無所属の時間で生きる (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133331

作品紹介・あらすじ

どこにも関係のない、どこにも属さない一人の人間としての時間-それは、人間を人間としてよみがえらせ、より大きく育て上げる時間となるだろう。「無所属の時間」を過ごすことで、どう生き直すかを問い続ける著者。その厳しい批評眼と暖かい人生観は、さりげない日常の一つ一つの出来事にまで注がれている。人と社会を見つめてきた作家の思いと言葉が凝縮された心に迫る随筆集。

感想・レビュー・書評

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  • 20頁に、永井龍男さんのことが書かれている。
    一行の表現をどうするかで、一日中、机に向かっていたことも、あるようだ。
    それ故に、氏の文体はみがき上げられているようだ。


    92頁まで読んだ。

  • 故城山三郎氏は私の好きな作家の一人である。氏が描く男はどれも漢であり格好いいのだ。
    本書は、城山氏自身が「無所属」というキーワードを軸に書き溜めたエッセイである。城山氏は約10年間の大学教員時代以外はフリーの経済作家として、いわば社会的に無所属の立場で過ごされてきた方である。

    本書にて城山氏の造語が二つ、紹介されていた。

    ひとつは「一日一快」。一日にひとつでも、爽快だ、愉快だと思えることがあれば、「この日、この私は、生きた」と自ら慰めることが出来るということである。私も仕事などで凹み、ぐったりして帰宅することがあるが、そんなときに道端に咲く花が素敵だったり夕焼けが綺麗だったりすると、爽快に感じて疲れを忘れることがある。

    もうひとつは「珊瑚の時間」。一日を振り返って、どう見ても快いことがない場合の奥の手という位置付けである。晩餐後に短時間でもよいから寝そべって好きな本を読み、眠りに落ちていくというものであり、私も実践している。「今日は何ひとつ良いことがなかった、何をやっても上手くいかなかった」という日でも好きな本を読んだり、DVDを観賞したりしながら酒を飲むという至福の時を過ごすことがある。今後、私も「珊瑚の時間」と呼ぼう。

    本書で手に取ることの出来る城山氏の人柄の温かさは、生き馬の目を抜くような経済小説を書いてきたとは思えないほどである。読んでいてホッと心温まる内容だった。今度、久しぶりに城山氏の経済小説を読んでみよう。

  • 「慶弔積立金なんて」という章のなかに、「人生にあぐらをかき、安定した話などは、どうでもよい。出世した話や金もうけの話は、ときに卑しくひびく。結果はともかく、在るべき姿を求めて、いかに悩み、いかに深く生きたか。」と書かれていて、目が釘付けになった。

    会社員として働いていると、空を見上げる余裕もない日がほとんどだが、「この日、この空、この私」とつぶやけば、組織に属さない素の自分をとりもどして、1日を大切に味わえる気がした。

    1日を、黄金、銀、珊瑚、真珠の4つの時間に分割する考え方も参考になった。

    無所属は、著者のような大作家でさえ、不安でたまらない日があるなど、単に気楽で自由なわけではなく、生き方について考えさせられた。

  • 肩書から意識的に離れて、自分自身の時間を過ごすことの大切さをつづったエッセイ。

    出張時に空白に一日を作る、という点は実行してみたい。

  • 山元さん オススメの本
    2回目はいいかな…

  • ■時間

    A.4 つの時間
    ・真珠の時間:仕事のアイディアを練る、深夜の時間
    ・黄金の時間:仕事上のゴールデン・アワーとなる、9 時頃から1 時過ぎまでの時間
    ・銀の時間:資料調べや下書きなどをする午後の時間
    ・珊瑚の時間:新聞や郵便物に目を通したり、仕事とは関係のない本を読んだりする、夕方以降の時間退職後の自由時間の大きさにおびえる人もいるが、こうして分割すると、1 日という単位も相手にしやすい。

    B.戦後最大の財界人、石坂泰三は、出張の際、「空白の1 日」を日程に組み込んでいた。そしてその1 日を、どこにも属さない1 人の人間として、ただ風景の中に浸っていたり、散歩したりして過ごした。こうした無所属の時間は、人間を人間としてよみがえらせ、より大きく育て上げる時間といえる。

  • 無所属であるということは、自分を直に見つめる機会にあるということである。
    いかに生き、いかに精神的な満足(あるいは不満足じゃない)を得られるのか…
    作家となり数十年来、無所属であることを節目節目で振り返る。
    三十代、四十代、五十代、六十代…
    一日の中でも自分の時間をいかに生きるかで、それは大きく変わるのだから。

    “ほぼ完全な無所属の時間の中に、同じように居てどう生きたか、自分をどう生かしたか。
     その差がはっきり顔つきに出てくる”

    のだから、それはとても怖いものだ、とも著者は言う。

    “この日、この空、この私”

    一日一快、その日生きたと思えるような、そんな生き方ができればよいのだろう。
    自己を客観的に見つめ、真っ当な組織社会との接点に己の生き様を映し出そうとする、
    そんな珠玉のエッセイだ。

  • 久し振りにエッセイなるものを読んでみた。
    著者の日々の生き方、考え方に触れることができて面白かった。
    自分も社会人になってから、一度だけ無所属の時間を1ヶ月ほど過ごしたことがあり、そのとき感じた解放感、本来の自分に戻れた安心感とちょっぴりの不安感、そんなことを思い出した。
    「この日、この空、この自分」…。自分に立ち返る時間も必要ということ。

  • 数々の重厚な小説を残した城山三郎の大変楽しいエッセイ。「無所属の時間」とは必ずしも定年後の時間ではなく、組織に属さない作家という立場を意味しているようだが、還暦を控えて読むのは丁度良い。20 年以上も前の文章なのに古さは感じない。

  • 肩書きではなく一個人として生きていくことが一番人間らしい生き方なのだ。

    これが日本人(特にある世代の)にとっていかに難しいのかが伝わってくる。

    定年後にウツになる人も多いと聞くし。。。


    終身雇用なんて単語が歴史的出来事な単語になっても、そういうタイプの人間は少なくなくて、そういった点にも「秋葉原事件」の根っこはあるのではなかろうか。

    お前誰だ! という問いにハキハキと応えられるのは幸せなことなのだと思う。

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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