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本 ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784101134697
感想・レビュー・書評
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幕末の東北の小藩、中邑藩を舞台にした歴史小説。
佐幕派か王政復古派か、激動の世の中での若者たちの生き方を描く。
主人公の杉浦透は、ノンポリを貫き学問に打ち込もうとするが、世の中の流れを無視するわけにはいかない。
時代背景、舞台設定が興味深い。
以下引用~
「投げられた石の波紋が、しだいに水面をひろがってゆくように、時代の動きが隅ずみへ、しだいに広く、どこでも浸透してゆくんだ。
この動きから逃れることはできない、この波動を乗り切るか、押し流されるか、沈んでしまうか、何れにしても避けることはできないだろう」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東北の小藩の侍である杉浦透を通して、江戸幕府最後の動乱時代に生きる若者たちの迷いや不安など、彼らの等身大の姿を描く。
政治思想を実現に向けて熱く燃えた人達から一歩離れた人々を描いており、物語に大きな盛り上がりはないにも関わらず、時流に翻弄されながらも必死に生きようとする姿は感動させられる。
世の中を動かすものは一部の人間の信念などではない・・・
作者の思いを丹念に練って作られた一作なのではないでしょうか。 -
グッとくる盛り上がりがない、途中で何度も眠たくなった。けど、後半からなんとなく入って行っていた。
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幕末。
勤王か佐幕か、開国か鎖国か、と「日本」の問題が日本全体を揺るがす時代。
誰もがそうした問題を考え、考える基盤までもがそうした問題になっている時代において、若者は、個人は、どう生きるべきであるか。
動乱の時代の中で、必死に生きる若者たちを描いた青春群像劇。
主人公は東北の小藩中邑藩の杉浦透。
彼を中心に何人もの若者の生きる悩みが描かれています。
幕末の歴史小説というと、もっぱらのイメージは「竜馬がゆく」をはじめ、司馬遼太郎の一連の作品でしょう。
幕末に大きく活躍した雄藩の志士たちや、それに対峙した新撰組など幕府の役人。
歴史の表舞台に立ったのは彼らだけど、幕末という時代はそれこそ日本中を支配していたはず。老若男女誰もが、それを感じ、考え、話題にしていたはず。
特にこれから社会に出ていく世代にとっては死活問題を伴う重大事だ。
そしてそんな若者たちの大半は、雄藩に生まれてくるわけではない。
300諸侯と言われた江戸時代に、どこにでも若者はいるわけで。
混沌とした時代に生まれ、それを実感しながら、いかにしてそこに関わればいいのか分からない。
普通の人、としての自分が共感するのはこの小説の登場人物かもしれない。
それにしてもこの作品、最初の発行は1961年です。
もう50年前だ。
ちっとも古臭く感じないのが山本周五郎のすごいところですが、
50年前も、幕末も、若者が抱える悩みはいつの時代も似たり寄ったり悩みっぱなし、ああ生きるのってなんて難しくて面白いんだ。
と、そう感じることができる作品。
さて、下巻を読もう。
著者プロフィール
山本周五郎の作品





