小説の効用・青べか日記 (新潮文庫 2-48)

  • 新潮社 (1985年4月1日発売)
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  • 本 ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134499

感想・レビュー・書評

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  • エッセイでは「歴史か小説か」「酒みずく」がお気に入り
    資料をどれだけ集めようと歴史が復元しきれるものではない、「書かずにはいられない」主題があるから書くのであり現代とか時代とかはどうでもいい括りという主張、山本周五郎は体現できている作家だからすごく説得力がある。彼の時代小説は今読んでも全く色褪せないあたり。
    後者は酒飲みとして単純に笑える。
    他、目についたところを引用
    「ときにこの前、土岐雄三さんが夫婦喧嘩して、僕のところへ逃げてきた。
    うちのかみさんが浦和まで行って、彼のカミさんを連れてきた。カミさんが来たから、床の間にあったカーネーションを抜いて髪にさしてやった。イヤだっていう。いやならいやでいい、鏡で見ていやならよしなさい。そうすると鏡に向かって、さし直しているんです。どうだ、きれいだろう、小さな花一輪さしたって、きれいに見えるんだっていってやった。
    それから、土岐雄三に、「お前さん、カミさんにきれいだっていうか」っていったら、てれくさがって、いわないという。(笑)欧米だとダンスパーティーやカクテルパーティ、ティーパーティーがあって、よその男性がカミさんをほめてくれる。日本ではそういうチャンスがないから、ほめるのは亭主以外にない。(中略)僕にも少しはましな小説ができるのは、読者の方たちの愛のバックアップがあるからですよ。やっぱりほめられれば、それならもう少しましなものをやろうと、元気が出る。」
    伊達男っぽい笑けど素敵。

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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