- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101133195
感想・レビュー・書評
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太平洋戦争中の日本軍輜重部隊の戦友でもある冬木毅と山岡悠吉。戦後になると冬木は大手自動車メーカーの人事部長になり、山岡は下請け部品会社の社長として奮闘していた。
高度経済成長の波に乗り日本車の海外輸出に踏み切るも、日米自動車摩擦による不当差別、バッシングを受け悩む日本企業。憤る山岡とは対照的に沈黙を守る冬木。口を噤み、無理に耐えるのが勇者なのか?
日産・ホンダ辺りがモデルなのであろうが基本的にこんな事があっただろうなと言う物語となっている。現在の価値基準で考えればジャストインタイム等の工夫も含めて、いったいどれほどの人と企業の犠牲により日本自動車産業が発展したのかと暗い気持ちになるが、海外で日本車が火だるまにされ叩きのめされるニュースをしょっちゅう見ていた世代としては、こういう事実があったことを忘れてはならないと思うし次の世代の者にも知ってほしいと思う。
題名の「勇者」をどう受けとるかは読む者の受け取り方によるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017.5.22-46
城山三郎の著書だけに清水一行の系列のような内容を期待したがちょっと期待外れ。最後まで生き残る冬木に全く共感を覚えられず。
自閉症が間違って認識されているのは時代的に仕方ないものか? -
日本の戦後復興を支えた自動車産業に関わる者たちを、メンタル面を主体に描いている。
仕事面でST訓練やジャスト・イン・タイム制、貿易摩擦を受けた海外進出を主に描いているが、少し物足りない。他にも苦労があったであろう、もう少し他のエピソードも挿入してほしいと感じた。
それに引き換え、家庭面では嫁の病死や息子の事故死、娘の病気など多くの苦難が描かれ過ぎ、作品全体として中途半端な印象を持った。
実話に基づくものではあろうけれど。 -
下請は辛い。絞るだ絞り、乾いたタオルもなお、絞れば水が出る。湿度があるから。
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昭和50年代、日本車のアメリカへの輸出が増大して貿易摩擦が問題となった時代の自動車産業に関わる主人公2人をめぐる経済小説。大手自動車会社の管理職冬木と、その下請け中小企業の経営者山岡。山岡の人物像の描写として、「自分が会社にいない間、会社がどうなるか心配で仕方ない」、「自分は会社の誰よりも会社のことを愛している。しかし自分が仕事に没頭して頑張れば頑張るほど、社員が成長する機会を奪っているのではないかと悩む」など、私はこの山岡という人物に非常に共感を覚えました。半沢直樹みたいなスーパー社員は登場しません。でも等身大の登場人物に共感できる人は多いのではないかと思います。こんな人たちが日本の経済発展を支えて来たのだなと改めて実感させられます。
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城山三郎、面白い。サラリーマンのうちに読んでおきたい。
戦後自動車メーカーや下請けの、外圧に対して沈黙を続けながらも生き抜く
姿を描く。
思い通りには生きていけない悲哀。
センシティビティトレーニングで、生き方を見直す。何をしたいのか。とらわれない心。これでなんとか様々な不測の事態に耐えられるように。