季節のない街 (新潮文庫)

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レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134130

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  • 連作短編集。
    たまらなかったのは「親おもい」。
    放蕩者で、いつも金を無心にくる兄、母のこと、弟妹のこと、家のことを考えて、コツコツと貯金する真面目な弟。でも母は、そんな兄を可愛く思っている。
    そんな中、また金を無心にきた兄に嫌気がさして弟が家を出た後、兄が交通事故に遭う。病院に行くと、もう助からないほどの大事故。枕元には、自分の通帳と印鑑が置いてある。母が自分に黙って、兄にやったことを知る…。
    気持ちがすれ違う。
    兄にとりすがる母を残し、弟は病室を出る…。

    でも山本周五郎は、やはり長編のほうが好き。

  • とある貧しい街が舞台。山本氏はそこに暮らす人びとに寄り添い、愛情を持ってその姿を描いている。もし、私がこの街の住人のひとりだとしたら、他の住人のことをどのように思うだろうか。きっと井戸端会議の噂を信じ、偏見を持ったり、物事の外側にばかり目がいってしまったりするだろうと思う。山本氏は人びとの内側にある本当の気持ちと外側からそれをみる人びとの視線の両方を巧みに表現していると思う。誰からも気づいてもらえない本当の気持ちというものもある。辰弥が人知れずお金をためていた理由、平さんが昔受けた心の傷、かつ子が岡部少年を刺した本当の理由…。真実は容易く知ることはできない、いや、知ろうとしていない自分がいるのではないかと思う。それに気づかされたような気がした。
    あとがきにあるが、この物語は実際に山本氏が目で見て耳で聞いて集めた素材をもとに書かれた。だからこれほどまでに細かく多様な人間模様を描くことができたのだろう。それだけでなく、山本氏が人生でいろいろな苦労(水害や地震、戦争)を経験してきたからこそ、このような味わい深い作品ができたのだろう。
    貧困という背景があるため、どことなく悲しい印象が漂うが、ところどころ笑ってしまう場面もある。個人的に、ばんくん、光子、たんばさんがツボ。ちょっとおかしな人がたくさん出てくる。でもみんな一生懸命生きていて、愛らしい。また本を開いて会いに行きたくなる。

  • プールのある家とがんもどきが心に残った。
    子供のような大人と大人のような子供。
    イトーヨーカドーでごはんを食べながら読んだ。
    平日のお昼は小さい子供を連れた母親が多く、子供の声が響いている。
    子供のときは理不尽なことが多かったような気が、ふとした。
    だから子供に戻りたいかと思うと、戻りたくはないと思う。
    どうして叱られたのか分からないとき、
    どうしてそれをやらなければならないのか分からないとき。
    私は、子供だから、まあいいかと思うようなことはしないと、ふと思った。

  • 自分の価値観はまだ未熟なのだなあと痛感した。

  • つまらんから読むのを止めた。

  • 黒澤明の「どですかでん」を見て、原作が山本周五郎のコレと知って、凄く読みたくなった。

  • うーん、よいなぁ。

    黒澤監督による映画化作品を幸運にも銀幕にて鑑賞させてもらったのはいつのことだろうと掘ってみると2010年のことだった。そら記憶も薄れるわ…ということでやはり読了後に再鑑賞したくなった。インパクトの強すぎるタイトル、「どですかでん」(1970) とは題名がずれていたことも理由のひとつか、手が届くまでにしばらくかかった次第。

    数本の黒澤作品がご縁で読み始めた山本周五郎作品であったが映画化作品群を眺めるとぼちぼち他にも手を染めつつある。小林正樹監督作品「いのちぼうにふろう」(1971)、小泉堯史監督作品「雨あがる」(2000) あたりがそれらで、次に観たいのは新藤兼人脚本の「青べか物語」(1962) だろうか。これは今回の開高健による解説のなかに『「季節のない街」は「青べか物語」の現代版。』という言葉があったのとWikipediaにあった「設定を現代に移している」というネタバレとが関係しているかも。

    比べるためにも先に原作読まないと!

  • 昭和30年代後半、東京近郊の貧民街(『街』)に暮らす人々の暮らしが短編の連作で描かれています。貧しさのあまりモラルの荒廃した『街』では、その分、人間のありのままの姿が現れます。もし自分が、この中に居たらどういう暮らしをしていただろうかと、考えずにはいられませんし、日常のちょっとした悩みが小さく思えてきます。大変な名作だと思いました。

  • 一つの貧民街の住人がそれぞれ出てくる短編集。決して羨ましくはないのだけれど、その人間性の高貴さにはっとしてしまうような人も中にはいて。

  • 年をとってくると、「山周」はぐっっと心にしみてきてクセになる。
    「親おもい」「僕のワイフ」普通に考えたら絶対非のない人もワリをくうし、それぞれの事情やら感情がある。人生そんなもんだよね。1+1=2ばかりではない。

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著者プロフィール

1903年、山梨県に生まれる。本名は清水三十六(さとむ)。小学校卒業後、銀座の質屋で奉公、後に筆名としてその名を借りることになる店主・山本周五郎の庇護のもと、同人誌などに小説を書き始める。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表、文壇デビュー。その後、不遇の時代が続くが、時代小説作家として認められはじめる。戦中から戦後まで連載が続けられた『日本婦道記』(1942-1946)で直木賞に推されるが辞退。主な代表作に『樅ノ木は残った』(1958)、『赤ひげ診療譚』(1958)、『青べか物語』(1960)、『おさん』(1961)などがある。1967年、逝去。

「2020年 『雨あがる 映画化作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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