夜の哀しみ (下) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1996年1月1日発売)
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本 ・本 (307ページ) / ISBN・EAN: 9784101135137

感想・レビュー・書評

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  • 夏休みに図書館で借りた上巻を読んで、やっと下巻を読み終わった。
    下巻を読みながら新聞小説なんだろうなとおもっていたら、後書きでまさにそうだと書かれていた。性に翻弄される北の女性というテーマを、新聞小説に落とし込めた作家の覚悟に感服する。「新聞小説に文学を取り戻す」もしリアルタイムでこの作品を追えてたらどれだけ嬉しかっただろうか。
    三浦哲郎の作品性についてずいぶん理解しているつもりだが、この作品は同時代の他作家とのちがいが如実に現れているようにおもった。おそらく8-90年代の時代設定で書かれているはずだが、現代的というよりは田舎の匂いがする。主人公の登世は出稼ぎの夫を待つ二人の子を抱えた妻であり、電車を鉄道とよぶくらいに都会とはかけ離れた文化の中で暮らしている。だれがこの時代に、この人物造形と物語で書き切れるだろう。ディズニーランドにもマウンテンバイクにもファミコンを新しい文化と脅威として捉えて主人公を追い込む細部としてとても光ってみえる。
    僕は少々三浦哲郎に憧れすぎている節があるが、現代を描くということを忘れてはいけないようにおもった。自分が知っていることを、自分の土俵で書く。そうでなくっちゃ。

  • 上巻に記載

  • 男の不倫なんてよく耳にする話だが、これは二人の子供のいる不倫の話。そしてある時をきっかけに、家族に亀裂が入り、子供があるがまじき行為、親を強請り始めることになった。家族崩壊という深刻な状況、そして登世の衰弱をよく見ることができる。誰が悪いとかそういうのを問いたいのではない。人間の誰もが持つ欲望と渇望そしてそれへの葛藤。改心するのを最後まで願った親の姿には感動した。この本を通して女性の「欲」またはその「心」みたいなものを垣間見て、ためになった

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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