硫黄島に死す (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133164

感想・レビュー・書評

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  • この本は、「硫黄島に死す」など7編が収められているが、読んだのは、「硫黄島に死す」だけ
    この作品が書かれた時期は意外と古く、昭和38年になる。
    著者は昭和2年生まれなので、36歳位に書かれた作品だ。

  • 小説の中に戦車部隊の話があり戦車に乗る兵士なのに戦車に乗れなかった兵士の話がありました。
    そこで日本軍がものすごく追い詰められていたことがわかりました。

  • 「城山三郎」の戦争小説を中心とした短篇集『硫黄島に死す』を読みました。

    「城山三郎」作品は昨年の夏に読んだ『一歩の距離 小説 予科練』以来ですね。

    -----story-------------
    〈硫黄島玉砕〉のニュースが流れた四日後、ロサンゼルス・オリンピック馬術大障碍の優勝者「西中佐」は、なお残存者を率いて戦い続けていた。
    馬術という最も貴族的で欧米的なスポーツを愛した軍人の栄光と、豪胆さゆえの悲劇を鮮烈に描いて文藝春秋読者賞を受賞した表題作。
    ほかに『基地はるかなり』 『軍艦旗はためく丘に』など、著者の戦争体験と深くかかわった作品全7編を収める。
    -----------------------

    この季節… 太平洋戦争に関する作品の読書が続いています、、、

    本作品は太平洋戦争に関する短篇5篇を中心に以下の7篇が収録されています。

     ■硫黄島に死す
     ■基地はるかなり
     ■草原の敵
     ■青春の記念の土地
     ■軍艦旗はためく丘に
     ■着陸復航せよ
     ■断崖
     ■解説 高野昭



    『硫黄島に死す』は、「西竹一中佐」の目を通して、昭和19年7月に戦車連隊の連隊長として満州から硫黄島に転進する途中の横浜港での場面から、昭和20年3月22日に硫黄島で自決するまでの期間が語られる物語、、、

    硫黄島の戦闘を克明に記録するとともに、「西中佐」の人生をフラッシュバックさせながら、彼の生き方や馬術競技におけるオリンピックでの活躍等が描かれています。

    映画『硫黄島からの手紙』では、「伊原剛志」が「西中佐」を演じていました、、、

    イメージがピッタリでしたね。



    『基地はるかなり』は、死を免れて終戦を迎えた特攻基地の設営隊隊長だった「羽田野」と特攻隊員だった少年兵「白沢」の戦後の人生を描いた物語、、、

    徴兵前に働いていたQ銀行に戻り頭取まで登り詰めた「羽田野」と、生き延びたことを申し訳ないと感じ「羽田野」に鬱屈した思いを感じながら、出世や金儲けとは縁のない人生を選び炭鉱夫として生活していた「白沢」… 「白沢」は、炭鉱の事故で片足を失い、炭鉱で売店の仕事をしていたが、炭鉱は閉山となり職を失い、働きに出て戻ってこなくなった妻を連れ戻しに行った先で殺人を犯し死刑となる。

    階段を駆け上った人生と転がり落ちた人生… 対照的な生き方でしたね、、、

    その違いは運だったのか、自信だったのか、何だったのかなぁ… 読んでいて心が苦しくなる作品でした。



    『草原の敵』は、終戦間際にソ連の参戦により満州の曠野で戦死した少年戦車兵「菊川」の最期を描いた物語、、、

    東洋平和に身を捧げるために従軍するが… 戦車兵にも関わらず守備隊には戦車は1台もなく、現地徴用された初年兵の教育係を任され、捕虜になった少年兵を処刑(銃剣での刺殺)させられるという、何もかも思い通りにならない状況下、ソ連の戦車部隊が攻め込んできて隊は蹂躙される。

