アメリカン・スクール (新潮文庫)

  • 新潮社 (1967年6月27日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784101145013

感想・レビュー・書評

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  • 著者、小島信夫さん、ウィキペディアによると、次のような方です。

    ---引用開始

    小島 信夫(こじま のぶお、1915年〈大正4年〉2月28日 - 2006年〈平成18年〉10月26日)は、日本の小説家。中国から復員後、教師を経て『小銃』で文壇に登場。「第三の新人」の一人と目されるも、抽象表現を帯びた前衛的手法の作品に独自の道を拓いた。評伝や文学論でも活躍。日本芸術院会員。文化功労者。位階は正四位。

    ---引用終了


    で、「BOOK」データベースによると、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作『小銃』や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇『汽車の中』など全八編を収録。一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。

    ---引用終了


    まず、表題作は、芥川賞受賞作になりますので、その前後の受賞作を確認しておきます。

    第31回 「驟雨」 吉行淳之介
    第32回 「アメリカン・スクール」 小島信夫
    第32回 「プールサイド小景」 庄野潤三 
    第33回 「白い人」 遠藤周作 
    第34回 「太陽の季節」 石原慎太郎
    第35回 「海人舟」 近藤啓太郎

  • 時代背景に理解がないから、読むのにすごく時間がかかった。

    戦時中の兵士たちってほんとにこんな感じだったんだろうなぁ。意外にも緊張感がないような、でも軍隊だから厳しい序列があって、現地の女を買って…。星が偉いのか人が偉いのか分からなくなって。どんな組織の中でもいじめの対象ができる。
    わたしからすると全部ツライ。

    戦後の題材の、汽車の中、アメリカン・スクールはさらに理解が難しくて、ふーーーん?となってしまった。スポットが当たる人がいずれも日本人っぽいと言われそうな押しの弱いなのだけど、周りに振り回されてる…。周りも周りでアメリカへの歪な気持ちだったり、私利私欲に飲まれてて、ああ混乱の時代だなぁと思ったりした。

    微笑は今でもそうだよな、という話だった。

    馬と鬼は時間切れで読み切れず。

  • なんの前情報もなしに読んだけど、面白くてびっくりした。特に『小銃』『星』『馬』が好きです。『馬』ではうだつが上がらない男が妻に対して色々思うとこがあり不満などを漏らしてるけど、どうせこんなヘンな世の中なんだから咎めることできないよね~とか言っちゃうあたりがこの男の魅力を最大限引き出してる気がする。
    そう思うと、どの作品の登場人物もみんな特徴的で面白い。


  • 文は恐らく綺麗とは言えず、悪文寄りだが“凄み”のある非常に特殊な作家。
    戦後特有の暗い雰囲気に包まれている本作だが、とにかく言語化が難しい魅力がある。
    芥川賞受賞で有名な本作だが、是非他作の魅力も感じて欲しい。

  • 終戦後、アメリカンスクールに視察に行く教師たちを描いた表題作他7篇。自意識、劣等感、優越感などに塗れている人ばかり。(日本人あるある?)何度か読んでいますがその度に、日本は敗戦国なんだと思わずにはいられない。

  • 昔の人が書くアメリカの学校って?と好奇心を煽られ読んでみた。阿部公彦氏の著書には三島由紀夫はこの作家を嫌っていたとのこと。これを読めばなるほど、嫌いだろう。危ういところで美化されそうな兵隊の物語を悲惨、残虐、言葉では言い尽くせない中にいながらそれを滑稽に、あるいは愚の骨頂ともいうべき切なく悲しい人間が描写され、夢か現か判断しかねる世界を描きだす。人間はかくも愚かで情けない切ない、親切にも愛すべきとは言い難い。それを白日の下にさらけ出す。恥ずべき姿を晒しながら生きる日本人を描き出したのか己のことなのか。
     こんな風に人の人生を翻弄した戦争にただただ愚かと感ずる以外ない。辛い。

  • 奇想天外な思想や行動力を持つ主人公たちだが、はっとするくらい切実な気持ちも持っている。
    微笑とアメリカン・スクールが印象的だった。

  • 昨年5月の不忍ブックストリート『一箱古本市』で、100円で購入した一冊。昭和50年6月発行の十刷。
    王道的なレビューとすれば、「戦後」「アメリカ」「風刺」あたりのキーワードを使うということになるのだろうが、ワタシにはもうとにかく"イタイ"短編集という印象が強烈に。何が"イタイ"って、登場してくる男たちがのきなみイタイ。発言、態度、行動…どれを取っても、思わず「アイタタタ…」と突っ込みたくなるようなものばかり。例えば、このイタイ男たちはひたすら依存する。妻へ、愛人へ、物へ。そして、ブンブン振り回される。
    ただ、思わず笑ってしまうおかしさがあるのは確かなのだけれど、喜劇のように腹の底から笑えるものでは決してない。この男たちが見せているのは、人間の性(さが)とか弱さといったもので、それは自分にもあてはまる部分がある…と、どこかで感じてしまう。これが腹の底からは笑えない理由なのでは。この短編集の不思議なおかしさの奥には、そんなものが垣間見えた。


  • 戦後、軍で英語力を買われた筆者。アメリカ軍のアメリカンスクールで英語教師の同期と英語授業の研修に向かうが、学校まで6kmの道のりで靴擦れになってしまい、進駐軍のジープに乗ってアメリカ兵と話すのが嫌で、裸足で歩いてしまう。研修でも一人英語を話すのが苦手なため、様々なトラブルを起こしてしまう…。

    おそらく筆者の体験からの短編集。軍の話、帰国してからの話が半分以上体験談であろう。冒頭の汽車の中での不思議な体験から、詰め込み型の独特の文章で読んでも読んでも読み進まない感覚を覚える。軍の話から読みやすくなり、『小銃』で軍の話はクライマックスを迎える。

    後半作品ではがらっとカラーが変わり、子供が小児麻痺であることに気がついての苦悩『微笑』、なぜか家に引退した競走馬を飼うことになる『馬』など、純文学?と思わせておいて、夢野久作のようなオカルティックなネジ曲がった世界観の作品が2本。

    自分の精神がおかしくなる、理解しているようで理解できない妻、子供がまともに育たないか死ぬことという、作者の感じている恐怖がじわじわと大きくなっていくというところを現しているのでは?という作品である。SFを読み慣れている人にとっては、必要以上に深読みしてしまう作品であろう。

    いかんせん、全体に古い文体であり「~である」「~である」とぶつぶつ切られ、戦中戦後直後の風俗と価値観に加え、後半になるほどじわじわとねじれていく世界に、楽しんで読めるというほどの理解が追いつくのは難しいだろう。

    そういうのが好きな人向けである。

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著者プロフィール

小島信夫
一九一五年、岐阜県生まれ。東京大学文学部英文学科卒業。五五年、『アメリカン・スクール』で芥川賞、六五年、『抱擁家族』で谷崎潤一郎賞、七二年、『私の作家評伝』で芸術選奨文部大臣賞、八一年、『私の作家遍歴』で日本文学大賞、八二年、『別れる理由』で野間文芸賞、九八年、『うるわしき日々』で読売文学賞を受賞。他に『菅野満子の手紙』『原石鼎』『こよなく愛した』『寓話』『残光』など多数。二〇〇六年十月没。

「2023年 『小説作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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