季節のない街 (新潮文庫 や-2-13)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 新潮社 (1990年1月1日発売)
3.69
  • (41)
  • (33)
  • (55)
  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 426
感想 : 43
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (359ページ) / ISBN・EAN: 9784101134130

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 連作短編集。
    たまらなかったのは「親おもい」。
    放蕩者で、いつも金を無心にくる兄、母のこと、弟妹のこと、家のことを考えて、コツコツと貯金する真面目な弟。でも母は、そんな兄を可愛く思っている。
    そんな中、また金を無心にきた兄に嫌気がさして弟が家を出た後、兄が交通事故に遭う。病院に行くと、もう助からないほどの大事故。枕元には、自分の通帳と印鑑が置いてある。母が自分に黙って、兄にやったことを知る…。
    気持ちがすれ違う。
    兄にとりすがる母を残し、弟は病室を出る…。

    でも山本周五郎は、やはり長編のほうが好き。

  • とある貧しい街が舞台。山本氏はそこに暮らす人びとに寄り添い、愛情を持ってその姿を描いている。もし、私がこの街の住人のひとりだとしたら、他の住人のことをどのように思うだろうか。きっと井戸端会議の噂を信じ、偏見を持ったり、物事の外側にばかり目がいってしまったりするだろうと思う。山本氏は人びとの内側にある本当の気持ちと外側からそれをみる人びとの視線の両方を巧みに表現していると思う。誰からも気づいてもらえない本当の気持ちというものもある。辰弥が人知れずお金をためていた理由、平さんが昔受けた心の傷、かつ子が岡部少年を刺した本当の理由…。真実は容易く知ることはできない、いや、知ろうとしていない自分がいるのではないかと思う。それに気づかされたような気がした。
    あとがきにあるが、この物語は実際に山本氏が目で見て耳で聞いて集めた素材をもとに書かれた。だからこれほどまでに細かく多様な人間模様を描くことができたのだろう。それだけでなく、山本氏が人生でいろいろな苦労(水害や地震、戦争)を経験してきたからこそ、このような味わい深い作品ができたのだろう。
    貧困という背景があるため、どことなく悲しい印象が漂うが、ところどころ笑ってしまう場面もある。個人的に、ばんくん、光子、たんばさんがツボ。ちょっとおかしな人がたくさん出てくる。でもみんな一生懸命生きていて、愛らしい。また本を開いて会いに行きたくなる。

  • プールのある家とがんもどきが心に残った。
    子供のような大人と大人のような子供。
    イトーヨーカドーでごはんを食べながら読んだ。
    平日のお昼は小さい子供を連れた母親が多く、子供の声が響いている。
    子供のときは理不尽なことが多かったような気が、ふとした。
    だから子供に戻りたいかと思うと、戻りたくはないと思う。
    どうして叱られたのか分からないとき、
    どうしてそれをやらなければならないのか分からないとき。
    私は、子供だから、まあいいかと思うようなことはしないと、ふと思った。

  • 2024年にテレ東で宮藤官九郎が脚本を担当して「季節のない街」で放映されたので観た。その時は山本周五郎原作とは知らず、変わった内容だと思った。濱田岳演じる六ちゃんは何なんだろう?とか、頭の中はクエスチョンマークだらけだった。
    これが山本周五郎作品だと知って、早速読んでみた。山本周五郎作品はこれが初めて。画像で内容を観てしまっているので、これがあの場面だったのか、と思い出しながら読了。

    じっくり味わって読んで見ると、昭和を思い出す。私の住んでいた所にはこのような「街」はなかったが、近所付き合いや井戸端会議などはあったし、お葬式は自宅で執り行い、近所が手伝いに来てくれた。お隣さんに宅配が届いて不在でもうちが代わりに受け取ったりして、人と人がつながっていた。なんかノスタルジーに浸る。

    また、NHK の「72時間」にもなんかつながるものがある。

  • 山本周五郎先生の短編集。

    昭和30~40年位でしょうか、その頃の貧民街で起こるあれこれ。

    好みとしては、江戸時代ものがよい。

  • 本当の意味で愛するとはどういうことなのか。
    自分の価値観はまだ未熟なのだなあと痛感した。
    というか、生きているうちに山本周五郎先生の価値観を理解できる日が来るのだろうか。
    ひたむき、とかまっすぐ、とかの純度を最高に高めると山本周五郎先生に行き着くような気がする。

