さぶ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134109

感想・レビュー・書評

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  • 「さぶ」とても良かったです。
    同じ年齢の二人(さぶと、栄二)を中心にした物語です。男前で頭も切れ、仕事も出来る栄二。

    愚鈍だが純粋で様々な辛さを耐え、栄二にひたむきな友情を持ち行動し続ける、さぶ。
    この二人の友情を軸にして
    栄二が、様々な体験をするなかで傷ついた心を回復していく再生の物語、成長物語です。

    この本、私の心にたくさん響きました。 

    どうしても、栄二の辛くて切ないやるせない、暗い気持ちになる描写が多い内容なのですがラストは、とてもよかったです。

    ハラハラドキドキし、驚きもあり、いつの間にか読み終えてました。
    そしてほんわかと、心が温まるようなラストでした。
    これが山本周五郎作品なのか!! と読み終わって感じる作品でした。

    瀬尾まいこさんの「図書館の神様」のなかに「さぶ」を主人公の清が読む場面があって、気になってもいました。それで、この本も本棚より取り出してその部分を読み返してみました。清の心情もより伝わって読むことができて、また心に沁みました。

    「さぶ」は、山本周五郎さんが六十歳の時(昭和38年)の作品です。六十三歳で、ご病気により急逝される前日まで、小説を書き続けた…。と巻末の年譜等に記載されてありました。
    改めて凄い作家さんなのだと知りました。

    この本を読んで私はコロナ禍で、しばらく疎遠になっている友達にとても会いたくなりました。
    連絡を取って会う予定を決めました。
    楽しみです~!

    • ひまわりめろんさん
      チーニャさん
      こんばんは!

      いいね〜
      すんばらしいね〜
      物語を読んで感じたことを実際の行動に昇華させる
      簡単なようで難しいのよ!
      でもきっ...
      チーニャさん
      こんばんは!

      いいね〜
      すんばらしいね〜
      物語を読んで感じたことを実際の行動に昇華させる
      簡単なようで難しいのよ!
      でもきっと読書ってそういうことなんよ!(謎に熱くなってる模様)
      楽しんできてね!
      2022/11/25
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん

      ひまわりめろんさん
      こんばんは!

      コメントしていただき嬉しいです(^^)
      感染対策をしっかりして、会ってきますネ。ありがとうございます
      ...

      ひまわりめろんさん
      こんばんは!

      コメントしていただき嬉しいです(^^)
      感染対策をしっかりして、会ってきますネ。ありがとうございます
      \(^-^)/
      2022/11/25
  • なんだかんだ言いながら土瓶さんとみんみんが薦めてくる本は全部読んでるひまわりめろんです(仲良しか!)

    そしてこの『さぶ』は土瓶さんとみんみんが共に薦めてくれた本、略して「土みん本」です
    ですがこの『さぶ』を手に取ったのはなにも「土みん本」だからというだけではありません

    そうです、近頃この『さぶ』を手に取る人の10人中15人は「山本周五郎賞って良く聞くし、確かに受賞作は秀作揃いだけど、その山本周五郎さんてどんな小説書いてたの?」って理由だと思うんですよね
    まぁ読んで見極めてやろうって上から目線ですよね

    赤いモビルスーツに乗ってる人の10人中23人は「見せてもらおうか山本周五郎の実力とやらを」って声に出して言ってると思うんです

    わたしもそうです(だって時代小説ってほとんど読んだことなかったんだよぅ)

    そして実際に『さぶ』を読んだ10人中27人は「これは山本周五郎賞できるわ」と思ったことでしょう
    わたしもそう思いました
    さすが連邦の白いやつ(違う)

    前半は英二の頑固さに辟易して読むのが進みませんでしたが、周りの人々の支えによって恨みに凝り固まった英二の心が溶けていくのにつれて読みやすくなって行きました
    そして頑固さといえばさぶのほうも相当に頑固です
    見方によってはさぶのほうが頑固かもしれない
    頑固者の二人が奏でる物語の結末は驚きもありましたが、変わらないさぶの純真さによってさらなる幸せな未来を予想させるすんばらしいものでした

    さすが「土みん本」!
    さすが連邦の白いやつ!(だから違うって)

    面白かった!!

