- Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101146294
感想・レビュー・書評
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読むものがなくて久しぶりに読んだら引き込まれた。
やはり名作。考えさせられるというのもあるけど、単純に、ピカレスクロマンのエンタテイメントとしても面白い。
そして、昔読んだときと今では、自分の感想も変わるものだなと驚く。
富士夫を始めとする人間たちのクズさ、いやらしさ。前もそう思ったけれど、これほど容赦なかっただろうか。
雪子は聖女ではなく、説教くさい女だなと思ってしまったこと。この感情のなさ、淡泊さが逆に男性を寄せ付けなかったのかなとも。
対人という面では、ふたりは正反対だと思う。
人に期待をするか、しないかという点において。
人に依存して生きているか、自立しているか。
でも富士夫の主観では、「あの人は甘ちゃんで、俺は頭がよく、世間を知っている」になり、
雪子の主観では、「私は大した人間じゃない、頭も良くない、世間知らず」になるんだよね。
この面白さ、人間というものの興味深さ。
雪子は人に何も期待しない。変化ではなくて、そのままにしておくことをよしとする。
これが「善」の正体だったとは。
そしてあの一行に胸をうたれる。
昔は、うーん?って思ったものだけど。切なくて胸がふさがれるような気持ちになった。
富士夫のようなクズが、なぜ雪子を愛し、雪子だけは別だと思ったのか。人を愛する、信じるということは何なのか。
掘り下げては書かれないけれど、富士夫の母親の愚かさ。
なんで母親は面会に来ないんだろう。雪子に会おうともしないんだろう。彼女がもう少し賢ければ。
名作は、年取ってから読み返してみるものですね。 -
犯罪を犯す必然性で読ませようとする意図はなく、静かに問いかけられるような作品。キリスト教の思想が反映されている。
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フジテレビでしたでしょうか。ドラマ化されていました。
本よりは、ドラマの方が先です。
素晴らしい作品でしたので、原作を読んでみる事に。
ほぼ、原作通り。
役者さんもぴったりとハマっていました。
(白竜サンと山口果林さんでした。)
思わず、「ヘブンリーブルー」という朝顔を探してしまった…。 -
真面目なクリスチャンの雪子と、どうしようもない殺人犯の冨士男のやり取りが読みごたえある。遠藤周作の「沈黙」を再読した後だったので、キリストという存在や人の善悪について考えさせられた。
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富士男と雪子の書簡は果てしなくすれ違ったままラストを迎える。天上の青という朝顔の種を蒔いた雪子にも蒔かなかった富士男にも祝福のように咲いてただ、悲しい。
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凶悪な殺人を繰り返す男(富士男)と、
心穏やかな年上独身女(雪子)の交流を描いている。
ある日、雪子に近づくためだけに、
庭先の青い朝顔(ヘブンリーブルー)を褒め、種をもらう富士男。
もらった種はすぐさま捨てられ、
それに気づいた雪子だが、そのまま富士男との交流を続ける。
許されざる凶悪犯である富士男だが、
雪子の前でだけは素直に人間らしさを取り戻す。
やがて、逮捕された富士男のため、
弁護士を雇い、世間から非難を浴びる雪子。
その心理とは?
同じ女として共感はできない。
読み物としては、淡々と進行しているようでいて、
読み応え充分で飽きさせない。