小説日本婦道記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134086

感想・レビュー・書評

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  • (再読)この四半世紀で価値観がだいぶ変容したように思う。この作品が発表された時代においても賛否両論あったのだが、現代においては更に受け入れがたい諸氏が大半なのではないだろうか...。ただ、私はつつましやかにけなげに生きていきたいと共感してしまうのです。

  • 婦道もまた武士道。

  • 時代小説好きの友人がお勧めしてくれた作家、山本周五郎。司馬遼太郎、藤沢周平は好きだけれどどちらかといえば「坂の上の雲」のような近代を舞台にしたものが好みなのでなんとなく読む機会が無かった。けれど、これほど読んでよかったと思った本は最近ないかもしれない。短編集だが、どの作品にも自分を見失わず凛と生きる美しい女性が描かれている。「女性はこうあるべき」という押し付けがましい本なのかとタイトルから早合点していた自分がちょっと恥ずかしい。日本語を母国語としてこの小説を堪能できる幸せに感謝。

  • この人生観、今の女性には案外受けるのかも。

    私の周りにはいないけど女性として、こうあって欲しいという人間が描かれている。また、男も、しんが一本通っていて、こういう男がいたから、明治維新も成功したのだし、近代日本の発展もあったのだなと痛感した。

    人の気持ちを思いやる大切さを作者は強調したいのでは。

    いずれにしても読後感は満ち足りていて、また周五郎の世界に浸りたいと思った。

  • 武家の中で家や夫、子を守り支えることに生きた女性たちを描いた、11編からなる連作短篇集。作者はこの中で、長年連れ添った夫さえも気付かないところにあらわれる日本女性の美しさを描こうとしたという。
    外から見れば不遇で貧しい武家に嫁いだ女たちが、立派に家を守り立てる。一見家に帰属し縛られているようでありながら、彼女たちの強い意思の中には“自立”が感じられ、作者の女性に対する敬意に溢れている。中でも、妻だけではなく夫までもが清々しい生き方をしている「風鈴」がいい。

  • 「山本周五郎」の連作時代小説『小説日本婦道記』を読みました。
    ここのところ「山本周五郎」の作品が続いています。

    -----story-------------
    千石どりの武家としての体面を保つために自分は極端につましい生活を送っていた「やす女」。
    彼女の死によって初めて明らかになるその生活を描いた『松の花』をはじめ『梅咲きぬ』『尾花川』など11編を収める連作短編集。
    厳しい武家の定めの中で、夫のため、子のために生き抜いた日本の妻や母の、清々しいまでの強靱さと、凜然たる美しさ、哀しさがあふれる感動的な作品である。
    -----------------------

    1942年(昭和17年)6月から終戦後の1946年(昭和21年)までに、『日本婦道記』のタイトルで雑誌『婦人倶楽部』を中心に発表された連作31篇のうち、以下の11篇が収録されています。

     ■松の花
     ■箭竹
     ■梅咲きぬ
     ■不断草
     ■藪の蔭
     ■糸車
     ■風鈴
     ■尾花川
     ■桃の井戸
     ■墨丸
     ■二十三年
     ■解説・年譜 木村久邇典

    『松の花』は再読でしたね… 厳しい武家社会の中で家族のために生き抜いた女性たちの、清々しいまでの強靱さと、凜然たる美しさや哀しさが溢れる物語、、、

    そんな中で特に心に残ったのは、以下の6篇かな。

    妻の死後、妻の酷く荒れていた手を握り、そして、生前のあまりに質素な暮らしぶりから、初めてその陰ながらの献身を知る『松の花』… 再読して良さがじんわりと感じられましたね、

    不運な出来事で良人を亡くした女が、一人息子を育てるために勤労し、箭竹に「大願」の文字を彫りつけていたことが主君の目にとまったことから、その女性の生きざまが明らかになる『箭竹』、

    夫の態度が豹変し、姑の態度もおかしくなり、結局は離縁という運びになってしまった女が、その後、それは故あってのことだと知り、実の両親からの義絶を覚悟した上で姑の面倒を見ようとする『不断草』、

    年老いた父と弟と貧しい暮らしをする女は、実は養女だった… 現在は裕福な生家では、以前の貧しいときに養女へ遣った娘を呼び戻したいと願い、生家に呼び寄せるが馴染むことができず、貧しくて一椀の粥を啜りあっても、親と子がそろって暮らしてゆくことを選らび、の貧しい暮らしに戻る『糸車』、

    訳があり下働きの女に暇を出さなくてはいけなくなったが、その女は離れたくないと言って聞かず、女の兄を説得して家に帰そうとするが、その道中、崖から落ちて頭を打ち、白痴のようになってしまい、口も利けなくなってしまう… やむを得ず、女を雇い続けることになるが、当主が亡くなり、その息子が当主となった際、あることを女に問い質し、衝撃の事実が判明する『二十三年』、

    その他の作品も、それぞれ感じるところはあったんですけどねー 人の道というか、人の生きている目的や存在意義… パーパスというのかな、それを考えさせられ、現代人が忘れてしまったもの、無理矢理忘れようとしていることを思い起こさせる等、読み手の心を揺さぶる何かがあるのが魅力ですね。

    『二十三年』の中で語られる、

    「人間にとって大切なのは「どう生きたか」ではなく「どう生きるか」にある」

    という言葉が印象に残りましたね。

  • 奇遇にも愛媛県旅行中にこの一冊を読む。
    二十三年、は伊予松山でのお話。

    哀しくも美しい武家に生まれた女の話。
    平等叫ぶ現代では受け入れられ難いものも多いものの、自ら律するため、或いは過去の日本を知る縁として、良い一冊だと思った。

    初めて祖先の墓へまいるのに遊山を兼ねるのは不作法だと思う、
    糸車 p121

  •  「人の道」を説く山本周五郎の名作「小説 日本婦道記」、1958.10発行、11話が収録されています。妻たる道(覚悟)を描いた「松の花」「不断草」、母たる道を示した「箭竹(やだけ)」、姑たる道を示唆した「梅咲きぬ」、娘の道を貫いた「糸車」・・・、感動しました。「糸車」「松の花」「不断草」、秀逸です。

  • もし無人島に1冊の本を持っていくことを許されるならこの本を選びます
    女性で生まれたことを誇らしく思える
    私にとって大切な1冊です

  • 「不断草」が一番好き

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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