    • 土瓶さん
      うん。言い直す。
      「壊滅」ではなく「絶滅」だったわ(笑)
      うん。言い直す。
      「壊滅」ではなく「絶滅」だったわ(笑)
      2022/10/23
    • みんみんさん
      よよよい、よよよいの伝七捕物帳が好き(〃ω〃)
      そして必殺シリーズね♪
      次に何読むか楽しみにしてるよ〜\(//∇//)
      よよよい、よよよいの伝七捕物帳が好き(〃ω〃)
      そして必殺シリーズね♪
      次に何読むか楽しみにしてるよ〜\(//∇//)
      2022/10/23
    • ひまわりめろんさん
      おお!伝七親分忘れてた
      テレビの前でよよよいやったよねー

      次はもう決めてるのだ
      おお!伝七親分忘れてた
      テレビの前でよよよいやったよねー

      次はもう決めてるのだ
      2022/10/23
  • ある日、身に覚えのない罪で捕まったら...
    想像しただけでも恐ろしい。もしそんなことが起きたら、人を信じられなくなるのは当然だと思う。
    男前で器用な英二。彼には叶えたい夢があった。結婚を考えている相手がいた。そんな明るい未来が一瞬で奪われてしまった。
    すべてを失いどん底に突き落とされた彼を、忍耐強く支え続けたのが、愚鈍だが誠実な"さぶ"という男である。彼は人足寄場にも何度も足を運び、英二を励まし続けた。
    さぶの愛情にも似た深い友情が胸にジーンとくる。
    人足寄場での経験を通して、英二の心にも少しずつ変化が見られるように。やがて、ひとりぼっちじゃないと気づく。
    謙虚さとは、人に支えられて生きているということを知ることで身につくものなのだと、英二の成長をみて思った。
    また、タイトルが主人公ではなくて『さぶ』というのがいいね。生きていく上で、さぶのような存在って必要だと思う。苦境に立たされたとき、道を踏み外しそうになったとき、自分を信じてくれる人の存在は大きいから。
    私にとっての"さぶ"はやはり両親かな。何があっても自分の味方でいてくれる存在。実家を出た後もそれは変わらない。いつか私も娘や息子にとっての"さぶ"になれたらいいな。

    • ひろさん
      おびさんありがとう。゚(゚´Д`゚)゚。
      おびさんありがとう。゚(゚´Д`゚)゚。
      2024/02/17
    • かなさん
      ひろさん、こんばんは!
      時代小説にちょっと苦手意識があるんですけど
      この「さぶ」は読みやすそうで
      内容もすごく良さそうなので、
      いつ...
      ひろさん、こんばんは!
      時代小説にちょっと苦手意識があるんですけど
      この「さぶ」は読みやすそうで
      内容もすごく良さそうなので、
      いつか、読んでみたいと思います(*^^*)
      ありがとうございます。
      2024/02/18
    • ひろさん
      かなさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます♪
      「さぶ」よかったですよ~!ブグ友さんたちがお勧めされる理由がわかりました。
      ...
      かなさん、おはようございます!
      コメントありがとうございます♪
      「さぶ」よかったですよ~!ブグ友さんたちがお勧めされる理由がわかりました。
      とても読みやすくて歴史的知識がなくても大丈夫!
      お勧めです( ˶^ᵕ^˶)b
      2024/02/18
  • 山本周五郎 著

    「おら、周五郎さんのこの作品に出会えて、   
     読めて本当に良かったと思うよ。」

    読んだ後の余韻が…心にひしひしと残っており、
    ”さぶ”が取り憑いたままですm(._.)m
    本当に良かった!
    この本を読めて本当によかったです。

    瀬尾まいこさんの『図書館の神様』の
    自身のレビューで少し触れていますが、
    絶対、読みたいと思っていたこの作品。
    「図書館の神様」の文中で主人公が中学生の図書部員に薦められて読んだ『さぶ』に甚く感動して、
    夜中だというのに、その感動を朝まで待てずに、電話して”本当に良かった!感動した!”って伝える場面があった。 
    そう、まさにそういうことなのよ(^^)
    本当に感動した!って読んだ直後にその気持ちを伝えたくなる。
    この本を教えてくれて、ありがとう!って感謝したい気持ち。
    改めて分かるなぁ〜って感じました。
    「図書館の神様」その作品も良くて、知り合いにあげてしまったのだけど…(・・;)
    この本は手元に大切に置いておきたいって思いました。
    この物語りを読んだ後、解説で山本周五郎さんについて略歴も含めて、詳しく書いてあるのを読みましたが、山本周五郎さん自身がこの『さ ぶ』という名作の中に生きていると感じられた。

