百日紅の咲かない夏 (新潮文庫 み 6-16)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (606ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101135168

作品紹介・あらすじ

父の事故死、母の出奔で別々に育てられた姉弟が、十年ぶりに再会した。以来、十七歳の弟は、二十歳の姉を週末ごとに訪ねる。夜、姉の布団で幼子のように身を寄せながら、歳月の重さと互いの愛の深さにおののく二人。その年、北国の町では怪しげな商事会社が暗躍し、孤独な二人に危険な人間関係がからみつく。百日紅の咲かない寒い夏に出会ってしまった、姉弟の一途な愛の行方は。

感想・レビュー・書評

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  • すごいおもしろかった。たぶん三浦の言う北の悲劇に該当する話なのだろう。当たり前なのだが現代小説として読んでいけるその当たり前さに、この作家が生涯現役で作家として居続けた事実をおもわずにはいられない。昔の作品を読んでいる、ないし今の時代でないものを読むときの硬さがなく、それでいて作家性をかんじる。僕は今まで三浦を読む時に、「忍ぶ川」や「白夜を旅する人々」のような彼の根底にあるテーマ性と直結したところで読みがちだったが、この小説はただただ読めた。すごくいい意味として。つい最近、「愛しい女」を読んでから、あそこに出てくる登場人物のことを時折ふとおもいだす。そうだそうだ、小説ってこんなだったかも、と忘れかけていた感覚を呼び起こしてくれた。本作も何日か後になって作中の彼らを思い出しそうである。

  • 十年ぶりの再会をした姉弟。会うたびにお互いへの愛の深さに慄く。しかし、そんな二人に危険な人間関係が絡みつく。
    清くて、切なくて、終始重苦しい雰囲気だけれどさらりと読める。ああ〜〜好きです…。比佐と砂夫は心の奥底では男女の気持ちでお互いを見ているけれど、最後まで姉弟の関係を貫いた。あのラストは今なら古臭いと感じるけど、これが書かれたのは20年近く前だからね。何にしろ好きです。ただ、鳥子の父親はもうちょっと娘の身を案じよう??これ鳥子の父親がもうちょっと藤夫対策をしてくれればあの結末にはならなかったと思う…。

  • 暗い田舎で暗い生活を送る不運で暗い姉弟愛の話。暗すぎる。新聞で連載していたらしいけど、朝っぱらからこんな救いようのない話を読むのはどうなんだと思った。よくまとまっていると思うけど暗すぎた。

  •  数ある新聞小説の中で、最初から最後まで読み通したのが、もう20年近く前の作品になるが未だこれだけ。単行本でも改めて読んだし、文庫化されるのを待った作品も、今思うとやはりこれだけ。

  • 読み終わった、と言うか、途中まで読んで、まどろっこしくなって一飛びに最後数ページまで飛ぶという荒技をしてしまった作品。
    もともと不幸な姉弟が最後まで救われない、と言うかむしろあの方法でしか救われないのが辛い。
    最後の日なんて最早悲壮感が無くて、肩の荷が下りた後の爽快感さえ感じる。
    でも哀しい。こんな決断をしてしまうこの姉弟が、ただただ哀しい。

  • 図書館で適当に。
    登場する人が生気が無くて生命力の薄そうな人が多いなあなどと思いながら読みました。感情移入していないので事件が起こってもそうなんだ~と淡々と読み進めることが出来ました。ある意味先の読める展開とそうはならないんだ、と言うような展開と言うか。それでも最後までよまさせられてしまうのだから凄いものです。
    個人的には「あの男」が登場シーンから嫌いだったので弟君の「姉ちゃんがあんなヤツに」と言う気分はよっくわかりました(笑)トリコちゃんも結構迂闊だし叔父さんは論外だし。それにしても叔父さんとお姉ちゃんがあやしい関係じゃなくってヨカッタ。

    儚げな姉弟が身を寄せ合って生きていくにはもう少し逞しくなければ難しいんだろうなあ。でもあんな武器を作った時点である意味弟君は破滅だった気がします。その辺りまで含めて終わりしか見えていなかった二人の物語を綺麗にまとめたのかなと思いました。晒し餡のような読後感のお話でした。

  • 2011.04.26. 印象的なタイトル。激しい姉弟です。ついつい読ませる力あり。三浦さんといえば「ユタ」のイメージが強いけど、雰囲気が違います。解説は、石井好子さん。

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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