- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101134659
感想・レビュー・書評
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全ての自分を捨てて耐え忍ぶ主人公。いよいよクライマックスの下巻へ。
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下まで読んでしまったのですが、この主人公原田甲斐の生き方に深い感動を覚えずにはいられないです。最後の感想は下に書くとして、感動を受けた文を書いて終わり。
主人公原田甲斐に仕える丹三郎が、
「『自分の死は御役に立つであろう』と云った。主人のために身命を惜しまないのは、侍の本分ではあるが、だれにでもそう容易に実践できることではない。甲斐は丹三郎を知っているし、彼の性質としてそういうことを口に出して云う以上、そのときが来れば死を怖れないだろう、ということもわかっていた。
―ーだがおれは好まない。
国のために、藩のため主人のため、また愛する者のために、自らすすんで死ぬ、ということは、侍の道徳としてだけつくられたものではなく、人間感情のもっとも純粋な燃焼の一つとして存在して来たし、今後も存在することだろう。――だがおれは好まない、甲斐はそっと頭を振った。
たとえそれに意味があったとしても、できることなら「死」は避けるほうがいい。そういう死には犠牲の壮烈t美しさがあるかもしれないが、それでもなお、生きぬいてゆくことには、はるかに及ばないだろう。」
鬼役(毒見役)に向かうときかない丹三郎に対して、甲斐は言う。
「『人間はかなしく、弱いものだ、景林寺の僧がもし大悟徹底していたら、火中であんなことは云わず黙って静かに死んだことだろう、おそらく従容として、黙って死んだのが事実だと思う、火中にあって、心頭滅却すれば火もまた涼し、などというのは泣き言にすぎない、けれども、その泣き言を云うところに、いかにも人間らしい迷いや、みれんや、弱さがあらわれていて、好ましい、私には好ましく思われる』(中略)『人は壮烈であろうとするよりも、弱さを恥じないときのほうが強いものだ』」 -
本当に読んで良かった。
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中。長いのでご注意を。
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この作品ほど,私の中でいつまでも余韻に浸れるものはなかった。原田甲斐。この名前に何度胸を痛めただろう。読み進めれば読み進めるほど辛くなる。中では,甲斐の人間らしい部分に触れることが出来る。大鹿「くびじろ」との一戦にこそ,原田甲斐の本音が見える。