    山本周五郎賞を獲った作品で、読んだものはどの作品も好きだけど(山本周五郎さんが選考したものではないにしろ…(・・;)今後は本人の作品をもっと深く掘り下げ追って他の作品も読みたいと思った。
    今更ながら…この本は読むべきものを読むべくして読めたって、そんな感動を与えてくれた作品だと思います。

    私ね…、ずっと前に働いていた会社で、定年退職された方で人脈を得る為に嘱託って言うのかな?(前職の会社は違う)呼ばれて少しの間、席をおいてたご年配の方がいらして、
    短い期間だけど、とてもよくしてくれて…流石に経験を積まれた人生に於ける大先輩と尊敬しており色んなことを教わった気がする。
    仕事を辞めた後、その方から、もらった葉書に
    『人間到る処青山あり』と書かれてあったのを、
    この本を読んで、フト思い出した。

    “どんなに賢くっても、にんげん自分の背中を
     見ることは出来ないんだからね”

    — お前が気づかず、また興味がないにしても
     この風には秋の爽やかな味がするし、
     もくせいの花の香が匂っている。

    どうなるのか?どうなってゆくのか?勘繰り、不安と心配が襲ってくるけれど…
    文中にある言葉が、正念場を生きる人たちの人生に、そっと優しく寄り添ってくれた。

    ラストは色んな思いが詰まっていたところに現れた声に、すべてのことが解き放たれ安堵した気持ち。 最後の最後に…胸が熱くなって、本当に泣かされましたよ。゚(゚´Д`゚)゚。

    • 土瓶さん
      ひろみさん、こんばんは~^^
      どうです。いいでしょう「さぶ」
      って、私が自慢する意味はないんですが(⁠^⁠∇⁠^⁠)⁠ノ⁠♪
      偶然私も「図書...
      ひろみさん、こんばんは~^^
      どうです。いいでしょう「さぶ」
      って、私が自慢する意味はないんですが(⁠^⁠∇⁠^⁠)⁠ノ⁠♪
      偶然私も「図書館の神様」→「さぶ」という道をたどりました。
      きっと瀬尾まいこさんも「さぶ」が大好きなんでしょうね。

      どうしてあんなに良いのか、わからないけど( ・∀・)イイ!!

      小説って不思議ですね~。
      2022/11/09
    • hiromida2さん
      どんちゃん、こんばんは〜⁎ˇ◡ˇ⁎
      「はい!『さぶ』めちゃくちゃ良かったです(。◠‿◠。)♡
      お〜!どんちゃんも「図書館の神様」→「さぶ」の...
      どんちゃん、こんばんは〜⁎ˇ◡ˇ⁎
      「はい!『さぶ』めちゃくちゃ良かったです(。◠‿◠。)♡
      お〜!どんちゃんも「図書館の神様」→「さぶ」の
      道を辿ったんですね♪ 何だか嬉しい☆♪
      喜んでいるヾ(´▽`*)ゝ
      瀬尾さんと3人とも大好きなんだヾ(✿❛◡❛ฺฺ)
      きっと。
      本当にどうしてあんなに良いのか…分からないくらい
      心の真髄をついていたんでしょうね(*゚∀゚*)
      読めて本当良かったです♪
      2022/11/09
  • 読み終えて一言。
    『えええええぇぇぇーーーーー‼︎』
    しばらく驚いた後、
    驚きを通り越して、思わず笑ってしまった。
    これだから小説は面白い‼︎

    そしてこの最後の場面はどうして、こんな風に終わるんだろうと考えると…
    やっぱり最後の場面があるからこそ、主人公が過去の出来事を本当に乗り越え、怒り怨み復讐の気持ちを昇華できた事が、より伝わってくる気がする。

    ブク友さんの感想を読むのがとっても好きだ♪
    読んでいると"いいね"を5個ぐらいつけたくなる感想に出会う事がある。
    『さぶ』はそんな素敵な感想がきっかけで手に取った作品。

    その感想を書いたのはブク友の"おびのり"さん。
    感想がいつも自然体で文章が知的でなんだか格好良い!
    おびさんのイメージは、どんな難解な本にも果敢に向かっていく感じから、
    "本の荒野"に立つ腕利きの女ガンマン!(←私の中の格好良いって意味です!)

