さぶ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.96
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本棚登録 : 2014
感想 : 249
  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134109

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎と言えば、「山本周五郎賞の人」というイメージしか無かった。が、友人から「さぶ」を薦められて、良い機会だと思って読んでみた。

    なんとこの物語の主人公は「さぶ」ではない。さぶの幼馴染の「栄二」だ。

    しかも、江戸の暮らし的なシーンはあっさり終わってしまう。さぶと栄二は、職人見習いのようなカタチで働いていたが、栄二が無実の罪で追放されてしまう。という急展開。

    栄二は人足寄場へ送られ、「様々」な人たちと共同生活を送ることになる。人足寄場での描写は胸に来るものがあった。外の世界では居場所がない人たちが、ここでは怯えずに生きられると言う。

    それはノンフィクションの「刑務所しか居場所がない人たち」を思い出した。

    いなくなった栄二を探すために駆けずり回ったさぶ、そして、栄二を想うおすえ。二人の優しさにも泣けるものがあった。

    復讐に燃えていた栄二が、作業中の事故により死に瀕する。その時、無意識に「助けてくれ、さぶ…」と呟いたのが泣けて仕方なかった。(235ページ 個人的には、本作の中でのクライマックス。

    物語の終盤に真相が明らかになるのは、ちょっと予定調和的というか。まぁ、うん、と言った感じ。悪くはないけど。

    総評として悪くなかった。シンプルな時代の人々の直球な想いや、栄二の人間的な成長を丹念に描いたのはとても良かった。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E4%BA%BA%E6%83%85_%E3%81%95%E3%81%B6_%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%91%A8%E4%BA%94%E9%83%8E

    • kuma0504さん
      名作です。
      毎年、金木犀の花の香りが何処からかしてくると、いつも「さぶ」を思い出します。
      名作です。
      毎年、金木犀の花の香りが何処からかしてくると、いつも「さぶ」を思い出します。
      2021/02/03
    • chuckさん
      コメントありがとうございます
      季節とともにある読書の思い出、とても素敵です
      コメントありがとうございます
      季節とともにある読書の思い出、とても素敵です
      2021/02/03
  • 沢木耕太郎さんの「深夜特急」でバックパッカーが泣きそうになったというレビューを見て、読み始めた。
    確かに「深夜特急」のが中にも登場してきて、このシーンかと思った。
    実際は図書館になかったが、青空文庫にあることが分かり、初めて青空文庫で読むことになった。
    空き時間に少しずつ読み進めたので、なかなか読み終えることが出来なかった。
    どこかに書いてあったが、さぶが主人公ではないのに、なぜ題名が「さぶ」なのか読み終えて、改めて納得した。
    愚直なまで、正直に生きるさぶ。
    少しは見習いたいと思う。

  • バックパッカーのバイブルと言える『深夜特急』の著者・沢木耕太郎氏が、その旅の途上同じく旅をしている邦人と本を交換し、手渡されたのが本著。日本語に飢えた旅人同士のこうしたやり取りは当たり前にあったそう。それを読んだ沢木氏は懐かしさに泣きそうになった、と。
    わかる気がする。
    奉公先で覚えのない罪を着せられ人足寄場に送られた栄二がそこでの生活で人情の何たるかを身を以て知る。奉公先への恨みも消え、ずっと近くで支え続けてくれた親友「さぶ」の真情も理解する。日本人の心の粋が表れた作品。
    長い間日本を離れていた時に読んだら、泣くと思う。
    沢木氏の挿話を読んだ時に一度読んだはずだけれど、例のごとく気持ちいいほど何もかも忘れていた。読友さん本の感想を読んで本著の存在を思い出し、手に取って正解。名作だった。
    無宿者に住まいと仕事を与え更生・再生させる施設であった人足寄場。良い取り組みだと思う。そこで築き上げられる仲間同士の絆が羨ましいほど眩しく映った。

  • 表具、経師職人として働く栄二。ある日出入りしてる店で盗難という無実の罪を着せられ出禁になる。何年もの付き合いで人間関係も構築できていたはずなのに冷たい態度。説明を求めようにも相手にされず問題を起こし人足寄場へ飛ばされる。
    人間をすっかり信じられなくなった栄二は寄場で誰とも喋らず一人を貫く。しかし時が経つにつれて今まで見えていなかった世界が見えるようになる…
    栄二の物語だけどタイトルが友達の方の名前「さぶ」を使ってるのが味がある。

    人間、生き方、生活…と教訓に満ちた話で良かった。人足寄場というシステムがあるのもこれで知った。画期的!

