秘密のファイル CIAの対日工作 (下) (新潮文庫)

  • 新潮社 (2003年8月28日発売)
3.25
  • (3)
  • (0)
  • (6)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 68
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101148229

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  下巻では冷戦以降のCIAの活動、日本の政界との関係について言及される。GHQによる占領が終わったあと、CIAが日本国内で本格的に活動した。本書を読むと、CIAは日本を共産化させないために、右翼の児玉誉士夫や笹川良一に資金提供をしたことが明かされており、その資金を鳩山一郎や岸信介など、のちの自民党結党に繋がる行動をとっていたことがわかる。すなわち、現在の日米関係は彼らの一連の活動によって強化されていったのである。またCIAは将来首相になるそうな人物に目をつけて、個別のファイルを作成したことも本書で明かされている。このように、日本は敗戦、GHQの占領、そしてCIAとの結びつきというように、アメリカの意向に逆らえない構造となっている。

  •  本書の内容は、「CIAの対日工作」以外も、山本五十六死亡や日本軍暗号解読など、いろいろなことが書かれていて著述もしっかりしている。過去に論争になっていたことや、定説を覆すことを著者は特に書いているから、大部ではあるが、興味がある部分だけでも読むことをお薦めしたい。
     以下、字下げで引用部を示します。

     評者が興味深く思ったのは岸信介評。

      (1953年)9月18日付の(米陸軍情報部)ファイルも、
      「彼はよく笑い、親しみがあり、マナーも魅力的で、非常に『西洋的』。たばこを吸い、スコッチウイスキーを飲む。…(中略)…東条の辞任要求を拒否して以来、彼の勇気に疑問を挟む余地はない。高潔で、スキャンダルとは無縁。」
      と、岸を手放しでほめた。 (p222)

     とある。しかし「高潔」な岸信介は、CIAからカネをもらっていた人物でもあり、反安保つぶしに暴力団を雇わせた人物でもある。

      当時、日本の総選挙にCIA資金が投入されたことは公然の秘密と化している。(p272)

      「(全学連や新劇人のデモ隊を襲ったグループは)岸の巣鴨時代からの友人で右翼の大物、児玉誉士夫が全国から集めた暴力団員らだった」(p353)

     だからCIAが岸を手放しでほめている部分は、事実とは関係なく、ただほめたいからほめているわけだ。岸をエージェントにしたい理由が他にある。
     米公文書の機密解除であらたな史料が公開されたことは重要だが、当然ながら公開された史料のさらに裏がある。

  • ふむ

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

ジャーナリスト

「2023年 『SNS時代のジャーナリズムを考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

春名幹男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×