- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101135014
感想・レビュー・書評
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家族の重々しい暗い過去と血を継ぐ主人公の私と小さな料亭で働く志乃の出逢いと婚姻を描いた恋物語。眩しいほどの情愛の清々しさと文章の瑞々しさに、読んでいるこちらが恥じらうほど。昭和35年下期(1960年)の芥川賞受賞作。過ぎし時代を感じさせる作品だった。
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⚫︎受け取ったメッセージ
川の流れのように、粛々と流れる時間。
一緒にいてくれる人を思う気持ちが、
水面を輝かせる。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
大学生の私は、料亭「忍ぶ川」で志乃としりあった。それぞれの家族とのかかわりやいたましい生い立ちを乗り越え労わりながら逞しく生き抜こうとする。くり返し読み継がれていく名作 第44回芥川賞受賞作品
⚫︎感想
素直で、わかりやすい日本語で書かれている。その表現が、話の美しさ、慎ましさを引き立てていると思った。主人公二人は家族とのかかわりで、それぞれ苦しみをもっていても、それが二人の性格を捻じ曲げることなく、素直で美しい。悪人も、ズレた人も出てこない、ものすごく劇的なことが起こるわけでもない。穏やかな川のように、時間が粛々と流れる中で、丁寧に人物像や会話がつむがれる。何が起こるわけでもない日常を切り取って表現し、読ませることができるのが、本物の筆力だと思う。 -
大好きかつ素晴らしい短編作品。
男女が出会い家族となり生きていくまでが、清純で慎ましく描かれる。
時代背景か若干の男尊女卑は感じるが、素朴な愛情が流れる数作が続く。
ラストの『驢馬』は毛色の違う戦争モノだが、ずっと哀しみがこびりつく名作。
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表題作「忍ぶ川」を含む7つの短編集である。「驢馬」の1編だけ満州人の留学生の差別を描いた作品で、他の6編は「忍ぶ川」に連なる作品と捉えてもいいのではないだろうか。
「忍ぶ川」は昭和初期の恋愛小説。不幸な過去を互いに持ちながらも出会い、果てに結ばれるという目新しいストーリーではないが、情景や心情が読み手に見事に投影されきて、胸が熱くなる。改めて微妙な加減を表す日本語の凄さと平明な言葉でここまで読み手に迫ってくる、三浦氏の文筆の素晴らしさを感じることができた作品だった。 -
32頁まで読んだ。
2021年5月8日、追記。
著者、三浦哲郎さん。
ウィキペディアには、次のように書かれている。
三浦 哲郎(みうら てつお、1931年3月16日 - 2010年8月29日)は、日本の小説家、日本芸術院会員。
青森県八戸市三日町の呉服屋「丸三」の三男として生まれる。 青森県立八戸高等学校へ進学し、八戸高校の籠球部時代に「はやぶさの哲」と呼ばれた(当時の遠征の様子を『笹舟日記』に残している)。1949年に高校を卒業して早稲田大学政治経済学部経済学科へ進学したが、1950年に次兄失踪のため、休学して父の郷里の金田一村湯田(現在の二戸市)に帰郷、八戸市立白銀中学校で助教諭として体育と英語を教える。
さらに、ウィキペディアの引用です。
兄弟がそれなりにいたようですが、以下のとおりで、大変だったようです。
長兄 - 家業を手伝っていたが、1937年に失踪。
次兄 - 三浦の学費を支援していたが、事業に失敗し、1950年に失踪。
長姉 - 先天性色素欠乏症で弱視のため琴を習っていたが、1938年に服毒自殺。
二姉 - 女子高等師範学校の受験に失敗し、1937年に19歳で津軽海峡で投身自殺。
三姉 - 先天性色素欠乏症で弱視だったが、琴の師匠となり家計を支えた。 -
ユタを読んでおもしろかったので、他の作品も読んでみたくて読みました。
寒い地方での暮らしや奥様との様子が小説の中から窺える感じでした。 -
「忍ぶ川」のみの感想
大好きすぎて何度読んだかわかりません。
特にラストが好き。スケールが大きいわけでも長編ってわけでもないのに、読んだ後は壮大な気持ちになる。ピュアで胸が打たれる小説。 -
表題作の『忍ぶ川』と『初夜』以降の続編も良かったんだけど、最後に読んだ『驢馬』の衝撃が強かった
張のこと思うとしんどくなっちゃうな
『恥の譜』も印象的だった
兄弟たちの自殺を恥ずかしく思ってた主人公が、父親が病気で亡くなっていくことを普通の死と認識して安堵するというような話。自然とそう思ってしまうのが分かるけれど悲しい。 -
これはとても文学的な香りを愉しめる小説である。人がなぜ恋に陥るのか、家族に対する愛情とはどんなことを云うのか。そんなことがわずかな時間で感じることができる。
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昭和52年4月1日発行版を読んだけれども、古すぎてISBN載ってないからこちらの版を登録。標題の忍ぶ川は、本当に美しい作品。丹精込めて醜悪な箇所を削ぎ落としたものであるからこそ、簡潔で美しい。それと比べてしまうから、他の作品が見劣りしてしまうこともあったが、やはり三浦哲郎は素晴らしい作家だ。