青べか物語 (新潮文庫 や-2-3)

  • 新潮社 (1987年1月1日発売)
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本 ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784101134031

感想・レビュー・書評

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  • その集落に住んでる人たちや関係のある人たちの事や出来事を
    作者の目線で綴った短編集なのですが、まぁ読み難かったこと!
    方言なんでしょうか?
    訛りそのままセリフに書いてあるので、慣れるまでホント読み難い。
    しかしながら慣れてしまえば、なかなか面白く興味深く読めました。
    教育も薄く無知な人々。
    昔ってどこもこんな感じだったんだろうなぁ・・・。
    決して誰もが幸せなわけではないのだけど、
    ただその日を一生懸命生きてる感じが印象深かったです。

  • 「青べか物語」名前と舞台が浦安だということは知っていた。青く塗ったのり採り用の船、べか船。「べか」は床を押すと「ペコペコ」いうくらいの薄い板で作ってあることから、「ぺこ」がなまって「べか」のなったのだという。そんな船の廃船を高く(修理費含め)売りつけられ、浦安の海に浮かべての漁師との関わり合いが昭和の匂いを奏でる。男女関係は元禄時代(いや平安時代か)を彷彿とさせる。そんな頃から在日コリアンはエネルギッシュだったのであるよ。東京ディズニーランドのカヌー漕ぎなんかも青べかでやれば、浦安の伝統が残せたのになぁ~

  • 田舎の人間を生々しく描いた小説は初めてかも知れない、自己中心的で、他所者に興味がなく、せこく狡く生き、上辺だけの優しさで他所者に接する態度など

    後書きにもあった通り、先生の言葉が殆ど全く記載されていないという点も印象に残る

    30年後の再訪、誰も自分のことを覚えていない

    非ユークリッドの定理
    平行線は交わらない
    しかし無限大の空間においては相交わる
    世間が広大であるからこそ、それぞれの座標をもった三人がめぐりあう機会も生れる

    〜しており ではなく 〜してい という表現

  •  山本周五郎 著「靑べか物語」、1964.8発行。著者は大15春、浦安にスケッチでぶらり訪れ、風景が気に入って3年過ごしたそうです。数えの23から26迄。この作品は浦粕(浦安)という根戸川(江戸川)下流の漁師町を舞台にした物語です。著者若き日の体験を小説風にアレンジされてます。青べかってなんだべと思いつつ、浦粕に住むたくましい男たち、女たちの暮らしぶりにぐいぐい引き込まれていきました。さしずめ昭和の初めのディズニーランドのようですw。体も心も素っ裸な女性が印象的です。短編連作、ある意味、異色作品だと思います。

  • これはなかなか味わい深い物語である。
    しかし、著者の他の作品と同様な「小説」を期待すると肩すかしを食らうかもしれない。
    大正末期~昭和初期が時代背景と思われるが浦安近辺の漁師町に数年滞在した「私」の日記のような物語で、当初その「私」は当然、山本周五郎その人であろうと読み進めるのだが、そうではないらしい事が少しずつわかってくる。
    この変の微妙な読者の心理変化が独特な感覚を味あわせてくれる。
    昭和初期なんて、もちろん私自身は知らない。
    しかし、その頃の郷愁やノスタルジーはなんとなくわかる。
    今、三丁目のなんとかとか昭和三十年代がもてはやされているけど、いつの時代でも昔を懐かしむ事は繰り返されていたんじゃないだろうか。
    この「青ベか物語」も、「私」が感じた当時の町の住人たちの生活ぶりを書き綴ることによって、読者それぞれが持つ郷愁を味あわせてくれるという独自の小説に仕立てられている。
    ちょっと難しいのですが、私のような年寄りには凄く楽しめる本でした。

  • 山本周五郎氏の自伝的小説といわれる。確かに、一人称の物書きの視点で書かれている。
    物語は、江戸川河口近くの地域が気に入って数年移り住んだ「先生」が、現地の人々とのやり取りや生活を描いたもの。手漕ぎボートのようなぼろ船を売りつけられ、それが青べかと呼ばれて地元の子にからかわれる。川岸に絵を書きにいったり、聞いたエピソードを小説に仕立てたりして、ほとんどは実際に著者が体験した実話のようだ。最後に、30年後に同じ土地を訪れてみた感想があり、興味深い。
    各小話は3ページほどと短く、独特の言葉遣いにも読むうちに慣れてくる。が、なかなか感情移入もできず、なにしろ地元の人が良く言えばしたたか、悪く言えば隙を見せるとすぐつけこむのに嫌悪があった。当時(1920年代か?)の生活を考えると仕方ないのかもしれないが。
    先日読んだ「赤ひげ診療譚」のほうが面白かった。

  • 読み始めてすぐに、浦粕が浦安、徳行が行徳だとピンときた。
    そう思うと、よりいっそう面白かった。
    田舎の庶民てこんなだったんだろうなあと身近に感じて楽しい。

  •  かつて短期間滞在した海辺の村での暮らしの日々の断片という仕立てで、その村の雰囲気を醸し出している。
     一つひとつのエピソードが、膨らませればそれぞれ小説のネタになる。淡々とした語り口が良い。
     後年その場所を再び訪れてみたら、自分の内にある風景はもはや過去のものであったのかという「郷愁」。
     読了後、「読み終えたぞー!」という高揚感はないが、しっとりと胸に残る。
     タイトルの、青く塗られた「べか船」が何故にその土地の子ども達にそんなにも嫌われていたのかの謎解きがないのが意外だった。

  • 「さぶ」に続いて読みました。庶民の生活が、垣間見れて面白く読めました。私自身が、大阪の漁師町育ち故、なんだかこんな人がいたような気がすると思わせる部分が多々ありました。

  • 夜、書き物をしている。何時なのか、時計がない。
    寒いが、暖房がない。
    ここがいい

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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