人情裏長屋 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134321

感想・レビュー・書評

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  • NHKドラマ’’子連れ信兵衛’’の原案になった人情裏長屋のほかも収録されている短編集。コメディも含まれており出来の良いものから順にあげると’’泥棒と若殿’’、’’おもがけ抄’’、’’雪の上の霜’’、’’麦藁帽子’’、’’秋の駕籠’’。あとは同列で’’ゆうれい貸家’’、’’三年目’’、’’風流化物屋敷’’、’’長屋天一坊’’、’’豹’’。長編と違って短編はぐっと私の感覚にあう作家です。

  • 山本週五郎初読。江戸時代、長屋を舞台に描かれる軽妙な筆致の短編集。しみじみとした人情あり、くすっと笑える話あり。『泥棒と若殿』薦められて読んだのだが、けして交わらぬ立場の二人が共に暮らすうち、心を寄せ合う様が印象に残った。20200508

  • 上野千鶴子さんが東大の入学式の祝辞を述べて話題になり、僕は全文をネットで読んでとても素敵だなあとココロ動きました。

     "がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと...たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。"

     素晴らしいですね。視点、そして分かりやすい言葉のセンス。ハラショー。
     最近、山本周五郎を再読していて、山本周五郎の世界観というか主題というか通低音というか、つまりは、"がんばっても報われない社会" そういうことなのかもしれないな、と。
     なんだかんだ、ソレである以上は、現代性があるの無いのという以前に、普遍であり不変である訳です。悲しいかな。
     例えば「人情」とかのコトバで位置づけて片付けてしまうのは、読書の愉しみとしては勿体無い。
     これがまた書き手が人情なんてタイトルに入れちゃってると、かなり偏見と予断に晒されちゃう訳ですが。

    #

    「人情裏長屋」。山本周五郎、新潮文庫。

     チャップリンの映画「キッド」。しばらく見ていませんが、見るたびに涙腺が緩む傑作だと思っています。映画演劇小説漫画、兎角元来涙モロイのですが、40代に入って更に磨きがかかり。

     山本周五郎さんの短編、この本の表題作、「人情裏長屋」も、同じくです。
     初めて読んだのは、11〜12歳の頃で、かれこれ35年余の間に3〜4度読み返していますが、再読するたびに泣けます。困ったものです。

     「キッド」系列の物語と言えば。映画なら「三人の名付親」「グロリア」「怪盗グルーの月泥棒」「依頼人」「スリーメン&ベイビーズ」などなど、どこまで解釈を広げるかで無限に人気のあるジャンルです。
     考えれば「レ・ミゼラブル」も、バルジャンとコゼットですから。

    #

     江戸時代。江戸。
     青年の浪人者が、裏長屋で飲んだくれて暮らしている。気は優しくて腕が立つ、同じ長屋の気丈な娘が憎からず想っていたり。同じくうだつの上がらない浪人仲間で、妻に死なれ赤子を抱えて難儀中の者がいる。 主人公が面倒を見たら、ある日、赤子を主人公に預けたまま失踪されてしまう。「出世したら迎えに来ますからよろしく」と。
     困り果てて、でも仕方なく赤ちゃん育てに格闘し、やがて情が移る頃には、主人公の暮らしぶりも健全になり。そんなある日、子を捨てた親が、なんと出世して迎えにやってきます。

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     メロドラマ、卑怯といえば卑怯、ズルいと言えばズルい。エンタメです。万人受けです。センチメンタルだしある種おとぎ話だし。そもそも時代劇なんだし。
     そうなんですけど、主人公が赤ちゃんに、桃太郎を話聞かせる段、矢張り何度読んでももう堪りません。泣けちゃうものは仕方ありません。こればかりは、読み手に子供がいるからとかそういう次元でも無いようです。
     主人公や、彼女さんや、赤子の父や、皆のそれぞれの状況やら、こだわりやら、ヒネクレ度合いやら、やるせなさやら「がんばってもそれが公正に報われない社会」というペーソスに、それが一時的なモノぢゃァなくて考えたくもないくらい年老いるまで続いて行くというコトと、そのことに自尊心を鉋で削られながら耐えて行く以外の選択肢を実際のトコロ与えられていないという…、浮世、憂き世の具体的すぎるリアリズムに生爪を剥がされ突き刺し貫かれる痛みにキチンと書き手が自覚的だからなンですね。一文が長すぎますが。だから泣ける。かけそばがイッパイだからって泣けやァしません。古いけれど。

     …とまあ、少年期以来のファンとしては周五郎小説の応援演説ならば雨ニモマケズなんですが。

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     表題作以外も、いつもどおりどれも読ませます。個人的には「豹」「麦藁帽子」はイチオシ。ともに、(執筆当時の)現代劇。
    「豹」は手塚治虫のブラックな短編を思わせる、男と女、心の闇にゾクッとさせます。「麦藁帽子」は、かつて想いあった男女の歳月や心のヒダ。まさに憂き世に虐められてきたヒトの傷口が、かくも痛いのに美しくなれるという。野菊の墓なショートストーリー。

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    ちなみに、作品の初出年、よくわかりません。

    新潮文庫から出ている、いちばん普通に手に入れやすい短編集です。このシリーズはどうやら、山本周五郎さんの没後(1967)、親交のあった人の手で編集されたもので、「町人もの」「女性もの」「武家もの」「現代劇」などが、固まらないように、どの一冊を手にとっても、山本周五郎の魅力を広く知れるように、という狙いで作られた。それはそれで考えようによってはブラボーなお仕事なんですが、短編ひとつひとつの初出年というのが割愛されていてあとを追いづらい。

     全集とか読んだりすれば、あるいは研究者の方々は無論わかるでしょうが。誰でも気軽に見れる全データみたいなHPとか、ないかなあ。(無かったら作りたい)

  • それぞれの話が昭和の香りがして心地良かった。

  • 『子連れ信兵衛2』
    NHK BSプレミアム/毎週金曜放送
    2016年11月11日から

  • 人情裏長屋、雪の上の霜、こんな文が書けたらなと思わせる作品でした。

  • 11の短編の中のひとつ「風流化け物屋敷」は山本周五郎さんという作者はこういうものも書くんだなあと嬉しくなりました。
    化け物にまるで動じない世間知らずの侍と、恐いもの大好きな娘の交流が何とも微笑ましくゆったりとして良い。
    読み始めた時はなにか落語の「化け物つかい」のネタになった話かななどと思っていましたが、じつは化け物は・・という話。

  • 表題作がいい。人情と理の区分。平易に語られるヒューマニズムです。

  • 確か。

  • 人情物って言うのでしょうか、江戸時代、長屋が舞台の短編集

    亡き妻の面影をおって生きている孫次郎さんのお話「おもかげ抄」が良かったかなぁ

    変な幽霊と同居するお話や、捨て子を育てるお話など、色々あって楽しめました

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著者プロフィール

1903年、山梨県に生まれる。本名は清水三十六(さとむ)。小学校卒業後、銀座の質屋で奉公、後に筆名としてその名を借りることになる店主・山本周五郎の庇護のもと、同人誌などに小説を書き始める。1926年、「文藝春秋」に『須磨寺附近』を発表、文壇デビュー。その後、不遇の時代が続くが、時代小説作家として認められはじめる。戦中から戦後まで連載が続けられた『日本婦道記』(1942-1946)で直木賞に推されるが辞退。主な代表作に『樅ノ木は残った』(1958)、『赤ひげ診療譚』(1958)、『青べか物語』(1960)、『おさん』(1961)などがある。1967年、逝去。

「2020年 『雨あがる 映画化作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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