樅ノ木は残った(中) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134659

作品紹介・あらすじ

奴等の企みを潰すため、俺は鬼になろう。仙台藩六十二万石を寸断──。酒井雅楽頭と伊達兵部とで交された密約が明らかになった。嫡子を藩主の座に据えることに血眼になる兵部だが、藩の取潰しを目論む幕府にとってはその駒に過ぎない。罠に気付いた原田甲斐はあえて兵部に取り入り、内部から非謀を破却。風前の灯となった伊達家の安泰のため、ひたすら忍従を装う。

感想・レビュー・書評

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  • 仙台藩伊達家62万石で起こったお家騒動「伊達騒動」の第2巻です。
    寛文2年(1662年)正月中旬。徳川幕府第4代将軍家綱の治世。
    伊達家重臣・原田甲斐宗輔は、徳川幕府老中・酒井雅楽頭忠清が亡くなった松平伊豆守信綱の命を守り、伊達家を内部から崩壊させて取り潰そうと謀っている……と推測する。

    伊達家一族の伊達兵部少輔宗勝と酒井雅楽頭は、伊達家3代目藩主綱宗を奸計をもって逼塞(ひっそく)させ、2才の亀千代(綱村)を藩主とする。原田甲斐は、伊達兵部の野望を知りひとり伊達兵部に接近する。
    原田甲斐を今まで信じていた伊達家の重臣たちが、裏切り者と見るなかで伊達兵部の信頼を得ていく。伊達兵部は、原田甲斐を味方につけたと信じるが。酒井雅楽頭は、原田甲斐は仮面をかぶって近づいてきていると見ている。伊達兵部と酒井雅楽頭の間に伊達領のうち30万石をこと成就の暁には、伊達兵部に……という取り決めの証書が取り交わされる。

    【読後】
    登場人物が多く、その人達を表現豊かに描いています。特に女性の描き方が悩ましく、せつなく、妖しく……誰もが核心に触れる言葉を言わないのに、その事を表現しています。素晴らしい表現力です。

    樅ノ木は残った(中)
    2003.02発行。字の大きさは…小。2021.10.09~11読了。★★★★☆
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【徳川幕府第4代将軍家綱の治世】
    慶安4年 ​(1651年) ​8月18日 ~ 延宝8年 ​(1680年) ​5月8日。28年 9か月。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【バックナンバー】
    樅ノ木は残った上・中・下のバックナンバーは、私の本棚より「タグ」→「タグの一覧を絞り込む」に「山本周五郎」と入力。または、その中から山本周五郎を探してください。そうすると著者山本周五郎さんの本が一覧表示されます。
    私は、本を登録するときには、著者名と登録した年(2021)で登録しています。たまにシリーズ名でも登録もします。例えば「風烈廻り与力・青柳剣一郎」などです。

  • 仙台藩の分割を目論む一ノ関側と、それを阻止しようという原田甲斐側との息詰まる頭脳戦が続く。
    原田甲斐は一ノ関の懐に入り、内側からその計画を破却しようというのが当初の計画だったはずが、盟友と袂を分かち、妻とも離縁し、たとえ結果がうまく行くにしても、失うものが大き過ぎるような気もして来た。
    陰気な描写が続く中、伊達家の家臣でもなく、でも彼らの間を飄々と行き来する伊東七十郎の一本気で明るい性格が、物語に涼やかな風を入れている。彼が主人公でも良かったような。
    原田甲斐が何を考えているのか、全容が明らかになることを期待して、最終巻へ。

  • 原田甲斐が伊達宗勝の陰謀阻止の真意を隠してひたすら雌伏の時を続ける巻。さて、最終巻ではどんなドラマが待つのか。

  • 中盤は、本筋と絡みながら、登場する婦女それぞれの業を俯瞰した描写も印象深い。この辺りも山本周五郎のひとつの真骨頂か。 “人は壮烈であろうとするよりも、弱さを恥じないときのほうが強いものだ” “いちど思いきめて、少しも迷わずに、それをやりとげることのできる人間は、仕合せだ。” 留めて置きたい語録を胸に、下巻へいざ。

  • 伊達家60万石を守るため、原田甲斐は国老となり、陰謀の中心へと近づく。

    伊東七十郎、3ヵ条の誓紙、柿崎六郎兵衛など伏線が張り巡らされているが、最終的にどう収束するかサッパリ分からない。原田甲斐は攻めも守りもせず、誰にも己の本心を見せず・・・。しかし、いつかは攻めに転じないと話は進まないだろうし。下巻に期待。