  • 勧められて読んだ山本周五郎2冊目。
    栄二の生きづらさというか不器用さにやや唖然としながらも、さぶが本当に真っ直ぐで救われる。「何故これほどまでに自分のことを気にかけてくれるのか」という言葉や行動でなければ、どん底の栄二を救えなかっただろうし、信頼を得られなかったと思う。

    自分も闘病して分かったが、どん底の時にも離れていかない友達が本当の友達なんだと。

    さぶのような天性の思いやりが軽んじられることなく、評価される世の中にしていきたいし、そういう美点を見抜ける自分になりたいと思った。

  • 敬愛するクリエイターであるFROGMAN氏が、ラジオ番組で、自身が影響を受けた一冊として挙げていて手に取った一冊。

    表具屋(布や紙で建具をしたてるお店)に仕える二人の青年さぶと栄二の青春時代小説だ。
    次々と訪れる裏切りや挫折を通じて、生きることの苦さがしみじみと描かれ、心に染みる。

    タイトルは「さぶ」だが、実際の主役はほぼ栄二であると言って差し支えないだろう。彼を通じて、愚直なまでにまっすぐに生きるさぶの生き様が見えてくる。
    しかし、そんなさぶにも一つの太い信念があったことが明かされるラストに驚く。

    市井の若者たちが、ぼろぼろに傷つくほどに輝いて見える。

  • 新聞の記事で、誰だろ・・・?(作者わかったらメモします)薦めていて、読む

    タイトルを「さぶ」にするところが、著者の優しさなのだろう。

    不器用でも生きること、人間味あふれる人柄が、相手の心を揺さぶる。

    なんでも上手くたちまわることより、何倍も周囲をひきつけるとかんじた。

  • 職人としての技量、人柄、男っぷりなど、“もってる男”栄二と、それに比べたら“もってない”が愚直なまでの真摯さを示す、さぶ。
    彼らを取り巻く強いおのぶと、大ドンデンをしでかすミステリアスな女性、おすえ。
    寄場という絶妙な場面設定もあり、「人間とは何か?」を深く、楽しく、考えさせられる。

  • 大好きな本です
    終わり方がまたいい。
    最後、栄二のさぶに対する心情が描かれる事によって、さぶの眩しい程の純粋さがより一層引き立っている。おのぶの言葉は、作者がおのぶの口を借りて伝えたい事なのかな、って。そのくらいメッセージ性が強く、いつまでも心に残る。おすえは・・同じ女として学びたい部分もなきにしもあらず(苦笑)

  • 今まで山本周五郎の作品は読んだことがなかったのですが、最近、山折哲雄の「こころの作法」という本を読んだ時、この小説がいち押しで紹介されていたので読んでみました。
    心根に響く小説である。若い時分に読んでおきたい内容でした。

    お話の設定は江戸時代でしょうか。
    表題となった“さぶ”と“栄二”というふたりの若い職人のこころの交流を軸に、人間の精神的な成長を追っていきます。
    表題の“さぶ”が中心ではなく、彼とは対照的な気の強い目立つ存在の栄二の心の動きを追っていくところがこの作品の“みそ”です。

    仕事ではぐずなさぶを励ましながら、自分の店を持つことを夢見ながら一生懸命働いてきた栄二にある日思いがけない人生の辛苦が襲いかかります。
    やけっぱちになり、どんどん堕ちていく彼に無償の友情で接するさぶ・・
    どんなに無視され邪険にされようとも常に栄二を気遣う心を見せます。
    栄二を取り巻く様々な人たち。善悪どちらにも染まるのが人間の性(さが)であること教えています。
    様々な場面を経て、彼の周りにはいつの間にか多くの人間の絆が出来ていきます。
    この小説で栄二が罪を着せられ一時期を過ごすことになる「人足寄せ場」は今でいうと、更生施設や刑務所のようなところでしょうか。牢屋で閉じ込めるなどの罪びとの扱いをせず、職のない浮浪者などを集めこれらに手職を与え、賃銀を貯えさせ機会があれば市中に出す・・ということですから、この時代の福祉政策が垣間見えて興味深い部分でした。
    感動的な場面は数多くありますが、私としては栄二を気遣ってくれる人足寄せ場のお役人“岡安喜兵衛”のことばが胸に沁みました。
    金木犀の花の香りのように、知らず知らずのうちに包まれる身近な人々の善意は大切なものです。

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著者プロフィール

1903年、山梨県に生まれる。本名は清水三十六(さとむ)。小学校卒業後、銀座の質屋で奉公、後に筆名としてその名を借りることになる店主・山本周五郎の庇護のもと、同人誌などに小説を書き始める。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表、文壇デビュー。その後、不遇の時代が続くが、時代小説作家として認められはじめる。戦中から戦後まで連載が続けられた『日本婦道記』(1942-1946)で直木賞に推されるが辞退。主な代表作に『樅ノ木は残った』(1958)、『赤ひげ診療譚』(1958)、『青べか物語』(1960)、『おさん』(1961)などがある。1967年、逝去。

「2020年 『雨あがる 映画化作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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