男子の本懐 (新潮文庫)

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感想 : 110
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133157

感想・レビュー・書評

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  • 戦後日本における金解禁のドラマを描いた小説。中心となる人物は2人。浜口雄幸と井上準之助。彼らは性格こそ正反対だったものの、魂から通じ合い、戦後の日本経済に大きく関与した。

    あらすじを見て、「経済小説」と理解した。今までそのような小説をあまり読んでこなかったため、興味を持って手にとってみた。

    まず、文量以上に密度が濃い。ページ数自体は450ページほど。しかし、参考文献は40点を超える。筆者の城山さんは相当に詳しく研究されたのだと思う。小説でもあって、史実でもある。サクサクと読める部分ばかりではなく、飲み下すのに時間がかかる箇所もあった。

    内容については、金解禁自体はあっさりと達成される。物語の1部分に過ぎない、という印象。

    それよりも浜口と井上の人生全体を丁寧に描いていく。子ども時代、学生時代、現役時代、そして晩年。戦中から戦後を生きた二人の大物の生涯を追体験するような1冊。浜口が斃れた後に井上が孤軍奮闘する様には胸が熱くなった。

    それから、経済だけではなく政治の描写も多い。経済と政治は不可分と分かりつつも、当時の政局や世論についてはあまり興味を持って読めなかったかもしれない。

    無機質な歴史的資料ではない1本の小説として、金解禁への道筋と2つの偉大な人生を描き切ったことに大きな価値を感じた。けれども、評価としては星3つと言ったところかな。淡々と描写される部分が多い。のめり込めない箇所が多かったことは否めない。

    間違っても、読書初心者にはオススメできない本。経済的な好奇心を持つ読者なら、感じるところがあるかもしれない。

    (書評ブログも宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E9%87%91%E8%A7%A3%E7%A6%81%E3%82%92%E4%B8%BB%E8%BB%B8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E6%88%A6%E5%BE%8C%E3%81%AE%E6%94%BF%E5%B1%80%E3%82%92%E6%8F%8F%E3%81%8F_%E7%94%B7%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%9C%AC%E6%87%90_

  • 2020年3月8日、読み始め。
    2020年3月18日、読了。

    濱口雄幸(1870~1931年)と井上準之助(1869~1932年)の二人が中心になり、1930年(昭和5年)1月に、金解禁を遂行。
    二人とも、強烈な経済政策のために、命を落とすことになってしまった。
    その辺の史実に基づき、書かれた作品。

  • ???……???????

  • 非常に重厚かつ濃密な物語で、じっくりと楽しむことが出来ました。金解禁という一大事に取り組んだ井上と濱口の絆や信頼関係が読んでいて気持ちよく、それだけに2人の迎えた結末が無念でなりません。また状況が止めようもなく悪い方向へ悪い方向へ転がってゆくのが丹念な筆致で描かれており、当時の日本が如何にしてあの凄惨な戦争へと転がり落ちて行ったのか、その原因の一端を理解出来たような気がします。この手のジャンルの小説を手に取ったのは初めてでしたが、楽しく読むことが出来ました。機会があればまたこういった作品を読んでみたいです。

  • 目先の政治にとらわれずこの国の将来を見据え、勤勉に真剣に政策を考え、政党政治にとらわれる周囲の雑音に惑わされずに生き抜いた、浜口雄幸。

    その浜口とは通ってきた道も、問題への解決の仕方も違う井上準之助。
    ただひとつ、ふたりが見るこの国の将来が重なったとき、命を賭けた彼らの勝負が始まった。

    何世代も前のことだからこそ今、評価される彼らの施策。

    劇的な場面でもないところで、ただただ涙がでてきた。

    こんな政治家が日本にいた時代があったのに・・。
    井上準之助も座ってきた日銀総裁という要職が、政治の道具にされて空席となるなんて、子孫の世代として恥ずかしい。

    この著者である城山三郎の真面目な人柄が伝わってくるような、淡々とした、けれど引き込まれる一冊だった。

    自分の子供の世代にも読ませていきたい作品。

  • 経済小説。舞台は第一次世界大戦後の混乱収まらぬ大日本帝国。主役は濱口内閣の濱口雄幸と井上蔵相。強い信念を持ってこの国を金本位制へと復帰させた。未来を見据える政治家は、いつの世も眼前利益重視の国民とマスコミに翻弄される。金解禁と現世の原発問題がダブる。

  • 熱い、理念を貫き通し暗殺に倒れる政治家の話。
    感動的ではあります。

    第二次世界大戦より前の日本の話ですが、この小説を理解するには、時代背景やその当時の金融システムを勉強し、理解してからでないと、あまり内容についていけません。

    僕の中では、小説とは、あくまでも一つの話であり、その中で完結しなくてはならないと思います。
    そういう、観点から見ると、この小説は、時代背景やシステムの説明が乏しく、不親切な小説のような気がしました。

  • R3.8.13~

  • 「静」の浜口雄幸と「動」の井上準之助。対照的な二人の人生が金解禁という大事業を前に交錯し、政治を動かしていく様を史実に基づいて生き生きと描いた傑作です。二人は対照的でありながら、働くことについての信念や経済観などの核心部分では通低している部分があるように思え、そこもまた面白いです。

    二人は、戦前、命をかけて軍部に立ち向かえた最後の政治家ではないかと思います。二人の死後、軍部に物言える政治家を挙げろと言われてもなかなか難しいのではないのでしょうか。

    日露戦争と太平洋戦争に挟まれた時代の、しかも経済の話ということで、日本の近現代史の中ではあまり陽の当たらない箇所をテーマにしていますが、二人の波瀾万丈の人生のお陰で飽きずに読むことができました。

    余談ですが、井上は現代の尺度で図ると明らかにパワハラ上司ですね。部下にはなりたくないです(笑)

  • 金本位制は、火の利用に並ぶ人類の英知という信念のもと、金本位制、金輸出の自由化にかけた濱口雄幸と井上準之助の生涯を描いた経済小説。道半ばで命を落とし完結出来なかったことは悔しかったろうと推察するが、軍の権力を少しでも削ぎ落とそうとするこの施策は当時の時代背景を考えると無理があったのかもしれない。しかし二人の思いが成就していたら先の大戦は回避出来た可能性が高い。多くの国民に知って欲しい史実である。

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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