わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133256

感想・レビュー・書評

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  • 10年先が見えたのではなく、こういう10年さきの世を作りたいという強い意志が描かれた一冊。
    なにがどこまで、事実なのかは気になりつつ。
    こういう人間関係、ざっくりこんな考え方、こういう世の中、事実ベースの業績はコレと描写とファクトをより分けつつ読むとより楽しい。
    個人的には豪農のボンボンかつ農夫と自分のあいだをうめたがったつながりで比較すると、川上善兵衛は葡萄を残し、大原孫三郎は事業と美術館を残した点が興味深い。

  • 難しかったけど読んで良かった。大原孫三郎という人物について知ることができて良かった。

  • 大原家の「孫三郎を偉大な人物だと誉めそやして欲しい」の依頼に応じ書き上げた身びいき本

  • 倉敷紡績、クラレの創業家、大原家。明治後期から昭和初期にかけてこの一地方企業を率いた大原孫三郎氏の半生をメインに、その息子である總一郎氏までを描いた城山三郎の小説。孫三郎氏の社会から得た富は全て社会に権限するべきだという「主張(意志)」と、戦乱期にあって会社を守り育てた剛腕経営者としての一面。ほぼ一個人が設立した、世界有数の美術館である大原美術館、今でいうシンクタンクにあたる社会問題研究所、地域に開かれた病院の建設など、業績を上げればキリがない。当時の経済学者が、「財を成したという意味では三井、住友、三菱に劣るが、財を用いて公共に資したという意味では、いかなる事業家よりも偉大であった」と絶賛。なぜ今まで知らなかったのかと思うくらいの大人物。

    鍵は「親友」と「家族」。親友を得ることが人生前半の大事業であることは、きっと私たち全員に共通することだろう。時には対立しながらも互いの志を共有し、互いを高めながら、理想実現に向かって切磋琢磨する間柄を「作る」こと。

    一方「家族」の方は、妾を囲ったり、宴会好きな孫三郎に対し、息子の總一郎は「清流」と言われるほどの潔癖さ。部下に問われ、「タバコは吸っていいが、吐いてはいかん」という性格がよく出ているユーモア。そんな息子を生涯最高傑作
    と言って憚らず、長期海外出張の際には何通も手紙を書き送る父親としての一面。もちろん、社長としての業務命令も欠かさない。「創業家の跡取りに必要なことは、先代の誤りを糺すこと」。これも深く納得。

    大原美術館行ってみたいし、他の伝記も読んでみたい。これは多くの人に知ってほしい。

  • 倉敷というまち、大原という傑人の底知れなさをすこしでも測りたかった。時代はいつだっていたずらだ。明治末期から、昭和初期の熱い風。

  • 城山三郎『わしの眼は十年先が見える』新潮文庫 読了。大原孫三郎の生涯を描いた小説。倉敷財界の重鎮にして社会的良心を極め、孤児院支援から労働環境の改善、各種研究所、美術館、総合病院に至るまで、その財力を惜しまず社会に還元した稀代な経営者である。その信念に達する人間形成の軌跡を辿る。
    2017/09/06

  •  城山三郎という作家を語れるほど知っているわけでもないが、この人の書くテーマは「志」なのだと思っている。「孤高の」と付け加えても良いのかもしれない。
     冒頭、素封家の一人息子大原孫三郎、気が強くわがままいっぱい、東京の学生時代に周囲からいいように金を毟り取られて高利貸しに一万五千円と、時の総理大臣の年収一年半分の借金を積み上げ、その整理に当たった義兄が高利貸しとの交渉中に急逝して悄然と倉敷に帰る場面がさらりと書かれている。
     単なるイントロではなく、この時期あっての、後の大原孫三郎と、読み進むうちに理解ができる。
     大金をポンポン出すのはカネが有り余っているからだろうと思っていたら、晩年所有の美術品を大量に売り払い多額の借金を返済する下りが出てきた。
     ぼくら凡人には到底思いも及びもつかぬスケールの人であった。

  • 現在の倉敷の基礎を作った大原孫三郎の生涯.
    変な感想かもしれないが
    裕福な家に育つことの大事さがわかる.
    お金の使い方に感心する.

  • 読んでおいて損はない

  • 城山三郎 による 大原孫三郎 伝記。社員重視の経営、大原美術館、孤児と貧困の支援に裏打ちされた 善の生き方が描かれている

    決断力の強さ
    *人の心は水と同じ〜急流でなければ 何事も転回できない
    *事業は何より度胸であり、決心である

    人に目を向けた経営
    *工場内に 職工教育部をつくり 学校教育に見合う勉強
    *金は使うためにあるのであって、人は金に使われるためにあるのではない
    *会社は 労働者と資本家が共に働き 利益を上げる場所

    息子 總一郎氏の創立記念日の挨拶(社員への最期の言葉)が素晴らしい
    *会社は〜存在理由があるか〜働く人が生きがい働きがいを感じているか
    *職場が人生の全てではないこと〜会社は配慮しなければならない

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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