ながい坂 (下巻) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.12
  • (82)
  • (76)
  • (47)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 650
感想 : 57
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134185

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 山本周五郎の長篇時代小説『ながい坂〈上〉〈下〉』を読みました。
    『寝ぼけ署長』、『五瓣の椿』、『赤ひげ診療譚』、『おさん』に続き、山本周五郎の作品です。

    -----story-------------
    〈上〉
    人生は、長い坂。
    重い荷を背負って、一歩一歩、しっかりと確かめながら上るのだ。

    徒士組の子に生まれた阿部小三郎は、幼少期に身分の差ゆえに受けた屈辱に深い憤りを覚え、人間として目覚める。その口惜しさをバネに文武に励み成長した小三郎は、名を三浦主水正と改め、藩中でも異例の抜擢を受ける。
    藩主・飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として、主水正は様々な妨害にも屈せず完成を目指し邁進する。

    〈下〉
    人間は善悪を同時に持っている。
    一人の男の孤独で厳しい半生を描く周五郎文学の到達点。

    突然の堰堤工事の中止。
    城代家老の交代。
    三浦主水正の命を狙う刺客。
    その背後には藩主継承をめぐる陰謀が蠢いていた。
    だが主水正は艱難に耐え藩政改革を進める。
    身分で人が差別される不条理を二度と起こさぬために――。
    重い荷を背負い長い坂を上り続ける、それが人生。
    一人の男の孤独で厳しい半生を描く周五郎文学の到達点。
    -----------------------

    新潮社から発行されている週刊誌『週刊新潮』に1964年(昭和39年)6月から1966年(昭和41年)1月に連載された作品… 山本周五郎の作品の中で『樅ノ木は残った』に次いで2番目に長い作品です。

    憎む者は憎め、俺は俺の道を歩いてやる… 徒士組という下級武士の子に生まれた阿部小三郎は、8歳の時に偶然経験した屈辱的な事件に深く憤り、人間として目ざめる、、、

    学問と武芸にはげむことでその屈辱をはねかえそうとした小三郎は、成長して名を三浦主水正(もんどのしょう)と改め、藩中でも異例の抜擢をうける… 若き主君、飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として、主水正は、さまざまな妨害にもめげず、工事の完成をめざす。

    身分の違いがなんだ、俺もお前も、同じ人間だ… 異例の出世をした主水正に対する藩内の風当たりは強く、心血をそそいだ堰堤工事は中止されてしまうが、それが実は、藩主継承をめぐる争いに根ざしたものであることを知る、、、

    “人生"というながい坂を人間らしさを求めて、苦しみながらも一歩一歩踏みしめていく一人の男の孤独で厳しい半生を描いた山本周五郎の最後の長編小説。

    下級武士の子に生まれた小三郎が、学問や武道等の実力や努力、そして強靭な克己心により困難を乗り越えて立身出世する展開… 上下巻で1,100ページ余りのボリュームですが、意外とサクサク読めました、、、

    自ら求め選んだ道が現在の自分の立場を招く… 善意と悪意、潔癖と汚濁、勇気と臆病、貞節と不貞、その他もろもろ相反するものの総合が人間の実体、世の中はそういう人間の離合相剋によって動いてゆくもので、眼の前の状態だけで善悪の判断はできない… 江戸自体が舞台の物語ですが、現代の自分たちの生き方にも示唆を与えてくれる物語でした。

    生き方や働き方について考えさせられましたね… 山本周五郎の人生観・哲学などが感じられる作品でした。

  • 結局、小説として少々乗り切れませんでした、★2.5。
    ストーリーラインの観点からは場面転換が急な感じがあるし、何より主人公にあまり共感できなかったです。真摯、聖人と言えばそうとも言えるかもですが、どっちかと言うと偏屈かなと。
    悩んではいるのでしょうが、微妙な距離感を覚えるのは当方だけかもしれませぬ。その意味では当方も偏屈ということかもですけれども。

  • 大変な良作。エンタメ性も高い。子どもの頃に読んでいたら、ある種の感化を受けてたかもですね。題材自体は一藩の1人の偉人伝(途中)ですが、上下の長編で読ませても全く飽きが来ない。感服しました。

  • 今ある状況の中で懸命に努力し、思慮深く、客観的に自分や周りを見る事ができ、他人の心を推し量る事ができる、目指すべき生き方の一つだと思う。

    本当にながい坂であった。

  • 人生という長い坂道を歩いていく。

    主人公の三浦主水正は、ちょっと完璧すぎるかな。
    ラノベの主人公っぽさがある。笑

  • 断絶した名家三浦の姓を継ぎ、三浦主水正と名前を変えた小三郎。
    藩内で進められる野党による政権掌握の動きに順風満帆な青年期から一変して命を狙われ身を隠すことに。主水正は無事政権を藩主の元に戻し、 正当な政治に戻すことができるのであろうか、、、

    最後まで目が離せない展開!!この一言に尽きる。

  • 主人公が城内の密かなクーデターから逃れ、様々な職業に身をやつし、荒れ野での生活に耐え、表舞台に返り咲くまでが描かれる。堰堤を作る、という大志が実行されるところの手前で、あえて物語は終わっている。
    上巻の感想に主人公の性格の誠実さ、と書いたけれど、全編を通してみると清濁併せ呑む人物になっていく姿が書かれていたように思う。物語としては面白かったが、時代柄か、各人物像、特に女性の描き方にはもどかしさも残るところ。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    異例の出世をした主水正に対する藩内の風当たりは強く、心血をそそいだ堰堤工事は中止されてしまうが、それが実は、藩主継承をめぐる争いに根ざしたものであることを知る。“人生"というながい坂を人間らしさを求めて、苦しみながらも一歩一歩踏みしめていく一人の男の孤独で厳しい半生を描いた本書は、山本周五郎の最後の長編小説であり、周五郎文学の到達点を示す作品である。

  • 読み終わってうん、そうだね「長い坂」だったね。と思う。
    主人公「三浦主水正(もんどのしょう)」が階級は低いが、志を胸に幼少の頃から学問に励み、周りからも認められ、藩の中で自分の役割を大きくして行く話。
    最初はシーンの切替が多く登場人物が覚えられないのと、淡々と下積み話で読みづらいが、藩の仕事に携わってからはぐいぐい話に引き込まれる。しかし、つらい時期の話も長く、志高く生きるのは強い我慢が必要だよなとか、私も今のプロジェクトがうまく行っていないので、耐え忍ぶ時を共感する。
    本著者は派手に良いという感じではなく、物語を積み上げ後半しみじみいいねと思わせる系話を書くのだねぇ。ラストも良かった。

  • どんな生き方が正しいか。客観的に見れば正解はなく、身分も貧富も性別も関係なく、全ては本人次第。ながい坂を、何を考え、どう登っていくのか。

全57件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山本周五郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×