わしの眼は十年先が見える: 大原孫三郎の生涯 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.59
  • (17)
  • (46)
  • (48)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 401
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133256

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 倉敷紡績、クラレの創業家、大原家。明治後期から昭和初期にかけてこの一地方企業を率いた大原孫三郎氏の半生をメインに、その息子である總一郎氏までを描いた城山三郎の小説。孫三郎氏の社会から得た富は全て社会に権限するべきだという「主張(意志)」と、戦乱期にあって会社を守り育てた剛腕経営者としての一面。ほぼ一個人が設立した、世界有数の美術館である大原美術館、今でいうシンクタンクにあたる社会問題研究所、地域に開かれた病院の建設など、業績を上げればキリがない。当時の経済学者が、「財を成したという意味では三井、住友、三菱に劣るが、財を用いて公共に資したという意味では、いかなる事業家よりも偉大であった」と絶賛。なぜ今まで知らなかったのかと思うくらいの大人物。

    鍵は「親友」と「家族」。親友を得ることが人生前半の大事業であることは、きっと私たち全員に共通することだろう。時には対立しながらも互いの志を共有し、互いを高めながら、理想実現に向かって切磋琢磨する間柄を「作る」こと。

    一方「家族」の方は、妾を囲ったり、宴会好きな孫三郎に対し、息子の總一郎は「清流」と言われるほどの潔癖さ。部下に問われ、「タバコは吸っていいが、吐いてはいかん」という性格がよく出ているユーモア。そんな息子を生涯最高傑作
    と言って憚らず、長期海外出張の際には何通も手紙を書き送る父親としての一面。もちろん、社長としての業務命令も欠かさない。「創業家の跡取りに必要なことは、先代の誤りを糺すこと」。これも深く納得。

    大原美術館行ってみたいし、他の伝記も読んでみたい。これは多くの人に知ってほしい。

  • 読んでいて大局観について考えさせられた

  • たまたま実家に帰省中に手にとった。
    ちょっと悩んでいたときに勇気をもらいました。
    今では当たり前と思うことを当時から実践していたとはすごい。
    今でもわかっていてもなかなかできない。
    正しいと思うことをやり遂げた人は素晴らしいです。

  • 大原美術館の創始者。目標にすべき人物。

  • 「わしの一生は、失敗の連続だった」
    (=常に現状に甘んじることなく、前を向き、上を目指す自分の意思に対して?)

    「わしの一生は、反抗の連続だった」
    (=仲間の意見を尊重するあまり?)

著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

城山三郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×