夏の終り (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 102
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101144016

感想・レビュー・書評

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  • 短編五つから成る。最後以外の四つは登場人物も同じ連作な感じで、最後のみ異なっている。
    著者の本はおそらく初めて読んだけど、これは私小説ということでちょっとびっくりした。私が知っている著者は、既に出家されお年を召してからの活動で信奉者が多数いるように見受けられる方だったので。出家前の氏については全然知らなかった。
    なんというか、情熱的かつ衝動的な方だったのだなぁという印象。

  • フォロワーさんからのオススメで読みました。瀬戸内寂聴の私小説。妻子ある不遇な作家である慎吾と8年に及ぶ愛の生活に疲れ、かつて愛し合っていた年下の男・涼太との再熱愛にも満たされない知子。泥沼な関係は何処までも縺れた糸のように知子に絡みつく。読んで感じたのは、人の愛欲の前に正しさは無意味であるということだ。愛に綺麗も汚いもない。不倫でも道ならぬ浮気であっても、心底からその人を好きになり、愛してしまったのなら、それがその人にとって真実の愛なのだ。この場合、後ろ指をさされる覚悟をも引き受けなければならないけれども。人を愛することは生半可ではないのだと改めて知るような作品でした。「雉子」の終盤も凄まじい。

  • 映画を観てから読了。
    なんとも言えない人間関係の中にいるだらしない大人たちのお話に変わりなかった。

  • 主人公と重なる部分が多いのだよ、、、

  • 四角関係。ややこしすぎて飽きそうでしたが、文章がとても綺麗なので読了。

  • アパートに一部屋借り、8年間、知子と暮らしたまに家庭に帰る慎吾の短編集。こんな感じの男女が次々に出てきたら疲れちゃうなと思ったけど、同じ人たちの連作短編集で助かった。不倫関係を扱うものはあまり生理的に受け付けないんだけど、女がサバサバしている(ように気を配っている)のと何事もなく日々が過ぎていくので落ち着いた風情があってちゃんと最後まで読めた、と思ったらこれは半私小説なのか、道理で背景や描写が細やかでよく作られてると思った。

  • 面白かった。

  •  1962(昭和37)年から翌年にかけて発表された短編を収めたもの。瀬戸内寂聴さん出家前、瀬戸内晴美名義で可書かれた初期作品集。
     瀬戸内寂聴さんは初めて読んだのだが、昭和の昔からよく新聞の広告欄にこの方のいかにも温和そうな笑みを浮かべたまん丸いお顔が載っていて、この顔と作家名はずっと昔から知っている。その寂聴さんも昨年亡くなったそうで、そういえば読んでなかったから、今回読んでみた。
     この文庫本の裏表紙には「私小説集」と書かれている。これは本当なのだろうか? 5編中4編は同じ知子なる女性が主人公で、同じ不倫のシチュエーションを描いているのだが、私小説と言うことは、作者の実体験をなぞった設定ということになるが。巻末の解説にはそうは書いていないので、よく分からない。
     仮に作家の実体験がストレートに反映されているとしても、これらの短編は「私小説」らしい感触はなく、むしろ心理小説の書き方である。地味な心理描写ではあるが、それだけにリアルで、ラディゲの文体の猿真似ばかりやって喜んでいた三島由紀夫などとは遥かに別次元の小説作品だ。
     が、とりとめもないといえば言える。すっきりと構築された作品体とはなっていないし、そもそも「連作」と言うには、重複する部分などもあるのでしっくりこない。特に大きな構想を描くことなく書かれた小品群、といったところか。
     描かれている不倫の情緒は、何やらウェットで昭和っぽいのだが、やはり「演歌」で描かれるような単純なものではない。本作で描出される主人公の人物像は、小説ならではの<オブジェクト指向プログラム>によってオブジェクト化し、それゆえに多義的な・あるいは超-意味的な実在として屹立する。要するに「彼女」という第3者として、その存在が立ち現れる。
     こういった小説の基本性能を備えた作品群ではあるが、ちょっと狭い世界に閉じこもっているようなところもあり、「優れた小説」と呼ぶには今ひとつのような気がした。
     たぶん瀬戸内寂聴さんはどちらかというと大衆文芸サイドの「流行作家」であったと思われるので、後年はもっと面白い小説を書いたのかどうか、またそのうち読んでみようと思う。

  • 昨年11月の瀬戸内寂聴さんの死去を受けて、冬休みに人気作を読んだ。
    主人公は妻子ある男と不倫関係にあるが、一方で昔の男とも関係を持つという四角関係が描かれ、連作で収録されている。
    あらすじを読むだけでは酷い女だ、なんて惨い話なだと思ったが、読み終えるとモヤモヤするより清々しい感じだったのは、瀬戸内寂聴さんの巧みなワードセンスと人物像の表現によるものなのだろうと思う。

  • 初寂聴作品。
    なんかすごい濃くて強圧だった。
    これが原点となった私小説だって。
    これが瀬戸内寂聴か。

    善悪で量れない人間の深さや顔が
    あることをしみじみ感じる。

    ひかりちゃん主演の映画があるらしい。
    映像の方がぐっとよさそう。

著者プロフィール

1922年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞、92年『花に問え』で谷崎純一郎賞、11年『風景』で泉鏡花賞を受賞。2006年、文化勲章を受章。2021年11月、逝去。

「2022年 『瀬戸内寂聴 初期自選エッセイ 美麗ケース入りセット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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