- 本 ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101134338
感想・レビュー・書評
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私の読解力の問題だと思うが、全体的に登場人物の立場や性格がわかりづらく、話が入ってきづらい。
そんな中でも表題作の『花杖記』は推理小説っぽさがあって面白かった。
あと『逃亡記』もオチが意外で面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
山本周五郎の短篇小説集『花杖記』を読みました。
『編傑作選4 しづやしづ』に続き、山本周五郎の作品です。
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何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。
どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。
ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変わらぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。
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大正15年(1926年)の文壇処女作品と昭和16年(1941年)から昭和32年(1957年)に発表された作品10篇が収録されています。
■武道無門
■良人の鎧
■御馬印拝借
■小指
■備前名弓伝
■似而非物語
■逃亡記
■肌匂う
■花杖記
■須磨寺附近
■解説 木村久邇典
父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』など、武家社会を描き出す傑作集… ユーモラスな作品から、シリアスな作品、恋愛を絡めた作品、ミステリ要素のある作品等、バリエーション豊かな作品が収録されており、どの作品も粒揃いで面白かったです、、、
そんな中でも印象に残ったは、
武士としては致命的な臆病者で用心深かったことが、結果的に上首尾につながるというユーモラスな展開が愉しめる『武道無門』、
山瀬平三郎は縁談に承知した直後に、小間使いの八重を愛していたことに気付いた平三郎は縁談を破談とするが、八重は主人の名を傷付けると思案して婚約者があると言って身を引いてしまう… これから先の8年後、偶然再会した二人は、お互いの気持ちを確かめ合い結ばれるという感動的で和ませる展開の『小指』、
無駄な殺生はせず、一矢で射止めると判断したら二の矢は持たないという弓道の信念を貫く青年武士の胸のすくような痛快武芸譚『備前名弓伝』、
剣術の名人・飯篠長威斎の代わりを務めていた怠け者・くる眼の杢助が本物の人生の達人に錯覚されていく奇妙な面白さが味わえ、剣術・武術を揶揄・批判した『似而非物語』、
心を決めた相手がいる姉・あつみと結婚するために江戸から国許に下がってきた横江半四郎を翻意さえるため、妹・みさをは姉のために一計を案じる… 半四郎に、ご落胤で一部の重心に命を狙われると明かし、二人で逃避行を続け、この逃避行を通じて、二人の心が通じ合い、さらに半四郎は藩政に関わる重要な証拠を手にすることで、全てが丸く収まるという八方めでたしのハッピーエンドが愉しめる『逃亡記』、
主君への直々の目通りを願って殿中で何者かに殺された父親の仇討ち、真相究明を通じて、父子の難しい関係を描き、ミステリ要素も愉しめる『花杖記』、
ですかね… 山本周五郎の作品は読むのをやめられなく魅力がありますねー 次も読んでみようと思います。 -
時代小説の短編集。表題作の「花杖記」は冤罪を晴らす物語である。仇討ち物の要素もあるが、仇討ちだけならばステレオタイプな時代小説になる。冤罪を晴らすという点が文学性を高めている。タイトルの「花杖記」は冤罪被害者自身が書いた書物のタイトルである。冤罪が明らかになったら前しか見ないで生きるのではなく、過去をきちんと振り返る姿勢は立派である。
藤沢周平「冤罪」も冤罪を描く時代小説であるが、こちらは冤罪を世の中に明らかにするまでにはいかない。日本型組織や日本社会の限界を反映した作品であるが、21世紀の感覚で読むと昭和の古さを感じる。それに比べると「花杖記」は21世紀的でもある。
主人公は「たとえ命令されたにしたって、謀殺ということを承知でやった以上それだけの責任はある筈だ」と主張する(377頁以下)。日本の公務員は上の命令で行っているから自分を恨むなと卑怯な言い訳で我慢や負担を強いる相手にまで理解を求めようとする御都合主義がある。その種の公務員的な言い訳を切り捨てる。
「良人の鎧」ではチンコロが卑怯と評される。「じかに押しこむ勇気がないので、しゅくんの裾へすがって返報しようとした、これほどまでの性根がみれんになっていようとは思わなかった。卑劣なやつだ」(41頁以下) -
「花杖記」どうしても受け付けられなかった父の惨死の真相を暴くまでの話。父が気になって仕方なくなる心の移ろいがうまく展開されていると思った。「備前名弓伝」読後感が爽快だった。13.6.29
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再読了。
・武道無門
・良人の鎧
・御馬印拝借
・小指
・備前名弓伝
・似而非物語
・逃亡記
・肌匂う
・花杖記
・須磨寺附近 -
どの話もイイ感じ。
表題の花杖記はそれほどでもなかったけどねっ! -
前半よかった。
しかし備前名弓伝で狼を殺した理由が不明確。
後半、似而非物語よかった。他は展開が読めすぎるのとちょっと女絡みがおじさん向け過ぎているかな(笑) -
「備前名弓伝」の短編が収録されている
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●山本周五郎を初めて読んだのは武家や市井のさまざまな女性を描いた短編集『日本婦道記』。
「なーんだこの作者! いまどきこんな大和撫子がおるかいなッ! 平塚らいてう先生が怒りまっせー!!?」
と思わずカチンと来たらフェミニスト(?)。
いやあ、よく考えたら周五郎先生は戦前から書いてる人なので、そんな作風で当たり前なのでした。
●『花杖記』もまた短編集。話が整っていて面白いのは当然として、やはり良いのは文章。
端整で読みやすいため、読み手を選ばずすっと入って行けるのです。(←山田風太郎や池波正太郎は、ついてこれない読者を容赦なく切り捨てる印象なんだよねえ。好きなんですが。)
お話の持って行き方も無駄がなくてとにかく上手ですが、さらにキャラの立てかたがうまい。
短編なんだけど、どの主人公も魅力的に描かれているのです。
私は「備前名弓伝」の主人公がごひいき。
弓の達人だけど、普段はぼーっとしてて反応が鈍いんだよな。
でも、いざとなったら、たった一本の矢で何とかしてしまうんだよな。ああかっちょいいー!!
●・・・とまあ、どれもこれも素人が今更言うことじゃありませんが。苦笑。
並行して藤沢周平の初期(?)短編集も読みましたが、周五郎のこの短編集に比べるとちょっと暗いです。
藤沢周平も端整なんだけど、長編ないしシリーズ物の方が面白いかも・・・うーん・・・。
このクラスの巨匠に比べると、やっぱり宮部さんはもう一息かなあ、と思う私なのでした。(←くらべるのが間違いなのかもしれないが、でもやっぱり、宮部さんには普通の社会派作品を書いてほしいのです・・・。)
著者プロフィール
山本周五郎の作品





