金閣炎上 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101141190

感想・レビュー・書評

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  • 偶然みたNHKアナザーストーリーという番組の再放送で、「金閣寺放火事件」が取り上げられ、そこでこの作品が紹介されていました。

    戦争という時代背景、両親との関わり、自分の吃音障害、貧困、金閣寺での生活、理想と現実の大きな隔たり、様々な要因が重なって、この放火事件を起こしてしまったのだろうと推察されます。
    確かに放火、という犯罪は決して許されないけれど、この犯人林養賢のことを考えるとその苦しみが痛いほど伝わってくる、そんなドキュメンタリーでした。

    どうしても親目線で考えてしまう自分もいて、林養賢やまたその母志満子のことを思うと胸が痛みます。

  • ノンフィクションの名作だと思う。
    犯人に実際会ったことのある作者だからこそ書けた作品なのかなと思った。

  • 天を焦がす金色の焔に、彼は何を見たのか? 身も心もぼろぼろになって死んだ金閣放火僧の痛切な魂の叫びを克明に刻む長編小説。

    三島由紀夫の同題材の作品と比べて、読んでて切なくつらくなった。

  • 1950(昭和25)年7月2日の未明に起きた金閣寺放火事件。犯人は同寺徒弟の林養賢という21歳の男。これだけでじゅうぶん衝撃的な事件なのに、駆けつけた母親は息子に面会を拒否され、帰宅途中の汽車から身を投じて死亡。放火の動機にさまざまな憶測が飛び交うなか、20年もの歳月をかけて調査を重ねた水上勉渾身のノンフィクションです。

    自身も僧を目指したことのあった著者の水上は、貧寺に生まれた養賢にかつての自分のことを重ね合わせたのか、養賢の郷里へも足を運んでつぶさに聞き取りをおこなっています。それによって浮かび上がる、養賢の過酷な運命、事件の全貌。

    文庫本の字が小さいのと(老眼が来ている身にはツライ(笑))、350頁という、ほどほどのボリューム以上に内容が濃く、読むのに労力を要します。しかし、養賢が放火する前の数日間の行動や、当時住職にまっさきに取材した新聞記者=司馬遼太郎の話、判決内容に関する著者の異議等、終盤は一気に読まされます。金閣寺放火事件を知るのにこれを超えるものはないでしょう。これを渾身の力作と呼ばずしてなんとする。

  • 昭和25年7月2日未明に金閣寺が寺の小僧による放火で全焼した事件を考察したドキュメンタリー小説。
    筆者は自身もかつては修行をしたことがあり、犯人である林養賢とも一度だけ会ったことがあるといい、ジャーナリストが描いたものとは一線を画す、私小説のような、身近なこととして扱っているような感じだった。

    時間をおいて、三島由紀夫の書いた『金閣寺』と、水上氏の金閣寺での火事を題材とした小説『五番町夕霧楼』も読んでみようと思う。

    それにしても、最近こんなに改行が少なく、文字数の多い本を読んでいなかったので、とても読むのに時間がかかってしまった。
    情けない。

  • 昭和25年7月2日に国宝鹿苑寺金閣が寺僧の放火により焼失。
    犯人である若狭の寒村出身で当時は大谷大学の学生でもあった林養賢(事件当時21歳)の出生から、懲役7年ののちに肺結核で亡くなり、その後に彼の墓がどうなっていたかまでを綿密に調べたうえで事件の約30年後に出版されたお話です。

    作者の水上さんも若狭地方の寒村出身で、若い頃に鹿苑寺と同じ相国寺派のお寺に預けられた経験があり、また犯人と1度だけ会ったこともあることから、単に「国賊」「精神異常者」と犯人の資質を一面からのみ単純に評価する当時の新聞等に疑問を持っていたらしい。

    今の社会ではプライバシー等々で描かれないであろう犯人の置かれていた当時の仏教界の腐敗やらも細かく描かれており、何があろうと歴史ある国宝を放火焼失させる行為は許されるものではないと思うけれども、政治と宗教が絡んだ社会の闇はそれ以上に深かったりするのかな…と思った1冊でした。

  • 小説だと思ってたら、ルポルタージュだった。これはひょっとして水上勉版『冷血』なのか。三島由紀夫の『金閣寺』よりちょうど20年を経てこの作品は上梓されたらしい。私も三島『金閣寺』を読んでからこの水上『金閣炎上』を読むのに、およそ25年のブランクがあった。時間的スパンを同じうしての読書は、読む側の熟成度もまた同じ進化となり、理解が深まっていると思いたい。
    次に読む本は『金閣寺の燃やし方』。

  • 三島由紀夫の金閣寺とは違い、第三者の目から金閣放火の主人公を描いている。筆者の考察・推察を交えながらの展開は評論とも思わせた。三島とは違った切り口での金閣放火に至った主人公のバックボーンや心情の移り変わりの推察がおもしろかった。なんといっても「金閣寺」では描かれていない犯人逮捕後の一連の様子が胸を打った。

  • めっさ面白い!犯人である青年がなぜ放火するに至ったか、実際の関係者の思い出話を織り交ぜつつ、丹念に取材されていました。著者自身が青年と同郷で、しかも事件を起こすずっと前に青年と一面識あった、というのがまた興味をそそります。

  • 次は「金閣寺の燃やし方」です。

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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