本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784101139524
感想・レビュー・書評
-
起伏の少ないゆったりとした架空の世界の夢を見ているみたいだった。
謎のようなものも真相のようなものも輪郭がはっきりしないので、あまり深く考えなくてもいいような気持ちになる。
でも食べ物の描写は鮮やかで、食欲をそそられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んでいてすごく心地よかったです。砂漠、白い光、うずまく紋様、空飛ぶ《船》、日誌と植物…この世界観。物事の輪郭がもやもやゆらゆらとしていて、最後まではっきりと語られることがないのがいい。もとはどこかに連載されていたんでしょうか、章ごとに区切りがついていて、寝る前に一章ずつ読んでいくのにちょうどよかったです。
それにしてもひさしぶりに長野作品を読んでみたら、ずいぶんとやわらかい文体になっていたのでびっくりです。「!」とか「?」とか普通にあるし、ひらがなが増えましたね。
あと食べものがすごくおいしそうだった…そういえば長野作品ってそうなんでした。この意味では寝る前に読むのは危険だった!
新刊を追いかけなくなってずいぶんたちますが、今でもいいものを書いてくれているんだなあとうれしくなりました。また折に触れて読もう。 -
「レモンタルト」がすごく面白かったので読んでみたが、残り4分の1が読み終わらなかった。
貸し出し期限はまだ残ってたけど、「……まあいいか…」って返却してしまった。
異世界ファンタジーというテーマが、長野まゆみさんの詳細に書き尽くさない、行間で語るような文体に全然合ってないような気がした。
現代日本が舞台であれば、言われなくてもわかる合意が読者との間に形成できてそれが面白いが、
異世界となるとまじで説明されないと何もわからない。
ひたすら出来事を書き連ねていくだけのような感じが単調で、まあそこから想像を膨らませれば良いんだろうけど…なんかね…。 -
好きな世界です。遥か昔のような、ずっと先の未来のような。
全体像がいつまでも掴めないのも良いです。こうかな?と思う何もかもが舞台に拡がる砂漠の砂みたいに掴んだそばから零れ落ちていくけれど、それが全くストレスにならず、揺蕩っていられました。
どこからでも読めるし、どこで読み終えても違和感ない気がします。そんな小説は終わらないんじゃないかと思うけど…不思議。
長野作品は相変わらず食べもの飲みもの美味しそうでなりません。この組み合わせ?って思うのもあるけどそれでも美味しそう。 -
主人公タフィの出自の秘密、がテーマみたいだが、彼の印象は正直薄め。でも、彼の視線を通し、エキゾチックで魅力的な世界観を純粋に楽しめた。
-
就活中に、図書館で借りた単行本を読んでいたけれど、序盤で挫折した長編です。文庫の装丁が単行本とほぼ同じだったので、すぐに見つけてぐんぐん読めました。
舞台はまったくの異世界で、しかし現実世界と文化の行き来を思わせる、知っているようで知らないところでした。砂漠の中で、少ない登場人物と一緒に、時はゆったり過ぎていきます。
《船》から降りて適用化プログラムを受けている主人公タフィが、あやふやな記憶をぼんやりと蘇らせる時、さらに不思議な秘密が少しずつこぼれてきます。全貌は最後まで明らかになりませんが、物語の全体を楽しませます。
不思議な少年ワタ、頼れる管理人のコリドーなど、魅力的な男性を描くのは長野まゆみの素敵なところ。
さらに、今回は随所に出てくる食べ物がとても美味しそうなのと、編み物縫い物の模様が、手先をうずうずさせます。
今まで河出書房で出ていた作品とは違い、しっかり安定感がある作品でした。こんな傑作もまだ出てくるのかという感嘆があります。 -
本屋で何となく気になって手に取った本。個人的に大当たりでした。
主人公のタフィは《船》から降りてきた移住者で、《船》の航海日誌を読みとくため、沙地にやってきた。沙地では同じく移住者のコリドーや現地にはるか昔から住み着いているワタと呼ばれる部族の少年と出会い……というお話。
最初から最後まで淡々とお話は進み、なのに最初からあっという間に世界に引き込まれてしまう。
作中に何度も出てくる複雑な編み目のクロシェのように細かく幾重にも編み重ねられたような、とても綺麗な丁寧なお話でした。読んでいる間、タフィの見ているものをこちらも見ているような、情景が目の前に浮かぶようなお話。
また食べ物の描写がすごくて、おいしそうでおいしそうで。
最後まで相当数の謎が解かれないまま残るんだけど、それが不思議と気にならない。まだまだ、タフィやコリドーや年少のワタやエルジンやハイムーン卿の話は、淡々と、ゆるゆると続いていくんだな、それをまだずっと見ていたいな、と思いました。 -
なぜもっと早く読んでいなかったのだろう!
後悔しきり。
最近の作品はほとんど読んでいなかったからか、それとも本作が対象としている読者がやや年齢高めなのか。たしかに長野まゆみの作品なんだけど、これまでとちょっと違う印象を得た。
どう違うのかといえば、その世界観はいつも通り確立しているし、出てくる単語やアイテムも独特なのだけれど・・・・・・、強いて言えば、会話のカギ括弧を取っ払っていることで、まるでこのお話すべてが誰か一人の頭の中で展開しているような感覚に陥ることや、主人公があまり主張らしい主張をしないところだろうか(彼女の作品の主人公は、腹に一物抱えていてそれを言い出せないで居ることが多い)。
物語は劇的に盛り上がることはなく、海面をユラユラ漂うみたいに進んでいく。でもそれが心地よくて、いつまでも航海していたくなる。 -
長野さんの作品は昔からずっと読み続けているけれど、最近の作品はまた好きだなぁと思う。
しかし珍しく、日本から全く違う国を想像させる話だった。
中央アジアらへんのオリエンタルな空気が漂う。
手触りとしてはテレヴィジョンシティとかその時期くらいのを髣髴とさせるんだけれどそこまで尖ってないというか‥もっと柔らかい感じがする、話。
とりあえず、くどいくらいの食べ物の描写におなかがすいた。
著者プロフィール
長野まゆみの作品





