さぶ (新潮文庫)

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レビュー : 227
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134109

感想・レビュー・書評

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  • バックパッカーのバイブルと言える『深夜特急』の著者・沢木耕太郎氏が、その旅の途上同じく旅をしている邦人と本を交換し、手渡されたのが本著。日本語に飢えた旅人同士のこうしたやり取りは当たり前にあったそう。それを読んだ沢木氏は懐かしさに泣きそうになった、と。
    わかる気がする。
    奉公先で覚えのない罪を着せられ人足寄場に送られた栄二がそこでの生活で人情の何たるかを身を以て知る。奉公先への恨みも消え、ずっと近くで支え続けてくれた親友「さぶ」の真情も理解する。日本人の心の粋が表れた作品。
    長い間日本を離れていた時に読んだら、泣くと思う。
    沢木氏の挿話を読んだ時に一度読んだはずだけれど、例のごとく気持ちいいほど何もかも忘れていた。読友さん本の感想を読んで本著の存在を思い出し、手に取って正解。名作だった。
    無宿者に住まいと仕事を与え更生・再生させる施設であった人足寄場。良い取り組みだと思う。そこで築き上げられる仲間同士の絆が羨ましいほど眩しく映った。

  • 勧められて読んだ山本周五郎2冊目。
    栄二の生きづらさというか不器用さにやや唖然としながらも、さぶが本当に真っ直ぐで救われる。「何故これほどまでに自分のことを気にかけてくれるのか」という言葉や行動でなければ、どん底の栄二を救えなかっただろうし、信頼を得られなかったと思う。

    自分も闘病して分かったが、どん底の時にも離れていかない友達が本当の友達なんだと。

    さぶのような天性の思いやりが軽んじられることなく、評価される世の中にしていきたいし、そういう美点を見抜ける自分になりたいと思った。

  • 敬愛するクリエイターであるFROGMAN氏が、ラジオ番組で、自身が影響を受けた一冊として挙げていて手に取った一冊。

    表具屋(布や紙で建具をしたてるお店)に仕える二人の青年さぶと栄二の青春時代小説だ。
    次々と訪れる裏切りや挫折を通じて、生きることの苦さがしみじみと描かれ、心に染みる。

    タイトルは「さぶ」だが、実際の主役はほぼ栄二であると言って差し支えないだろう。彼を通じて、愚直なまでにまっすぐに生きるさぶの生き様が見えてくる。
    しかし、そんなさぶにも一つの太い信念があったことが明かされるラストに驚く。

    市井の若者たちが、ぼろぼろに傷つくほどに輝いて見える。

  • 新聞の記事で、誰だろ・・・?(作者わかったらメモします)薦めていて、読む

    タイトルを「さぶ」にするところが、著者の優しさなのだろう。

    不器用でも生きること、人間味あふれる人柄が、相手の心を揺さぶる。

    なんでも上手くたちまわることより、何倍も周囲をひきつけるとかんじた。

  • 職人としての技量、人柄、男っぷりなど、“もってる男”栄二と、それに比べたら“もってない”が愚直なまでの真摯さを示す、さぶ。
    彼らを取り巻く強いおのぶと、大ドンデンをしでかすミステリアスな女性、おすえ。
    寄場という絶妙な場面設定もあり、「人間とは何か?」を深く、楽しく、考えさせられる。

  • 大好きな本です
    終わり方がまたいい。
    最後、栄二のさぶに対する心情が描かれる事によって、さぶの眩しい程の純粋さがより一層引き立っている。おのぶの言葉は、作者がおのぶの口を借りて伝えたい事なのかな、って。そのくらいメッセージ性が強く、いつまでも心に残る。おすえは・・同じ女として学びたい部分もなきにしもあらず(苦笑)

  • 今まで山本周五郎の作品は読んだことがなかったのですが、最近、山折哲雄の「こころの作法」という本を読んだ時、この小説がいち押しで紹介されていたので読んでみました。
    心根に響く小説である。若い時分に読んでおきたい内容でした。

    お話の設定は江戸時代でしょうか。
    表題となった“さぶ”と“栄二”というふたりの若い職人のこころの交流を軸に、人間の精神的な成長を追っていきます。
    表題の“さぶ”が中心ではなく、彼とは対照的な気の強い目立つ存在の栄二の心の動きを追っていくところがこの作品の“みそ”です。

    仕事ではぐずなさぶを励ましながら、自分の店を持つことを夢見ながら一生懸命働いてきた栄二にある日思いがけない人生の辛苦が襲いかかります。
    やけっぱちになり、どんどん堕ちていく彼に無償の友情で接するさぶ・・
    どんなに無視され邪険にされようとも常に栄二を気遣う心を見せます。
    栄二を取り巻く様々な人たち。善悪どちらにも染まるのが人間の性(さが)であること教えています。
    様々な場面を経て、彼の周りにはいつの間にか多くの人間の絆が出来ていきます。
    この小説で栄二が罪を着せられ一時期を過ごすことになる「人足寄せ場」は今でいうと、更生施設や刑務所のようなところでしょうか。牢屋で閉じ込めるなどの罪びとの扱いをせず、職のない浮浪者などを集めこれらに手職を与え、賃銀を貯えさせ機会があれば市中に出す・・ということですから、この時代の福祉政策が垣間見えて興味深い部分でした。
    感動的な場面は数多くありますが、私としては栄二を気遣ってくれる人足寄せ場のお役人“岡安喜兵衛”のことばが胸に沁みました。
    金木犀の花の香りのように、知らず知らずのうちに包まれる身近な人々の善意は大切なものです。

  • 「さぶのような人になりたい」とは本を貸してくれた彼女の評。

    読んでみると、タイトルは「さぶ」なのに、主役の名は栄二。
    読み終わると、あくまで栄二のサポート役に徹するさぶこそが本作の隠れた
    主役であって、タイトルはさぶ個人というよりも、「さぶ」という言葉で形容
    される大勢の人々を指していることが分かる。

    さぶの献身はけして無償のものではなく、栄二との間に築かれた、認め
    認められ、頼り頼られという関係に由来するものだと思う。
    寄場でのエピソードも興味深く、皆が皆器用に生きていけるわけじゃない
    と教えられた気がする。

  • 複数の映像化などもある人気時代小説。メッセージ性が高く、登場人物が生き生きとしており、とても読み応えがあった。巻末の解説も興味深い内容で、とても勉強になった。

  • 友人から勧められて本書を手に取った。本書は、対照的な二人の青年の友情を描いた物語である。本書の面白いところは、タイトルにある『さぶ』より、彼の友人の『栄二』の人生に着目して物語が進んでいくところである。生一本な栄二が冤罪によって人足寄場で生活するようになってから、彼の考え方や人格が変わっていく様子は読んでいて楽しい。彼の心情の変化が常に他者の優しさに触れた時に起こるというのも、本書のテーマである無償の奉仕を色濃く表現していると思った。終始人に尽くすさぶの人柄を考えれば、本書のタイトルが栄二ではなく『さぶ』であることも納得できる。本書は全体を通して、深く考えさせられることが多く、また所々にスリルあふれる展開もあり読んでいて全く飽きない。最後の10ページでは栄二の妻からの驚きの告白もあり、読んでいて鳥肌が立った。読後には余韻が残り、友情というのは本当に美しいものであると再確認させられた。私も他者貢献の精神を磨き、友人とより深い絆を築いていきたいと思った。

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著者プロフィール

1903年、山梨県に生まれる。本名は清水三十六(さとむ)。小学校卒業後、銀座の質屋で奉公、後に筆名としてその名を借りることになる店主・山本周五郎の庇護のもと、同人誌などに小説を書き始める。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表、文壇デビュー。その後、不遇の時代が続くが、時代小説作家として認められはじめる。戦中から戦後まで連載が続けられた『日本婦道記』(1942-1946)で直木賞に推されるが辞退。主な代表作に『樅ノ木は残った』(1958)、『赤ひげ診療譚』(1958)、『青べか物語』(1960)、『おさん』(1961)などがある。1967年、逝去。

「2020年 『雨あがる 映画化作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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