恋紅 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.86
  • (6)
  • (6)
  • (9)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 75
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101136110

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ずいぶん前の直木賞作品ですが読んでみました。
    江戸から明治にかけて吉原の遊郭の娘として生まれた主人公が役者にほれ、恋に身を投げこみ、不自由な暮らしながら旅役者の恋人として時を過ごしていく様があでやかに描かれていて十分に楽しめた。恋に一途になれるのって素晴らしいなあ。

  • 舞台は幕末~明治の江戸(東京)。主人公は遊郭の娘に生まれた少女ゆう。彼女の恋が主軸になっていますが、うーん、なんだろ、イマイチ共感できなかったかなあ。恋愛部分ではなくて、彼女の思考回路に。頭では理解できるのだけれど、気持ちの上で全面的に味方してあげられない感じというか。

    遊郭という場所は場所だけれど、彼女自身は大切に育てられたお嬢様。少女の頃は年上の優しい花魁に懐いたり、幼いかむろも苛めたりせず可愛がってあげたり、育ちのわりには温厚な性格。ゆえに、自分の立場に引け目を感じていて、遊女たちに対して罪悪感のようなものを抱いているのだけれど、それでも結局はお嬢様育ち。本当の屈辱や貧困は知らず、どんなに利口で温和でも、端々にしょせん苦労知らずのお嬢様な言動が出てしまう。

    彼女自身もそれは自覚しているようだけれど、結局誰をも救えない中途半端な優しさなら、いっそスパっと悪人に徹してくれたほうがこっちはスカっとするのにとか思っちゃう(苦笑)。少女ゆえに母親の言動を許せない潔癖さとかも、理解はできるけど、それすら甘えでしょ、と感じてしまうし。なので、彼女の優しさに対して、悪意をもって報いた遊女(序盤と終盤で2回ありましたね)の心情のほうが、理解しやすいんですよね。でもそういうところも含めて、皆川博子のキャラクターの描き方は巧いなあと思いましたが。

    そんな調子なので、ゆうの恋自体は応援してあげたい反面(お相手の役者・福之助とその三兄弟のキャラクターもとてもいい)、その恋の成就のために周りの人間に対して傍若無人にならざるをえない彼女には、葛藤よりもやはり身勝手、が気になりました。

    幕末おたく的には(笑)、実在の役者・沢村田之助の鮮烈な存在も含め、当時の演劇界の事情や、幕末明治という激動期に巻き込まれた庶民側(と言っていいものかどうか、遊郭だけれど)の事情とか、教科書に載らないような部分での歴史を知れたのは面白かったです。

  • 花魁や遊女の話は切なくて好きなので、
    裏表紙に「吉原」とか「遊女」の文字を見つけると、
    つい読みたくなる。
    しかし、このお話の主人公は、遊女屋の1人娘でお嬢様。
    本来なら黙っていても、将来は遊女屋の女将になれたはずなのに、
    すべてを捨て、好いた役者の元に行く。
    結婚というカタチにとらわれないままの夫婦生活(?)は、
    この時代にしては勇気のいる選択だったのではないかと思う。
    物語の中では色々な対比をモチーフにしているのがわかりやすい。
    裕福vs貧困、芸達者vs大根役者、などなど。

  • 第95回直木賞。
    江戸末期から明治にかけての、遊郭と芝居の世界を描いた時代小説。
    主人公は遊女屋の娘・ゆう。たまたま見かけた三流役者による芝居に魅せられ、遊女屋のおかみとして生きる道を捨てて、旅芸人と結ばれる。
    本筋は、ゆうの恋愛、成長の記録であるが、他に裏テーマというか、さまざまな対立の構図が描かれている。遊女屋の娘・ゆう(使用人)と花魁(雇用人)、ゆうときつ(かむろ)、三流役者・福之助と大名題役者・田之助、吉原と深川、劇場と旅芝居などなど。みなそれぞれに自分の立場を理解し、また、自分の立場をあきらめ嘆き、それでも意地を張って生きていく。

  •  で、さらに。田之助つながりで。
     場末の芝居小屋の役者に救われる、遊女屋の娘ゆうの物語。
     女郎達の犠牲の上に成り立っている自分の暮らし。どうしようもない自己否定から始まる少女の葛藤が描かれます。

     このお話のせいってばかりじゃないんですけど、どーも「娼婦」にファンタジーを感じられない。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
一九三〇年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。
72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。
73年6月「アルカディアの夏」により第20回小説現代新人賞を受賞後は、ミステリー、幻想、時代小説など幅広いジャンルで活躍中。
85年『壁――旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会協会賞、86年「恋紅」で第95回直木賞、90年「薔薇忌」で第3回柴田錬三郎賞、98年「死の泉」で第32回吉川英治文学賞、12年「開かせていただき光栄です」で第12回本格ミステリ大賞、13年 第16回日本ミステリー文学大賞を受賞。
異色の恐怖犯罪小説を集めた傑作集「悦楽園」(出版芸術社)や70年代の単行本未収録作を収録した「ペガサスの挽歌」(烏有書林)などの傑作集も刊行されている。

「2017年 『皆川博子コレクション10みだれ絵双紙 金瓶梅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

恋紅 (新潮文庫)のその他の作品

恋紅(新潮文庫) Kindle版 恋紅(新潮文庫) 皆川博子
恋紅 単行本 恋紅 皆川博子

皆川博子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
皆川 博子
宮部 みゆき
皆川 博子
皆川 博子
皆川 博子
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする