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本 ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784101134857
作品紹介・あらすじ
清らかで美しく、貪欲で邪悪なのが人間だ。幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長・新出去定の元、医員の見習勤務を命ぜられる。不本意な登は赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く医療小説の最高傑作。
感想・レビュー・書評
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いや、危ないとこでした><
今日を入れて8月も残すところわずか2日。
危うく今月の本のレビューがゼロになるところでした。
まあ、暑かったり、忙しかったり、暑すぎたり、なんだりかんだりで、本が手に付かないときってありますよね~。
だって人間だも~ん。
しかし世の中には月平均コンスタントに30冊前後は読む書痴、いや活字中毒、いやいや偉大な読書家様もおられることですし、自分も見習っていきたいとは思ったり特には思わなかったりです(笑)
でもみんな凄いよね。
え~っと、山本周五郎先生の2冊目。
1冊目に読んでみた「さぶ」がとても良かったので、買ったはいいが積読していた本書。
映画とかドラマとかでも聞いたことはあるが読んだことはないのでこれを選びました。
奥付を見ると昭和三十九年発行。百五刷! ひゃくごって、良くもまあ刷ったね~。
内容は、長崎帰りの保本登が訳あって赤ひげのいる小石川養生所に送られ、さまざまな体験を通じて成長していく物語。
ちなみに赤ひげこと新出去定のこの異名ですが、実際には白茶けた灰色のひげですが、逞しい顔つきが「赤髯」という感じを与えるらしい、とのこと。
狂女の話
駈込み訴え
むじな長屋
三度目の正直
徒労に賭ける
鶯ばか
おくめ殺し
氷の下の芽
八本の連作短編。
「鶯ばか」が一番心に響いたな。
貧しい長屋でおきたとても辛い一家心中未遂の話。
「そのまま死なしてやって下さいな」と向こうからおふみ(母親)が云った。
「子供たちは死んでくれました。うちの人とあたしの二人なら、邪魔をされずにどこでも死ねますからね、子供たちが死んでくれて、しんからほっとしました」おふみはそこで、訝しげに云った、「——こんなこと云っては悪いかもしれませんが、どうしてみんなは放っといてくれなかったんでしょう、放っといてくれれば親子いっしょに死ねたのに、どうして助けようとなんかしたんでしょう、なぜでしょう先生」
登は辛うじて答えた、「人間なら誰だって、こうせずにはいられないだろうよ」
おふみは笑った。笑ったように登は感じた。
(中略)
「生きて苦労するのは見ていられても、死ぬことは放っておけないんでしょうか」
(中略)
「——もしあたしたちが助かったとして、そのあとはどうなるんでしょう、これまでのような苦労が、いくらかでも軽くなるんでしょうか、そういう望みが少しでもあったんでしょうか」
登は黙って、頭を垂れた。
貧困は辛い。俺が子供のときは二十一世紀になれば、車は空を飛び、宇宙に旅行でき、貧困も、病魔も、戦争もなくなると思っていた。
が、実際は……、そんな夢物語はない。
いつになったらビックリするほど細い腕をした飢えた子供の映像なんか見ずに済む世界になるのか。
そんなことまで考えてしまった。
山本周五郎先生の話であと知っているのは「樅ノ木は残った」くらいか。あれは長そうだけどそのうち読んでみようかな。 -
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「医師はカネでしか動かない」になぜ怒らない?(谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」):日経メディカル
https://medic...「医師はカネでしか動かない」になぜ怒らない?(谷口恭の「梅田のGPがどうしても伝えたいこと」):日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/taniguchi/202205/574948.html2022/05/17
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読んだのは高校生の時。大学時代に黒澤明の映画を見て、小説を上回る感銘を覚えた。
特に、山崎努演じる大工のエピソード。大地震で死に別れたと思っていた女房と再会するシーンの素晴らしさと言ったらない。風鈴市で再会した二人。お互いに声が出ない二人へと風が吹き寄せ、吊り下げられた風鈴が端の方からけたたましく鳴っていく。
生き別れた女房は、誰の子とも分からない乳飲み子を背負っている。もう、二度と会えない、会わないと心に決めた大工は女房から離れて家路を辿るが、耐えられなくなって振り返ると、丘の上で女房は深々と頭を下げている。堪らなくなった大工が丘を駆け登ろうとすると、女房の背中におぶわれた赤ん坊の泣き声が聞こえて、大工はその場に立ち尽くしてしまう。丘の向こうに去って行く女房。遠ざかっていく赤ん坊の泣き声に、大工の贖った風鈴だけが、ひたすら呼び続けている。
…この間、セリフなし。効果音楽なし。
俳優の演技だけで、これだけの深みが出せるというお手本のような映画。
必見です。 -
貧しい人がかかる小石川養生所での患者の話や、見習いである保本登の成長、医長の赤ひげこと新出去定の人格者たる言葉
面白かったです
医術には個体の生命力以上の能力はない。病気を克服する生命力に多少の助力ができるだけである。
医術は進歩しているんだろうけど、診察ということに関しては昔の方が優れていたんじゃないかと思いました。
今は細分化しすぎて、マニュアル化している。
けど、間違えるということをなくすためには必要か、、 -
もどかしくやるせない気持ちになります。
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二木てるみさんの朗読で知り、読んだ。朗読が素晴らしく、物語の世界に引き込まれた。ぜひ映画も観てみたい。
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江戸時代の貧しい庶民たちを診療する養生所を舞台にした八篇の連作形式の小説。三船敏郎と加山雄三が出演した、黒澤明による映画化作品も有名である。
幕府の御番医としてエリート医師の道を歩むために三年間の長崎遊学を終えた保本登が、主に貧乏人を相手にする小石川養生所に医員見習として住み込むところに物語が始まる。エリート医師の卵としてのプライド、不本意な就職先、遊学前に婚約を交わしたちぐさに逃げられたことなどが重なって荒れる登は酒に酔って暴れるなど、養生所に馴染もうとしない。そんな登だったが、養生所の代表で強烈な個性を放つ医師"赤ひげ"こと新出去定や、患者たちとの関わりを通して認識を改め、人間的な成長をとげていく。
基本は一話完結の連作形式だが、途中参加の人物が養生所の住人に加わったり、全体を通して登や去定の背景が徐々に明かになり、破れた登の縁談のその後を描くなど、シリーズものとしての性格も併せもつ。タイトルにもなっている"赤ひげ"は去定に反発する医師による蔑称であり、意外にも一話目にしか登場しない。予想される通り、見習い医師である登視点で"赤ひげ"こと去定の破天荒な魅力が描かれるのも面白さだが、それだけではない。去定がほとんど活躍しないエピソードも複数あり、それでも短編作品としての魅力から引き込まれる。また、各話の終わり方についても必ずしも勧善懲悪のハッピーエンドとは限らず、救いがなかったり、突き放すような結末もあるなど様々となっている。なお、作中に登場する患者は身体的な病よりも精神的な病とされる者か、末期な患者がほとんどである。
裕福な患者から法外な薬代や診察料をふんだくり、ぶっきらぼうながらも貧しい人々の助けになろうと尽力する去定が体現する思想は、やはり作品の大きな魅力だろう。短気な性格もあって、ときには弱者にたかる者たちに激昂することはあっても、「この世に悪人はない」と断言し、常に人間そのものに罪はなく環境によるものだとする人間観と、医療の非力さへの認識に貫かれている。娯楽小説でありながらも単純に善悪によって断罪するではなく、生きることの苦さ、世の中のままならなさも、そのままに提示し、ときに貧しい人々が報われないままに無残な死を遂げる。映画化作品はもっとわかりやすい面白さだった覚えがある。原作である本作には、そこで汲みとりきれない奥行を感じ、映画鑑賞済みでも読む価値は十分あると思える。娯楽作品としての期待を越えて、より味わい深い作品だった。
やはり手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』も、本作の新出去定に強い影響を受けたキャラクターだろうか。 -
連休中のある日の午後、家の居間で一人、映画「赤ひげ」を観た。
三月に読んだ原作「赤ひげ診療譚」を手元に置き、なぞりながら、本作品を鑑賞した。
昭和40年(1965年)4月に、黒澤明監督により「赤ひげ」として映画化されたこの作品を、山本周五郎は「原作よりも素晴らしい」と褒めたといわれているので、亡くなる2年前に観ているのだろう。小石川養生所の医長である赤ひげ(新出去定)を三船敏郎が、長崎遊学から戻った青年医師・保本登を加山雄三が演じた3時間を超える大作を、途中休憩を入れて観終わった頃には、夕暮れ時となっていた。
よき一遍の小説には、活きた現実生活よりも、もっともなまなましい現実があり、人間の感情や心理のとらえがたき明暗表裏がとらえられ、絶望や不可能のなかに、希望や可能がみつけだされる。 「小説の効用」
周五郎は小説の果たすべき役割について、このように述べているが、この言葉ぴったりの作品だった。
傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く医療小説の最高傑作と評されているが、私も、”赤ひげ”に「理想の医師像」をみた。
自分の中にも、「私の赤ひげ先生」がいる。
苦しく悩んだ時の出会いと語らいが思い出された。
風雪の氷の下に宝あり -
歴史小説は苦手なので、かの有名な山本周五郎を読んだことがなく、流石に読まねばな、と思って読んだ。
意外と単調で、短編仕立てになっているせいもあり、サクサク読めた。
市井の人々の日々が、さほど胸を揺さぶられることもなく、むしろ、深掘りされず流れるように描かれる。物足りないくらいな感じだったのだが…。
最後、泣いた。
予定調和の結末なのに。
恐るべし山本周五郎。参りました。
著者プロフィール
山本周五郎の作品






メロン臭Σ(゚д゚lll)笑
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小バエが寄ってきそう…
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