正雪記 上 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2009年1月13日発売)
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  • 本 ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134673

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  • 自分の勘に頼ってはならない、理論や他人の説に頼ってもならない、自分の経験にも頼るな、大切なのは現実を見ることだ。自分の目で、感覚でそこにあるものを観、そこにあるものを掴むのだ、正雪はある老人から学んだ。
    本書は徳川幕府開府後の間もない頃、まだ巷には西軍の残党や、幕府の基盤を強固にするため大大名の改易などにより浪人となった者が溢れていた頃である。
    浪人者は今日食べるものにも事欠く暮らしで困窮していた。そんなもの達の暮らしを立てようと由井正雪は立ち上がった。といっても、謀反を企てるのではなく、幕府の内側から変わってもらおうと、浪人者を変な騒動に巻き込ませないように、苦辛しながら言葉で世の中を変えていこうとした。
    そんな正雪を幕府がそのままにしておくはずはない。なんとか罪を着せて葬ろうとする。それでも正雪は正攻法をとり、決して逆上しなかった。
    結局は、幕府に無実の罪を着せられてしまうが、本当に正雪は謀反を起こそうとしたのか、それは分からない。ただ、それまでの正雪の生き方を鑑みると最期まで、信念を貫き通したことだろう。このような小説をきちんと残していくことが、後に残されたもの、小説家の使命なのかな。ありがとう周五郎さん。
    全二巻

  • 由井正雪。一介の染屋職人の倅から始まる。書物、勉強が好きで、広く修行して、なにごとにも怖れないちからをやしない、一人諸国をさすらう。
    志をもち、堂々と歩みを進めていく姿に驚きました。引き込まれますね。

  • 由井正雪。通説で言われる人物像を切り崩す。圧倒的な筆致力と深みのある内容。前半は島原の乱までの浪士との触れ合いを描く。周五郎の時代歴史小説はやはり群を抜くな〜。

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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