    タイトルの『さぶ』は主人公ではなく
    主人公、栄二の心の拠り所となる人物。

    『頭のいい、おとこまえの、苦労知らず。』そんな栄二は身に覚えのない盗人の罪で人足寄場に送られる。怒り、怨み、絶望の中、心を固く閉ざし、復讐を誓う。

    けれど徐々に、寄場の仲間との関係や命を落とすような危険な体験、
    そして、さぶやおすえ、おのぶの変わらない思いが栄二を変えていく。

    まるで人生の教科書を読んでいるような
    感覚だった。
    誰の人生にも突然起こり得る、裏切りや不幸の連続を栄二の人生を通して追体験しているよう。大切な言葉に全部蛍光ペンでマークしたい!

    中盤から、色々な登場人物が繰り返し栄二に、一人ぼっちじゃないと伝える。

    『もしも栄さんが、わたしたちの恩になったと思うなら、わたしたちだけじゃなく
    さぶちゃんや、おのぶさん、おすえちゃんのことを忘れちゃあだめだ。おまえさんは決して1人ぼっちじゃあなかったし、これから先も、1人ぼっちになることなんかあ決してないんだからね。』

    『…自分ひとりだけじゃあなんにもできやしない、能のある1人の人間が、その能を生かす為には、能のない幾十人という人間が、目に見えない力をかしてるんだよ…』

    たったひとりで生きてるんじゃないんだよね。
    家族や大切な人への感謝、忘れないでいたいな(^^)

    • 松子さん
      くまさん、おはようございます♪
      『読みたい本は多く、人生は短い』
      本当に、その通りですね!
      読みたい本も、見たい映画も、行きたい所も、聞きた...
      くまさん、おはようございます♪
      『読みたい本は多く、人生は短い』
      本当に、その通りですね!
      読みたい本も、見たい映画も、行きたい所も、聞きたい音楽も、『〜したい』に満ち溢れてます。
      時間、大切に使わなければですね(^^)
      『さぶ』は、くまさんの金木犀のお話を胸に
      新しいコメントを楽しみにしてます♪
      2022/03/20
    • おびのりさん
      Kumaさん、松子さん おはようございます。
      本当にレビューご紹介頂いていて、ありがとうございました。
      大切な作品を私と松子さんの落涙で、濡...
      Kumaさん、松子さん おはようございます。
      本当にレビューご紹介頂いていて、ありがとうございました。
      大切な作品を私と松子さんの落涙で、濡らしてしまったらごめんなさい。
      まっちゃん、又、なんか読もうね。
      たまには、路線違うのも良いよねえ。
      2022/03/20
    • 松子さん
      ん?ブックリスト?
      ベストレビュー? 
      お恥ずかしながら、わたしタイムラインのブックリストって、いつも飛ばしていて(汗)

      いま見返したら、...
      ん?ブックリスト?
      ベストレビュー? 
      お恥ずかしながら、わたしタイムラインのブックリストって、いつも飛ばしていて(汗)

      いま見返したら、くまさんが、おびさんのレビュー紹介されてました!
      おびさん、すごーい♪
      そして、あまりブクログの活用方法を知らずに、くまさん、ごめんなさいね>_<
      またいつか、くまさんにとって大切な本の感想を書いた時には、素敵なお話聞かせて下さい♪

      ふひひ。
      うん、おびおび、またなんか読みたい♪
      なんだか、皆のおかげで読書の世界が広がって嬉しい!(^^)
      2022/03/20
  • 山本周五郎の胸つまる時代小説。
    女子高生時代からの久々の再読。(いつの話よ)

    江戸下町の表具屋で、少年時代からの職人仲間の、栄ニとさぶ。栄ニは、利口で器用、さぶは、愚鈍だが誠実。お互いを支え合い生きていた。

    栄二は盗みの濡れ衣をかけられて、仕事を失い自暴自棄となり、人足寄場での生活となってしまう。

    栄二の頑なな態度と心を、取り巻く人々の人情が和らげていく。

    「一人では生きていけない」悟った彼は、過去の遺恨をたち、さぶと新妻との生活を始めるー
    で、本当のラストは、読んで泣いてほしい。

    ストーリーの主人公は「さぶ」ではない。だが、自身の能力・生い立ち全てを受け入れて誠実に愚直に生きるさぶが、心揺さぶる。

    物語の流れが上手い。エピソードごと、の栄二の心情変化の積み重ねが読み止まらない。
    初読の時、平日の就寝前、ちょっとだけと読み始め、明け方まで泣きながら読んでしまい、大変なことになった一冊。

