飢餓海峡 上 (新潮文庫 み-7-24 新潮文庫)

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  • 新潮社 (1990年4月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (512ページ) / ISBN・EAN: 9784101141244

みんなの感想まとめ

テーマは、戦後の混乱の中で生きる人々の苦悩と運命です。作品は、昭和22年の北海道岩幌町を舞台に、質屋一家の惨殺事件とその共犯者の逃亡劇を描いています。特に、八重という女性の視点から語られる物語は、彼女...

感想・レビュー・書評

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  • 2025/9/13読了(再読)
    有栖川有栖『ミステリ国の人々』で知った作品。昭和29年('54)の洞爺丸遭難事故と岩内大火に着想を得たことで知られる社会派推理小説である。
    終戦後の混乱も収まらぬ昭和22年、北海道岩幌町で質屋一家を惨殺、更に共犯者も殺害して本州に逃れた犬飼多吉と、青森大湊の娼家で犬飼と関わった杉戸八重との物語。上巻は、ほぼ八重サイドの物語で、最後に余りに残酷な運命が待ち受けているのだが……。兎に角、戦後日本の人々の暮らしぶりの描写が生々しい。犬飼との関わりを疑って、八重を訪ねる函館署の弓坂刑事は、八重から「いやらしい眼つき」とか酷い言われようだったが、食糧難で皆が闇米に手を出し(※)、いわば全国民が“脛に傷持つ”状態だった当時、警察官の嫌われようは今現在の比ではなかったのだろう。
    時は流れ昭和32年、東京で娼婦として生きる八重が、新聞記事に載った京都の食品会社社長、樽見京一郎の写真に犬飼多吉の面影を見出したことで、新たな悲劇の幕が上がって、下巻に続く。

    ※)当時の食糧管理法違反担当の判事が、自ら闇米を拒否して配給食のみを食べていた結果栄養失調で亡くなったという逸話もある通り、『配給食だけでは生きていけない』というのが、比喩とかでなく単なる事実だったというのが酷い。
    翻って、コメ不足、価格高騰が懸念されている現在、政府及び農水省には、国民がちゃんと食えるように、確りと仕事をして頂きたい(八つ当たり……?)。

  • 水上勉作の社会派推理小説。
    尤も犯人当てタイプではなく、北海道や東北の貧しい村に生まれた男女と、彼らが貧困から逃れられない仕組みを描いていると思われる。
    詳しくは下巻で。

  • 雷電の朝日温泉、登山で廃屋となったかつての温泉宿を見聞したのをきっかけとしてこちらの本を知りました。図書館でたまたま見つけ読み始めましたけど、面白かったです。

    昭和22年は終戦の混乱が収まりつかない激動期、世相がわかるというもの。女が一人で生き抜くのは特に厳しい時代。

    ラストに八重が…、こんなことになるとは!

    下巻が早く読みたい。

    ちなみに岩内大火も洞爺丸の遭難沈没も実際の出来事なんですね。

  • 日本の戦後、昭和二十年代を舞台にした傑作ミステリーの上巻。青森の下北半島で酌婦を生業としていた杉戸八重は客の犬飼多吉と出会い、犬飼から大金を渡される。大金を手にした八重は借金を完済し、上京するのだが…

    上巻では杉戸八重を中心に物語が展開し、犬飼多吉を始めとする男たちがミステリーを紡ぎ出していく。昭和二十年代の世相が非常にリアルであり、下北半島と東京という地方と東京を舞台にした八重の波瀾に満ちた人生と、そこに影を落とす犬飼の謎に包まれた人物像にページをめくる手が止まらない。

  • 面白い〜!下巻もワクワク☺️

  • 重厚な社会的推理小説といった感じ。読み応えは十分、名作と思う。

  • 一気読み必死です!
    社会派ミステリーの中で抜けてます

  • 時代は戦後間もない昭和29年。舞台は「もはや戦後ではない」の言葉には程遠い、荒涼たる北海道・函館。実際に起こった青函連絡船 洞爺丸沈没の海難事故に想を得て描く、上下巻合わせて1000ページの壮大なミステリー。

    今や立志伝中の人物となった主人公の完全犯罪を老練な刑事が足を使った執念の捜査で切り崩していく。極貧と出自が犯罪に深く影を落とす下りは松本清張の砂の器同様の匂いがする。でも、まったく古さを感じさせないミステリー。昭和40年に内田吐夢が映画化。三國連太郎・左幸子・伴淳三郎らが出演で、当時の映画賞を総なめ。著者は三國連太郎を執筆時からイメージしながら書き進めたのではないかと思える程、当時48歳の三國連太
    郎のキャスティングはピッタリと、観てもないのに確信する。秋の夜長に不朽の骨太ミステリー。睡眠不足必至です。

