雁の寺・越前竹人形 (新潮文庫 み-7-3 新潮文庫)

  • 新潮社 (1969年3月24日発売)
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  • 本 ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141039

感想・レビュー・書評

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  • 最近福井県がブームとの事で、俺たちの水上勉さんをフィーチャーしてみました。
    氏の作品は『飢餓海峡』のみでしたが、古い作品ながらも最高に面白かったですね。もちろんレビュー済。そして今回もよかった。私はこのような湿気を帯びた話が好きなんですね。湿気最高!でも梅雨は辛いぞ、糞!

    先ず『鴈の寺』。エロ坊主が小僧に殺されるお話。しかも完全犯罪。コナン君だと直ぐ犯人を当ててしまうレベルだが、時代背景がそうさせない。小僧の生きる辛さが伝わってきます。慈念君、生き抜くんやでー。

    『越前竹人形』。鴈の寺と同様に顏が残念で背が低いコミ障キャラが主人公。この時点で鬱屈とした物語が始まる予感がしましたが、最後の最後に感動したなあ、元遊女の玉枝の葛藤、そして死、大正時代だからこその生き辛さが見えました。これぞ純愛かと。南無・・・

    って、どうしても気になってしょうがないのが1点。

    舞台は福井県です。主人公の喜助は武生市在中、玉枝は芦原温泉勤め、玉枝はんはその前に京都の島原で働いていましたし、そもそも京都の方ですので、ゴリゴリの京都弁どすえ。しかし、喜助はんは武生市の方ですよ。でも何故か京都弁。ほんまはゴリゴリの福井便なんやぞ、おぇーっ。どういうこっちゃ?水上はん、ホンマに福井県の方でおますか?って、あゝ水上はんはおおい町出身でしたね。そこは完全に関西訛りなんですわ、福井弁が分かってなかったのか・・・・

    福井市出身のワテからしますと、舞台が京都かいな?と思いますわ。ほんま。これを読んだ方が福井市に来られると、余りにも違ってショックを受けるでしょうね。
    この点がどうも引っかかったなあ(ストーリーには全く影響無し)
    個人的には前職で向島、中書島に毎日おりましたので、舞台全てコンプリートしてほくそ笑んでおりました。

    兎に角、皆さま念願の新幹線も開通したことですし、一度福井に遊びにきてやー。

  • 水上氏の得意とするしっとり感がただよっていて、あとに引かれるおもいがしました。

  • 若尾文子主演の映画「越前竹人形」を観て、その内容に惹かれ、原作が読んでみたくなった。ストーリー自体は極めて日本風でありながら、どこかしらギリシャ神話にも似た部分を感じさせるところが興味深い。娼妓に身を落としながら、変に擦れたりせず純な心を持ち続けた玉枝の生きる姿勢に胸を打たれた

  • 映画化作品を通して知った水上勉という作家、そのリストも十分長くなった。発表年が古い順に並べてみると「雁の寺」(1962)、「越前竹人形」(1963)、「飢餓海峡」(1965)、「はなれ瞽女おりん」(1977) といった格好で、映画化された分で言えば4割とまずまずの数字になってきた。

    今回手にとった文庫版はそのうちの二本が楽しめるというお得版。長い間積読状態だったがページを開いてみるとあれよあれよと一気に読み切ってしまった。この原作を読んだ人たちが映画化へ!とひた走った気持ちの方まで感じ取れてしまった。

    「雁の寺」を鑑賞したのは2017年末、Japan Societyでのことであり、「越前竹人形」は2018年4月、MoMAでのことであったのだが、両作とも若尾文子を主演としていたこともありなんとなくどちらも宮川一夫撮影監督が撮った作品だと思いこんでいた。正しくは前者は川島雄三監督によるもので宮川一夫氏は関わっておらず、後者は吉村公三郎監督作品だったという事実。この両監督のことはもっと知ってゆきたい。

    両作とも読み進めながら若尾文子のイメージを打ち消した上で読み進めるのはほぼ不可能だった。当時人気十分でその量産ぶりも名高かった水上勉の作品に、これまた当時の大映を背負って立つ名女優を当ててみたいと制作陣が意気込んだのも納得がゆく。

    心の奥底をかき出す技に長けている水上勉。こうした作品を与えられた俳優陣もさぞ奮闘したことだろう…とつい想いを馳せてしまうのだ。

  • とても良かった。
    人はみんな『想い』を抱えて生きている。
    その想いが周りの環境にマッチする場合もあるし、
    いちばん身近な愛する人にすら伝わらない場合もある。
    伝えようとせずに殻に閉じ籠る場合もあるし、
    伝えようとしてもうまく伝えられないもどかしさもある。
    愛する人と想いを共有していると信じながらも、
    その信じている気持ちに対して懐疑的になったり、
    相手を想うあまりに深読みして空回りしたりもする。

    たまたま見つけた本だけど、読んで良かった。
    時代背景も含めて、この湿度の高さは嫌いじゃない。

  • 温度、湿度、明暗。
    「意思だけが生きのこっている」

  •  
    ── 水上 勉《雁の寺・越前竹人形 19690324 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101141037
     
    (20240918)

  • 人間の心の奥底の情念を見た思いがした。

  • 2編とも日本的な美や伝統の中で描かれる物語が谷崎に通ずる印象を受けた。実際谷崎は『越前〜』を高く評価したそうだ。心で深く通じ合った喜助と玉枝に深く感動した。

  • 里子を愛人として囲っている、京都孤峯庵の和尚慈海。
    そこの小僧である13歳の慈念は、和尚から厳しくあたられています。
    里子は慈念に同情し歩み寄りますが・・・。
    ある日、慈海が碁を打ちに出かけて行きましたが、一向に帰っては来ません。
    檀家が亡くなり葬儀を行なわなくてはならなくなりましたが、ついに行方知れずに。
    寺の小僧慈念との関りは?
    直木賞作品『雁の寺』

    福井県武生市の山奥にある寒村竹神部落に住む竹細工師、氏家喜左衛門の後継ぎ喜助。
    父が亡くなって後、喜助のもとへ「芦原の玉枝」と名乗る女性が墓参に訪れてきました。
    女のことが気になった喜助は、芦原温泉街の遊廓で玉枝を見つけます。
    玉枝の部屋には、初めて目にする巧緻な竹人形が飾られていました。
    以来玉枝に惹かれた喜助は幾度かの往来を重ね、その年の夏から二人は同棲を始めます。
    三歳で死に別れた、顔も知らない母を玉枝に重ね合わせ、玉枝に対する錯綜した気持ちを持ちながら生活する喜助。
    二人の奇妙な生活、仕事の合間に作った竹人形が、郷土民芸展への出品をきっかけに、京都へと販路が開かれていきます。
    このことが玉枝の人生を、予期せぬ運命へと変えていきます。
    哀しみを秘めた女性像を描いた『越前竹人形』。
    どちらも水上文学の傑作です。

    高校生の時に読みましたが、あらためて今読んでみると、感慨深いです。
    高校生時代には分からなかったなぁ。

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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