    • yhyby940さん
      初めまして。「いいね」ありがとうございます。この作品は50年近く昔、高校時代に舞台鑑賞で演劇を観ました。大泣きをしました。すぐに本を読んで、...
      初めまして。「いいね」ありがとうございます。この作品は50年近く昔、高校時代に舞台鑑賞で演劇を観ました。大泣きをしました。すぐに本を読んで、また泣き。近年、映画を観て泣きました。また再読しようと思いました。ありがとうございます。
      2023/05/05
    • おびのりさん
      yhyby940さん、コメントありがとうございます。
      この作品は、思い出深く、必ずもう一度読むだろうと長年本棚に残してあり、ようやく再読した...
      yhyby940さん、コメントありがとうございます。
      この作品は、思い出深く、必ずもう一度読むだろうと長年本棚に残してあり、ようやく再読したものです。そして、たぶん、もう一度読むだろうと本棚に戻しました。
      でも、最近の文庫本見たら、紙質も良くなり字も大きくなっているような。。。新しく買った方が読みやすいかも。とは思ってます。^_^
      きっと又、感涙できると思います。
      2023/05/05
    • yhyby940さん
      きっとですね。
      きっとですね。
      2023/05/05
  • そういえば……「山本周五郎賞」は良く聞くけど、山本周五郎さんの作品をちゃんと読んだことはなかったなー、と手に取る。
    「赤ひげ~」の作者くらいにしか印象がありませんでした。
    これもブグログでどなたかがお勧めされていた本。
    紹介してくれた方々に感謝。

    江戸時代。
    一人前の職人になるために共に奉公をする英二とさぶ。
    英二は男前で賢くて腕も度胸もあるが、対照的にさぶは見栄えも悪く愚鈍で小心で腕もパッとしない。
    ある日、英二は得意先で盗人の濡れ衣を着せられ、怒りのあまりに暴れてしまい、人足寄場送りとなってしまう。そして……。

    小難しく、説教臭い話なのかなと思いましたがそんなことはなく、とても読みやすくておもしろくて、ほとんど一気に読んでしまいました。
    さすがは大衆文学。
    最後は少し驚かされましたが、嫌な終わり方にならずに良かった。
     
    タイトルは「さぶ」ですが本書の主人公は英二です。
    英二の目を通して「さぶ」を表す、とかではなく、あくまで英二の物語であることに少々落胆しました。
    なぜなら自分はどちらかと言えば「さぶ」側の人間だからです。
    なぜタイトルを「さぶ」にしたんだろう?
    そこに意味があったのだろうか。

    ここからレビューを追加します。
    あの場面をもう一度読みたいな。あそこはどうだったろう。と、パラパラ再読しました。
    やっぱり名著。惹き込まれます。あとをひきます。
    かなりのネタバレにもなるので、未読の方は絶対に読まないでください。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    解説にもあるとおりこれは、主人公英二の受難と再生の物語。その過酷な過程を通じて再生をはたした彼は、人間として厚みを増すこととなります。
     
    英二は長く「この首にかけても」と復讐を誓い、そのことだけにとりつかれてしまうが、時が癒していきます。
    人足寄場送りになった人たちとの交流が癒していきます。
    英二は自分の才覚で人足寄場で中心的な存在となり、多くの人に慕われるほどになります。
    そこにさぶの存在はありません。
    しかし、人足寄場で事故に遭い、死にかけたときに彼が呼んだのはさぶでした。
    「助けてくれ、さぶ」と。
    「さぶ、助けてくれ」と。
    普通であれば「おっかあ、助けて」とでも言うところでしょう。
    幼いころに家族を火事で亡くした彼が最後の最後に呼んだ者は、さぶでした。
    うすのろで、あほうで、能無しで、気が弱くて、英二も心の中でよく罵倒しているさぶです。
    英二に対して異常なまでの献身ぶりをみせるさぶ。
    彼の心の中ではさぶは、絶対に揺るがない味方。一本の太い柱となっているのでしょう。
    英二の再生の手助けとなるのは先に述べたとおり、時と人足寄場で出会った人々です。
    しかし、さぶというしっかりした足場があったればこそ、だったのではないでしょうか。
    いずれは再生したとしても、少なくともさぶの存在が英二のそれを早めたのは間違いないでしょう。
     
    わからないのは英二の妻となるおすえのことです。
    よくもまあ……。
    最後の最後まで秘密にできたものです。
    彼女はじぶんのせいで過酷な目に遭う英二をどう見ていたのでしょう。
    それでも、と願う女心なのでしょうか。
    愛しい男を得るために、愛しい男を奈落へと落とし、口をつぐむ。
    もしもそれで英二が再生をはたせずに的外れな復讐にはしり、火付けや、人を殺めてしまったりしたなら。
    彼女はどうしていたのだろう。
    そうはならずにほんとうに良かった。