  • 戦後の混乱期に起こる事件を追う。松本清張っぽいストーリー。下巻楽しみ。2016.3.10

  • 読んでて 三國と健さんが思い浮かぶ 映画も原作もすばらい
     うん重い

  • な、、なんで!八重ちゃんいい子やな~幸せになってほしいな~と思ってたところで!
    網走監獄の人、がんばっている

  • 戦前から戦後にかけて、この本に書かれたように日本は貧しかったのだろう。貧しさから罪を犯す、貧しさから身を売る。生きるために必死だった時代を思い、やり切れなさを感じる。

  •  昭和22年9月20日、青函連絡船「層雲丸」は颱風の影響を受けて転覆。854名の乗員乗客のうち半数が死亡する大惨事となった。対策本部がある函館警察署の弓坂吉太郎警部補は、乗客名簿に該当しない男性2名の遺体があることに注目する……。
     同日の朝、函館から20㎞ほど離れた岩幌町にて全町の⅔が焼失する大火災が発生。火元と見られる質店の一家強殺犯による放火が原因と推定された。警察は同年3ヶ月前に仮釈放された受刑者2名と、彼らと行動を共にしていた大男“犬飼多吉”による犯行と断定。その行方を追うも捜査はなかなか進展しなかった……。
     青森県大湊の娼婦 杉戸八重は軌道車で知り合った関西訛りの大男を客に取った。“犬飼多吉”と名乗った男は返礼に6万8千円の札束を渡して去る。戸惑う八重だったが曖昧宿への借金返済と、上京・再出発への資金に用いんと決意する……。

     戦後間も無い、ヤミが跳梁跋扈する日本社会が舞台のミステリー作品。ヤミに頼らねば生き残れぬ都市部の厳しさと、ヤミすら手に入らぬ地方部の貧しさ、そして双方の住民たちの生存への執着の描写が凄まじい。また内田吐夢監督の映画版と比べ、本作では弓坂の執念の捜査や、八重の苦難と強かさがより詳細且つ叮嚀に描かれている。これは下巻にも大いに期待できる!

  • 913.6/ミ/1

  • 1954年9月26日に起きた洞爺丸沈没事故と同日の岩内の大火を結びつけた雄大な社会派推理小説。しかし、推理には重きを置かず、主人公とヒロインの人物描写に紙幅を割く。やがて浮かび上がる壮絶な過去。津軽海峡は、まさしく飢餓の海峡だった。

  • かなり昔の作品なので全体的に文章が硬い。文字が小さいので、目の疲れから何度も読むのを中断して目を休ませる程。地の文が長めの箇所がそこそこあるので、それが読みづらさを助長させている。
    実際に起きた洞爺丸の遭難と岩内大火を元に書かれているのでリアリティのある内容。上巻は通してスローなテンポだったので、下巻での展開に期待。

  • 映画が気に入った流れで原作も、ということで比較しながら楽しめた。台風が引き起こした大火と旅客船転覆を元に戦後の混乱と貧困を組み合わせてこれを創作したひらめきがすばらしい。更にこの小説からあの映画が作られたのもすごいと思うし、それぞれ違った良さがある。八重さんは原作の方が怜悧な人で映画のように極端に一途ではない。弓坂刑事の他に八重さんを探していた謎の人物は結局下間でも未回収?

  • 水上勉の視点が大変に好きだ。その土地に根付いたような、寄り添うような視点で描いてくれる。車窓から田畑を眺めて土地の生活を想起するような、僕の理想としている見方に近い。まだもう少し書きたいが未だ興奮さめやらぬ
    越後つついし親不知に続いて2作品目。北国らしさがひしひしと伝わる。北海道に下北に舞鶴、近畿に住む僕には全て北国に見えてしまう。いつか現地を歩いてみたい。

  • 3.77/404
    『貧しさから這い上がるには、殺ししかなかった。圧倒的リアリティで人間の宿命を描き切る水上文学の金字塔。
    樽見京一郎は京都の僻村に生まれた。父と早く死に別れて母と二人、貧困のどん底であえぎながら必死で這い上がってきた男だ。その彼が、食品会社の社長となり、教育委員まで務める社会的名士に成り上がるためには、いくつかの残虐な殺人を犯さねばならなかった……。そして、巧なり名を遂げたとき、殺人犯犬飼多吉の時代に馴染んだ酌婦、杉戸八重との運命的な出会いが待っていた……。』(「新潮社」サイトより)


    『飢餓海峡』
    著者:水上 勉(みずかみ つとむ)
    出版社 ‏: ‎新潮社
    文庫 ‏: ‎512ページ(上巻)

  • 2021/05/01

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著者プロフィール

少年時代に禅寺の侍者を体験する。立命館大学文学部中退。戦後、宇野浩二に師事する。1959(昭和34)年『霧と影』を発表し本格的な作家活動に入る。1960年『海の牙』で探偵作家クラブ賞、1961年『雁の寺』で直木賞、1971年『宇野浩二伝』で菊池寛賞、1975年『一休』で谷崎賞、1977年『寺泊』で川端賞、1983年『良寛』で毎日芸術賞を受賞する。『金閣炎上』『ブンナよ、木からおりてこい』『土を喰う日々』など著書多数。2004(平成16)年9月永眠。

「2022年 『精進百撰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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