- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101145020
感想・レビュー・書評
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最晩年の一作。
ここまで文章がこんがらがると、読み進めるのに使うエネルギー負担が面白さに勝ってしまった。
表題の通り、まさに作者の頭の中の刹那的な思考・記憶がそのままパッケージされていて、文学的に重要な一冊だとは感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
解説:山崎勉
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出だしに施設に入った小島さんの奥さんのことについて触れられる箇所がある。その後、小説は自由自在な小島さんの語りによって展開されていくのだけれど、何となくまた奥さんのことで終わるのではないか、という予感めいたものがあった。事実、そうなって「ああ」と思ったのだけど、こういう終わり方をしなくても「ああ」と思ったのかもしれないなと考えた。いろんな終り方を事前に想像していたと思う。たまたまその一つと合致しただけなのだけれど、どこか感慨深いものがあった。「残光」という題通り、自分の中のどこかにささやかな光がぽっと灯るような。
小島信夫さんの最後の作品。
語りながら話の主体も、話の内容も少しずつ、もしくは大きくずれていく。意図的に書いている部分と思うにまかせて筆を走らせた部分と両方あるのかな、などと思いながら読んでいた。どんな読み方もできそうだけれど、どこか奥さんのことが念頭にありながら書いているのではないかと、個人的にずっと思っていた。施設にいる小島さんの奥さんは、もうすでに小島さんのことを認識できていない。言葉が通じないのだ。しかし言葉が通じなくても、小島さんの奥さんには見えている世界がある。その世界の言葉で、小島さんと話をしようとする。そのことはこの小説全体と似ている気がするのだ。日常の文法を逸脱する方法でコミュニケーションを試みる。それは衰えゆく身体とリンクしている。並の人なら、この状態で言葉を紡ごうとしないのではないか。これは大変な力業ではないかと思う。老いたりとも、身体の底に残っている強靭な意志のような力を感じる。この作品で小島さんは奥さんとコミュニケーションできたのだろうか。
小島信夫さんの若い頃の小説も読みたくなる。 -
2012/5/28購入
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うーん、あんまりついて行けなかったかも……。何しろいわゆる物語になっている小説とは違うから。
読んでいる時、これはいま、何について言っているんだろうと思うこともしばしばだった。
でも、『菅野満子の手紙』は読んでみたいなー。 -
札幌などを舞台とした作品です。
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どんな小説かと聞かれると困る。
小島信夫という人間のある場面の思考を文章に写しとったものだ。だから、文章が破錠していてもそれはそれでおかしくはない。浮遊する断片。しかし、バラバラではない。
ぐっ、ぐっと引っかかりながら読む。その都度立ち止まり文章と一緒に思考する。書いている文章、読んでいる文章しか存在しない。そんなことを思い起こさせる小説だ。