  • 山本周五郎と言えば、「山本周五郎賞の人」というイメージしか無かった。が、友人から「さぶ」を薦められて、良い機会だと思って読んでみた。

    なんとこの物語の主人公は「さぶ」ではない。さぶの幼馴染の「栄二」だ。

    しかも、江戸の暮らし的なシーンはあっさり終わってしまう。さぶと栄二は、職人見習いのようなカタチで働いていたが、栄二が無実の罪で追放されてしまう。という急展開。

    栄二は人足寄場へ送られ、「様々」な人たちと共同生活を送ることになる。人足寄場での描写は胸に来るものがあった。外の世界では居場所がない人たちが、ここでは怯えずに生きられると言う。

    それはノンフィクションの「刑務所しか居場所がない人たち」を思い出した。

    いなくなった栄二を探すために駆けずり回ったさぶ、そして、栄二を想うおすえ。二人の優しさにも泣けるものがあった。

    復讐に燃えていた栄二が、作業中の事故により死に瀕する。その時、無意識に「助けてくれ、さぶ…」と呟いたのが泣けて仕方なかった。(235ページ 個人的には、本作の中でのクライマックス。

    物語の終盤に真相が明らかになるのは、ちょっと予定調和的というか。まぁ、うん、と言った感じ。悪くはないけど。

    総評として悪くなかった。シンプルな時代の人々の直球な想いや、栄二の人間的な成長を丹念に描いたのはとても良かった。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E4%BA%BA%E6%83%85_%E3%81%95%E3%81%B6_%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%91%A8%E4%BA%94%E9%83%8E

    • kuma0504さん
      名作です。
      毎年、金木犀の花の香りが何処からかしてくると、いつも「さぶ」を思い出します。
      名作です。
      毎年、金木犀の花の香りが何処からかしてくると、いつも「さぶ」を思い出します。
      2021/02/03
    • chuckさん
      コメントありがとうございます
      季節とともにある読書の思い出、とても素敵です
      コメントありがとうございます
      季節とともにある読書の思い出、とても素敵です
      2021/02/03
  • 沢木耕太郎さんの「深夜特急」でバックパッカーが泣きそうになったというレビューを見て、読み始めた。
    確かに「深夜特急」のが中にも登場してきて、このシーンかと思った。
    実際は図書館になかったが、青空文庫にあることが分かり、初めて青空文庫で読むことになった。
    空き時間に少しずつ読み進めたので、なかなか読み終えることが出来なかった。
    どこかに書いてあったが、さぶが主人公ではないのに、なぜ題名が「さぶ」なのか読み終えて、改めて納得した。
    愚直なまで、正直に生きるさぶ。
    少しは見習いたいと思う。

  • 斉藤孝「読書力」の中で紹介されていた中高生向け20冊のうちの一冊。時代小説を読むのは久しぶりだった。

    歌川広重の表紙と、背表紙の「大丈夫。独りじゃないよ。」に、この語りかけ沁みる。。と思いながら読書。

    話の主人公はどうみても栄二。それなのにどうして著者はタイトルを栄二の無二の友、三郎の「さぶ」にしたのか、物語を読み進めていくうちにその理由がわかる。…分からない人は分かるまで読み込むべき本。

    無実の罪を着せられ自暴自棄になる栄二を、ひたすらに支える、シャバの人たち、さぶ、おのぶ、おすえ、人足寄場の、与平、赤鬼、役人。
    「受難」と「赦し」で栄二が成長していく中で、栄二と周りの人々の心の動きが、胸に迫る。
    「独りじゃないんだよ。」と繰り返し色んな人に心から励まされ、人間力を高めていく栄二。
    私だったら、…許せないかも。私、まだまだ人間力が足らない。修行せねば。。
    ひとかどの人間の周りには、それを支える人たちがたくさんいて、支えられる人、支える人、どちらもが輝いている、生きることは素晴らしいんだと思わせてくれる本。山本周五郎万歳!

    *************
    学校司書時代に、この本を読まなかったことを後悔した。学校図書館こそこの小説に出て来る「人足寄場」だ。本があるところには、自分も含め、はみ出し者が集まるのを肌で感じて来たが、この小説を読みながら、図書室に来てくれていた子どもたちのことを思い出した。図書室、本を読んだり、勉強したりするだけじゃなくて、みんなの心の休憩室、心が成長する場所であって欲しいと願っていた。学校図書館に集う子らに幸あれ。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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