだし
    お母さんを大事にしよう

  • 医者であるのに検診に行かなかったり癌を後回しにしたり・・・身勝手だなって最初は思った。残していくより残された人の気持ちを・・・て。でも私だったら?って考えてみた。多分・・・滴と同じ様な孤独な戦いを選ぶだろうなって。余命1年が6年生きれて命を掛けた息子の成長を少しでも見れた事、良かった。良介の滴を愛しく想いがイッパイで、その想いを息子に向ける想いが涙を誘う。結婚10年目にして妊娠、そして癌の再発。神様って居ないのかな..。病気を抱えて変わり行く身体でも滴と良介の男女として変わらない愛の表現が羨ましかった。

  • 自分もそうなったら治療しないんだろなと思ったけど、どれが正しいのかはよくわからない。
    DVDも見た。涙が止まらなかった。

  • 内容も文体もシンプル。
    ある意味、主人公は幸せではないのか。
    「わがままはわかってる。でも私にはそれぐらいこの子を産みたいの」みたいな感情は、理解できなくもないけれど、主人公の周囲の人たちの苦しさは半端じゃないだろうな。

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著者プロフィール

1962年北海道生まれ。北海道大学農学部卒。’90年『結婚しないかもしれない症候群』で鮮烈なデビュー後、’91年に処女小説『アクアリウムの鯨』を刊行する。自然、旅、性などの題材をモチーフに数々の長編・短編小説を執筆。紀行、エッセイ、訳書なども手掛ける。2003年『海猫』で第十回島清恋愛文学賞を受賞。

「2021年 『半逆光』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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