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本 ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784101141091
感想・レビュー・書評
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【櫻守】
桜を愛したある庭師の一生。
内容の多くは、主人公である庭師の師匠の話だが、師弟共に仕事に対する揺るぎない信念と情熱が文章から溢れ出る。二人共、今では珍しい生粋の職人だ。こんなに一つの事に打ち込める対人環境、物理的環境があるのも正直羨ましい。
庭師が師匠の事を〝桜狂い〟と語っているが、庭師の妻も「あんたも桜狂いや」と夫に言っていたのが印象に残っている。
また、桜と言えばソメイヨシノが真っ先に頭に浮かぶが、その他にも本当に多品種があるのも本書で知れた。
そして、〝染井吉野がいちばん堕落した品種〟というダメ出しには驚いた。…というか、ショックだった。
頑固で一本筋。〝昔の日本人〟を身近に感じた。
【凩-宮大工倉持清右衛門の記-】
親譲りの土地家を一人で守り、周囲との関係を断ち頑なな暮らしをしている宮大工の話。
一貫した信念がこの話にもある。
今は失われし古き良き時代の誇りが本書に詰まっている。
また読み返したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今年もたくさんの桜をみた.
その中で初めて名前を認識したのが「笹部櫻」.遅咲きの部類に入るだろうか.散り際の化粧咲きがとりわけ美しかった.この桜の名前の由来する笹部新太郎氏というのは調べてみるとなかなか興味深い人物.彼の元で櫻守をを勤めた人物の物語がこの小説.桜に取り憑かれた人たち.私もその一人なのかも. -
なぜ主人公は竹部ではないのか、その思いが最後まで解消されることはなかった。保守と革新の相容れない思想のすれ違いが不協和音を発し続け、最後までいたたまれない思いがしてならなかった。
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学生の頃に読んで好きだった本。
吉野で桜守されている方をテレビで観て思い出した。
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桜を愛し守り続ける人々の心意気を描く。実在の人物をモデルにしたというから驚きだ。このように桜を愛する人がいたというだけでうれしくなってくる。桜は染井吉野だけではなく、様々な種類があることにも驚かされた。まさしく、日本は桜の国だ。
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「飢餓海峡」に次ぐ2作目の水上作品読了。「櫻守」と「凩」、200ページちょっとの2編の中編小説が収録されている。「凩」の老境に差し掛かった(とは言ってもまだ65歳)宮大工の清右衛門の孤独な心境の描写が心にしみた。清右衛門の立場に近い定年間際に再読すれば、より感慨も深い作品となるだろう。
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「金閣炎上」で名前を知っていた水上勉。
初めて読みました。
櫻守、凩を収録
文化や価値観は移り変わる。
新しいものはやがて不貞腐れ、新しいものにしたり顔で批判する。
だから新しいも古いもない、文化は時間に支配されてはならない。
古いからいい、新しいからいいではない。
むしろいい、悪いもない。
みんなそれそのものを受け止めること。
大事なことは、ひとりびとりの文化を認めること。
伝統が必ずしも素晴らしいものであるとは限らない。 -
櫻守(新潮文庫)
著作者:水上勉
発行者:新潮社
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
桜に魅了された庭師の情熱と生き様に、胸打たれた作品。 -
なかなか良かった
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