  • つまらんから読むのを止めた。

  • 黒澤明の「どですかでん」を見て、原作が山本周五郎のコレと知って、凄く読みたくなった。

  • うーん、よいなぁ。

    黒澤監督による映画化作品を幸運にも銀幕にて鑑賞させてもらったのはいつのことだろうと掘ってみると2010年のことだった。そら記憶も薄れるわ…ということでやはり読了後に再鑑賞したくなった。インパクトの強すぎるタイトル、「どですかでん」(1970) とは題名がずれていたことも理由のひとつか、手が届くまでにしばらくかかった次第。

    数本の黒澤作品がご縁で読み始めた山本周五郎作品であったが映画化作品群を眺めるとぼちぼち他にも手を染めつつある。小林正樹監督作品「いのちぼうにふろう」(1971)、小泉堯史監督作品「雨あがる」(2000) あたりがそれらで、次に観たいのは新藤兼人脚本の「青べか物語」(1962) だろうか。これは今回の開高健による解説のなかに『「季節のない街」は「青べか物語」の現代版。』という言葉があったのとWikipediaにあった「設定を現代に移している」というネタバレとが関係しているかも。

    比べるためにも先に原作読まないと!

  • 一つの貧民街の住人がそれぞれ出てくる短編集。決して羨ましくはないのだけれど、その人間性の高貴さにはっとしてしまうような人も中にはいて。

  • 年をとってくると、「山周」はぐっっと心にしみてきてクセになる。
    「親おもい」「僕のワイフ」普通に考えたら絶対非のない人もワリをくうし、それぞれの事情やら感情がある。人生そんなもんだよね。1+1=2ばかりではない。

  • 山本周五郎の、戦後の裏街を舞台にした短編。
    架空の列車がみえる少年、夫を入れ替える妻達、悪妻をもつ顔面神経症の男性、などなど多彩な顔ぶれ。
    それぞれの人生、それぞれの価値観が面白かった。

  • 小銭を無造作に投げ入れているうちにいつの間にか一杯になってきた瓶、今やその存在すら忘れられ掛けている瓶が我が家にあるんだけど、この街の住人はその瓶の中の一円玉や十円玉に焦点を合わせたような物語だった。時代背景がよくわからないところもいい。これが江戸明治昭和、どの時代の出来事だと想像してもしっくりくるようなゆるさ。(でも決して平成ではない。)
    ラストの一文には痺れまくった。
    このところアタリ本が続いていて嬉しい。続けて「青べか」を読むとしよう。

  • 平成25年9月1日読了。

  • 貧民街に生きる人々を描いた短編集です。

    -そこではいつもぎりぎりの生活に追われているために、虚飾で人の眼をくらましたり自分を偽ったりする暇も金もなく、ありのままの自分をさらけだすしかない。-

    現実の世界に「普通の」人間なんていないように、この物語に出てくる人物一人一人もまた個性的。
    個性的なんだけど、読み進めていくうちに、出てくる人物一人一人に愛着を持たされてしまう。「自分をさらけだすしかない」この街の人々に憧れているのかもしれない。

    苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である

    「よしよし、眠れるうちに眠っておけ」とそれは云っているようであった、「明日はまた踏んだり蹴ったりされ、くやし泣きをしなくちゃあならないんだからな」

  • 昭和の時代にはこんな街があちこちにあったような感じ。近所同士が裸の付き合いをする。スマートでないが、滑稽でもあるが、極めてまじめにがむしゃらに生きている。そして生き生きしている。「がんもどき」がよかった。12.12.1

  • 2012.6.8(土)¥105。

    紛失を補充購入。

  • 僕のワイフ:謎を残す終わり方、想像をかきたてられます
    親おもい:悲惨な感じがわざとらしい
    プールのある家:ある種のネグレクトか?
    ビスマルクいわく:とても面白いです
    がんもどき:悲惨な感じがわざとらしい
    ちょろ:大変面白いです
    肇くんと光子:サイコパスものか?木○佳○被告とか連想されます

  • 貧民街に住む個性的な人達の日常生活を描いた作品。

    貧しさゆえ常にありのままをさらけ出して生きる人達の姿は悪く言えば下品かもしれないですが、虚飾だらけの現代人には羨望を覚えるところもあります。

    人物は個性的で面白いのですが、可笑しさの中にもどこかに哀しみがあり、その妙な現実味がこの作品の不思議な魅力の一部になっていると感じました。

  • 20111120 そのまま読めば救いの無い話ばかり。現実は苦行の連続ということか。

全36件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本周五郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×