reader93さんの感想
2012年5月30日
お母さんが古い着物を男物に見えるように染め直し、二十歳間もない水上氏に渡すのですが、水上氏の目にはその着物の色柄ちぐはぐな感じであまり良くも見えない。それでもお母さんは得意気に「なーんも買うてやれんのやし、お前、こんど出てゆく時は、これもってゆけや。袷に仕立ててやるで」と言う。 このシーンが個人的にぐっときました。親が自分の為に何かをしてくれて、でも若い頃の自分にはそれに素直に感謝出来ない。そんな経験が自分もあったからかな。
少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。 「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」