    命があまりにも軽視される異常な社会に憤りと虚しさを感じました… 心が締めつけられるような作品でした。



    『青春の記念の土地』は、戦時中の少年時代に経験した離島での生活を回想する物語、、、

    南国ムードいっぱいでリゾート地として有名になった島での戦時中における悲話… 自分では制御できない運によって大きく人生が変わってしまうんだよなぁ と感じました。

    読んでいて辛くなる作品が続きますね。



    『軍艦旗はためく丘に』は、太平洋戦争末期の予科練における十代の若者たちの人間模様を描いた物語、、、

    パイロット養成目的で集められたはずなのに、配属された宝塚の予科練には訓練用の飛行機もなく、過剰なしごきやバッター(棍棒?)による体罰の日々… 厳しい訓練に耐えられず脱走や自殺が発生する中、淡路島への転属命令が下るが、移動中に輸送船が米軍機に襲われて沈没し、多くの命が奪われる。

    現在では中学生から高校生くらいの年代の子ども達が予科練に入隊して命を失うなんて… 子どもを持つ親の身として、親の立場で感情移入してしまいました、、、

    戦争の残酷さを改めて感じた作品でした。



    『着陸復航せよ』は、草創期の航空自衛隊でのパイロットを描いた物語、、、

    航空機事故やその捜索活動等を通じて、日米の考え方の違いや航空機への思いを描いた作品でした。



    『断崖』は、九州行きの特急に乗車した主人公が、乗車中に遭遇した轢死事故や同乗者の言動で感じたことを随想風に語る物語、、、

    時代や社会、風俗について辛辣な意見が述べられていますね… 高速道路の整備や列車の高速化により、移動がスピードアップすることへの警笛にもなっている作品でした。



    ここのところ、戦記モノを続けて読んでいるので、私自身の学びにはなっているのですが、、、

    ちょっと疲れたな。

  • バロン西という人物が興味深い。
    日本人らしからぬ振る舞い。
    しかし、日本人として死す。
    その心境はどういったものなのだろう。
    今現在の日本人に語ってもらいたい。

    基地はるかなり
    草原の敵
    青春の記念の土地
    軍艦旗はためく丘に 淡路島 彰忠碑
    着陸復航せよ
    断崖

  • 主に戦争に翻弄された人達を描く短編集。孤島にせよ大陸にせよ、戦地ならではの過酷さと異常さは読者をすぐに小説の世界に引き込み、ざらりとした後味を残す。表題の主役で、軍人として硫黄島に散った西竹一は、華族出身で五輪の金メダリストという肩書も持ち、小説もそのコントラストの激しさを活かした構成になっている。金持ちで女にモテるアスリートという側面を照らす事によって、家庭人としての彼、士官として絶望的状況の中で戦う彼が際立ち、読みながらどれが本当の西かと彷徨う感覚もあった。

  • 有名無名の人物の列伝。宝塚航空隊のささやかな悲劇。最後の『断崖』は戦後の話のようだが、変わる時代への警鐘。

  • ・東京2020大会で、「日本が馬術競技で89年ぶりのメダル獲得ならず」との報道を観て、では89年前にメダルを獲った人物のことが知りたくて読んだ。
    ・バロン西。男爵、西竹一。陸軍軍人としては異色の人物。白洲次郎と印象がかぶる面もあるが、自身の生死に関しては白洲と真逆の生き方だったように思う。

  • 短編集。

    硫黄島に死すだけ読破。他のも戦争の話らしいが、お国のための命と栄誉という教育で育ってきた軍人男子の思想が伝わる。
    主人公の西は、海外の価値観にも触れたことのある
    伊達男。儚さ、切なさを出さないように死地へ向かう情景が淡々と描かれている。
    硫黄島に着いてからと言うよりも、硫黄島への任を得てからの人生の回想の方が厚い。
    こういう小説に触れて、当時の雰囲気に触れられたので、戦時の歴史を読みたくなったらまた手に取ろうと思う。

  • 2019年3月26日読了。

    題名の「硫黄島に死す」はバロン西の話。
    本作のほか、数編を集めた短編集。

  • 2018/01/19 22:56:27

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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