- 本 ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101134314
感想・レビュー・書評
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時代が映す日本。
戦中に描かれた美学が、今も変わらない真実に思えるのは興味深い。
薯粥と柘榴が秀逸。
「一途不退転の働きをするのには、日常の生き方が大切だ、百石の侍に出世することよりも、足軽として誰にも劣らぬすぐれた人間になれ」
その通りである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山本周五郎の短篇小説集『一人(いちにん)ならじ』を読みました。
ここのところ、山本周五郎の作品が続いています。
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合戦の最中、敵が壊そうとする橋を、自分の足を丸太代りに支えて片足を失った武士を描く表題作等、無名の武士の心ばえを捉えた14編。
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1940年(昭和15年)から1957年(昭和32年)に発表された作品14篇が収録… 『花の位置』だけは、時代小説ではなく、現代小説です。
■三十二刻
■殉死
■夏草戦記
■さるすべり
■薯粥
■石ころ
■兵法者
■一人ならじ
■楯輿
■柘榴
■青嵐
■おばな沢
■茶摘は八十八夜から始まる
■花の位置
■解説 木村久邇典
『茶摘は八十八夜から始まる』だけは再読、残りの13篇は初めて読みました… イチバン好きなのは『茶摘は八十八夜から始まる』ですね、、、
改易で岡崎藩にお預けとなった明石六万石の領主・本多出雲守政利の相伴役を買って出た水野平三郎… 自らも痛みを抱いた武士の落魄した者への労りの情と、それによって甦る誇りの存在が描かれており、平三郎が立ち直るとともに、本多政利が人間回復するという展開が感銘深いですね。
次に印象的なのはタイトルのように爽やかな一篇『青嵐』かな、、、
伊能半兵衛に嫁してわずか12日目の登女(とよ)の前に1歳くらいの子どもを負ぶった女が現れ、旦那の子どもであるから養育費が欲しいと言い、登女は動転するが… 友人の陰謀や、お互いの誤解を乗り越えて、より愛情が深くなる展開が好きですね。
それ以外では、合戦の最中、敵が壊そうとする橋を支える丸太がわりに自分の足を使い、片足を失う『一人ならじ』、
敵の武将を倒しても首級(しるし)を掻き取ることをせず、すばやく次の敵を求めて前進する『石ころ』、
他に『三十二刻』、『殉死』、『夏草戦記』、『さるすべり』、『薯粥』など、名誉や名声を求めず、立身栄達も望まず、黙々としておのれの信ずる道を生きる無名の武士たちとその妻の心ばえを描いた“武家もの”の傑作が堪能できました、、、
小説を愉しみながら、ひとの生き方を教えられたような印象… 更迭が相次ぐ某政権、政治家の皆さんに読んでもらって感想を聞いてみたいですね。 -
この作家が上手いのは百も承知。
それよりもこの短編集、ある程度時系列に並べたことによって、その時々の作家の立ち位置的なものがあぶり出された感あり。
もしかすると編者はそれを狙っていたのかもしれないけれども、山本周五郎と言えども、追い詰められたのか、それとも鈍感だったのか、生きるとはそういうことか、と思わざるを得ず、好きな作家ではあるものの、読んでいて息苦しさを覚えることも否定できず。
平和時代の戯言かもしれないけれど、それでも、だからこそ厳しい姿勢が必要かなと。 -
再読。『茶摘は八十八夜から始まる』は良いが…
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テッパンでおもしろい山本周五郎大先生の短編集のうちの一冊.
今回は「黙々と働く名の知れぬ市井の人が如何に偉いか」という話が多かった気がするが,充実しているのは戦後に書かれた後半の「柘榴」「青嵐」「おばな沢」「茶摘は八十八夜から始まる」の4編だ. -
今年は、山本周五郎の没後50年に当ります。
この人の作品は映像化されたものが多いのですが、そのどれもがわたくしの好みではないのです。それで何となく原典からも遠ざかり勝ちになりますが、実際に作品を読むと素晴らしいのであります。映画やドラマになればなるだけ、却つて新たな読者が減るやうな気がするのはわたくしだけでせうか。
有名な作品はたくさんあるけれど、ここでは何となく『一人ならじ』。いちにんならじと読みます。
全14篇の短篇小説が収録されてをります。発表時期は昭和15~32年にわたりますが、そのほとんどは戦前・戦中に集中してゐます。
その内容は、封建的な武士世界の厳しい社会を背景に、己の信念に生きる人たちを描いてゐます。中中良い。
まづ「三十二刻」の宇女。嫁ぎ先の舅から冷たい仕打ちを受けながら、戦において非凡な対応を見せます。ちよつと出来過ぎ。
「殉死」における八島主馬と福尾庄兵衛。殉死を禁じられた中、主君の死に際して二人は対照的な行動をとります。わたくしは八島の現実的な選択を支持したい。
「夏草戦記」では、立番を離れたらいかなる理由でも死罪、との掟の中、三瀬新九郎は敵方に情報を流す裏切者を討つ為に持ち場を離れます。結果多くの味方の生命を救ふのですが(本来なら殊勲者)、それを語る事無く死罪を受け入れるのです。
「薯粥」は我が隣市の岡崎が舞台。十時隼人なる剣豪が登場しますが、少し理想化し過ぎかも。
「石ころ」の多田新蔵に、妻の松尾は結婚当初失望してゐました。しかし新蔵には隠された真の姿があつた。
「兵法者」における水戸光圀は、後年自ら語るやうに残酷だと思ひますよ。
「一人ならじ」の栃木大介は、犠牲的精神からいくさの最中に片足を失ひます。しかし周囲からは大して評価されませんでした。なぜか......? さすがに、表題にもなるくらゐの作品であります。派手ではないが読後にじわじわと味はひが広がります。
「柘榴」における真沙は、新婚時代、その若さゆゑに夫の本質を見抜けなかつたと反省してゐますが、柘榴を新妻に例へる夫はやはり気持ち悪い。
「青嵐」の登女は、夫に隠し子がゐると未知の女から告げられ、その疑惑を夫に問ふこともできずに、子供の世話をみます。いささか現実離れした対応ですが、その結果、最終的に夫婦の結束は強まることになりました。
「茶摘は八十八夜から始まる」も岡崎もの。領主の不行状を改める為、水野平三郎は相伴役を申し出ます。実は水野自身も放蕩生活から逃れられず、自分を戒めるつもりで願ひ出たのでした。その結果、どうなつたのか......?
「花の位置」のみ時代が違ひ、太平洋戦争末期の東京が舞台。発表されたのも正に昭和20年3月。この時代にも目が曇る事無く、かくも冷静に庶民の戦争に対する思ひを活写してゐます。
本書は必ずしも作者の代表作とか有名な作品といふ訳ではありませんが、いづれも水準以上の出来栄と存じます。やはりヤマシュウ、只者ではないな。
出来過ぎのストーリィに、人によつては修身の教科書みたいだと鼻白むかも知れませんけどね。ぢやあまた。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-692.html -
芯を持って生きようと思った。
誰が何と言おうと。 -
この本が、山本周五郎さん作品との出会い。
描かれている物語は、普段の私に教訓として教えてくれるような事ばかり。考え方に、かなりの影響を受けた本です。
山本周五郎さんの作品で1番好きです☆彡
もう、私の手元にある本は、表紙がボロッボロ(^^;) -
短編集。戦時中の作品が多く、戦時社会に迎合的な固さを感じる。その中で、「青嵐」「茶摘は八十八夜から始まる」が良かった。11.2.5
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