  • 誰が真の味方なのか。甲斐の洞察力と忍耐力がすごい。伊達騒動の結末を考えると、最終巻は壮絶すぎる予感がする。

  • 我慢に我慢の原田甲斐。彼が立つときはいつ来るのか?
    下巻へ

  • やはり人が多すぎてついていけない。話の筋は知っておきたいので頑張って読む。文章は読みやすいしやはり名作なのだろう。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18417

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA61145237

  • 全ての自分を捨てて耐え忍ぶ主人公。いよいよクライマックスの下巻へ。

  • あらすじ
    伊達家62万石の危機を察知した仙台藩の重臣・原田甲斐(里見浩太朗)が、たった一人で謀略から守る姿を描いた娯楽時代劇。 仙台藩の重臣・原田甲斐は3代藩主・伊達綱宗の放蕩に端を発した混乱の中、綱宗の叔父・伊達兵部の藩乗っ取りの陰謀を察知する。 兵部は幕府老中首座酒井雅楽頭と姻戚関係を結ぶなどして藩内での勢力を徐々に拡大。
    感想
    昔、仕事で涌谷担当をしてたので何か親近感を感じました。惜しい人を亡くした。

  • 時に歯がゆくなる。登場人物が多く、じっくり読むべき。

  • 2015年11月19日読了。

  • 大河ドラマの原作

  • 101219

  • 中巻では主人公の原田甲斐のキャラクターがより明らかになってくる。
    くびじろ(大鹿)との対峙の場面では、孤独に身を置きながら(それゆえ)、強い信念を持ち続ける甲斐の心情をよく表しているともいえる。

    最終巻(下巻)に向けてサスペンス的に物語は進行していく。

    以下引用~
    ・「人間は壮烈であろうとするよりも、弱さを恥じないときの方が強いものだ」

  • 下まで読んでしまったのですが、この主人公原田甲斐の生き方に深い感動を覚えずにはいられないです。最後の感想は下に書くとして、感動を受けた文を書いて終わり。

    主人公原田甲斐に仕える丹三郎が、
    「『自分の死は御役に立つであろう』と云った。主人のために身命を惜しまないのは、侍の本分ではあるが、だれにでもそう容易に実践できることではない。甲斐は丹三郎を知っているし、彼の性質としてそういうことを口に出して云う以上、そのときが来れば死を怖れないだろう、ということもわかっていた。
    ―ーだがおれは好まない。
    国のために、藩のため主人のため、また愛する者のために、自らすすんで死ぬ、ということは、侍の道徳としてだけつくられたものではなく、人間感情のもっとも純粋な燃焼の一つとして存在して来たし、今後も存在することだろう。――だがおれは好まない、甲斐はそっと頭を振った。
    たとえそれに意味があったとしても、できることなら「死」は避けるほうがいい。そういう死には犠牲の壮烈t美しさがあるかもしれないが、それでもなお、生きぬいてゆくことには、はるかに及ばないだろう。」

    鬼役(毒見役)に向かうときかない丹三郎に対して、甲斐は言う。
    「『人間はかなしく、弱いものだ、景林寺の僧がもし大悟徹底していたら、火中であんなことは云わず黙って静かに死んだことだろう、おそらく従容として、黙って死んだのが事実だと思う、火中にあって、心頭滅却すれば火もまた涼し、などというのは泣き言にすぎない、けれども、その泣き言を云うところに、いかにも人間らしい迷いや、みれんや、弱さがあらわれていて、好ましい、私には好ましく思われる』(中略)『人は壮烈であろうとするよりも、弱さを恥じないときのほうが強いものだ』」

  • 本当に読んで良かった。

  • 読んだきっかけ:古本屋で安かった(3冊280円)。

    かかった時間:2/25-2/27(3日くらい)

    内容:中巻は、宿老茂庭周防の辞任から、若殿の袴着の祝いまで。

    またしてもあらすじを、wikiより転載しましょう。

    (wiki「伊達騒動」よりあらすじ抜粋・ネタバレあり)

    (ここから中巻)

    宗勝は家老の原田甲斐宗輔らと藩権力の集権化を行い、地方知行制を維持しようとする伊達氏一門と対立する。一門の伊達安芸宗重と宗勝の甥にあたる伊達式部宗倫の所領紛争が起こると→

    (ここから下巻)

    →伊達安芸は幕府に一件を上訴する。

    1671年(寛文11年)3月27日、騒動の裁判を行うため大老の酒井忠清邸に原田甲斐や伊達安芸ら関係者が召喚される。
    原田甲斐はその場で伊達安芸に斬りかかって殺害する。
    だが、原田甲斐も安芸派の柴田外記朝意と斬りあいになった。
    原田甲斐は柴田外記によって斬られ、柴田外記もその日のうちに原田甲斐からの傷が元で死亡した。関係者が死亡した事件の事後処理では原田家や兵部派が処罰されるが、伊達家は守られる事となった。

    ということで、中巻はあらすじ的には、物語はすすんでおりません。
    しかし、不信・疑惑といったドロドロした人間関係は相変わらず地味に大きく動きます。

    よく大河ドラマとしてもったなぁ…。

  • いや、しかしロシア文学のように同じ人が違う名前で読まれたり、同姓/同名も多いから気を抜けない。そして陰謀が数年スパンで行われ、半年~数年は何もないまま過ぎていく。長大です、素晴らしいです。

  • 中巻は冒頭が熱く濃厚なマタギ小説になっていたり、甲斐と宇乃の心の交流が若干オカルト気味に感じられたので多少面食らったりもしましたが、伊達騒動を軸としたそれぞれの人物の野望、野心、宿願などがコントラスト鮮やかに描かれているので、夢中になって読み進めることができました。物語の中心から少し離れた位置にいる、言うならば脇役にも多くのページが割かれていて、その部分のドラマも良いです。本筋と脇が絶妙に絡み合い、長篇作品の醍醐味を存分に味合わせてくれます。

  • 読書完了日2012年04月30日。

  • 『樅の木は残った(中)』/★★★★★/甲斐の意外な一面や新八のある意味での成熟が描かれたり、作中の時間の流れが感じられる。下関に対してどう戦っていくのか、下巻は渦中に入っていく展開になりそうですね。

  • 徐々に明らかになる一ノ関と雅楽頭の密約など、物語が加速中。しかし、一番ミステリアスなのが主人公・原田甲斐。一体何を考え、行動しているのか?

  • 甲斐の心境が基本的に寂しすぎていやだ。諦観しすぎてるっていうか‥‥つまり彼も奉公のために身を窶すって話?まあでもそれなりに面白いので下巻に期待‥‥

  • 男たちの戦いを見ながらも、黙って仕えるしかない女たちがいます。母であり妻であり娘でありながら、であるからこそ、主君に仕える男たちの犠牲にならなければならない女たち。武家の女の悲しみが淡々と描かれます。

  • 従来の伊達騒動と原田甲斐の人物評価を180度覆した新解釈でも有名になったこの作品は、何が真実で何が嘘なのか、何が正義で何が悪なのか真摯に考えさせられます...

    【開催案内や作品のあらすじ等はこちら↓】
    http://www.prosecute.jp/keikan/018.htm
    【読後の感想や読書会当日の様子などはこちら↓】
    http://prosecute.way-nifty.com/blog/2006/09/post_c5ac.html

  • あっという間に読み終えた感のある中巻。登場人物たちが生命を吹き込まれたというか、知り合いになったという感じでしょうか。未だに、主人公原田甲斐が何をどう見通して行動し、言葉を発しているのかまではわかりません。でも、その目的は理解しているつもり。  今回つくづく思うのは、作家というは普通の頭脳ではないということ。物語と情景描写だけでなく、その場の雰囲気、香り、臭い、人の動きまでを読み手の頭の中に映像化させてしまう、そんな文章を書く人って普通じゃありません。私が江戸時代の風景をこの眼で見ているわけはないので、大河ドラマやその他の時代劇で見た映像が助けになっていることは大いにあるのだけれど、それにしてもすごいものです。想像力を書き立てる文章を書く人はすごい。たくさんの人の思い、人格、駆け引きを一人の人間が創造するというのは、すごいことだと思うのです。これは、今まで小説を読んできて初めて感じたことでした。今までこういうことに気がつかなかった私が鈍なのかもしれませんね。

  • 22/1/7 70

  • 真ん中ぐらいまで、読んでる。
    「1Q84」に集中しているので、登場人物を忘れています。
    や、やばい。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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