江戸川乱歩名作選 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 657
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101149028

作品紹介・あらすじ

見るも無残に顔を潰された死体、変転する事件像(『石榴』)。絶世の美女に心を奪われた兄の想像を絶する“運命”(『押絵と旅する男』)。謎に満ちた探偵作家・大江春泥に脅迫される実業家夫人、彼女を恋する私は春泥の影を追跡する――後世に語り継がれるミステリ『陰獣』。他に『目羅博士』『人でなしの恋』『白昼夢』『踊る一寸法師』を収録。大乱歩の魔力を存分に味わえる全7編。

感想・レビュー・書評

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  • 一つ目の「石榴」から濃い。
    古い作品なのだけど「そうは終わらないだろう」という感覚で容赦なく読んでみたが、予想を超えて揺さぶられ、気がついた時には暗闇に一人で取り残されたかの様に終わった。

    全体的、愛、憎しみ、狂い、の中にいる喪失または欠落して何も響かない人々が描かれていて全体を貫いてる。

    怪物だが「石榴」の犯人の様に
    自己完結するほど完璧ではなく、自分の勝利であり敗北である状態を知らせたいという欲があったり。人間と怪物の狭間が生々しく切り取られていてる。
    本当にただの化け物達の話もあるが、それが挟まっているせいで人間の話も怪物の話のように読める。

    本来はそれぞれ単発で別々に書かれたのだろうけど、続けて読むと作者の抱えるテーマが見え「こんな奇話を愉しむ人も怪物も皮一枚」と言われてる様にも感じる。

    暑い日に蝉に騒がれながら
    脂汗をかきつつ読むのがよい
    だんだん冷や汗に変わっていく

    新潮文庫の夏のフェア版のカバー
    全面赤に、真珠か虹を閉じ込めた様な
    色でタイトルが書かれている。
    妖しい。血と劇薬の混ざった匂いが
    しそうで良い。

    知らぬうちに作者の命日を跨いで読んでいた事に、なんかわからんけど
    ゾッとする。

    • ikedazuさん
      「陰獣」って、結局誰だったんだ?全員?
      「陰獣」って、結局誰だったんだ?全員?
      2019/07/31
  • 江戸川乱歩の没後51年目を迎えた今年、様々な形で江戸川乱歩作品が文庫化されている。この『江戸川乱歩名作選』は新潮文庫から1960年に刊行された『江戸川乱歩傑作選』に次ぐ第2弾のベスト選集といった位置付けのようだ。収録されている作品は全て既読作であるのだが、何度でも読み返したくなるのが、江戸川乱歩作品の魅力だ。

    今なお、江戸川乱歩が多くの人々に読み続けられている理由は類い希なる巧みなプロット、時に幻想的で、時に耽美的な、読者の冒険心を大いに刺激し、作品全体に時を経ても廃ることのない面白さを秘めているからではなかろうか。

    『石榴』『押絵と旅する男』『目羅博士』『人でなしの恋』『白日夢』『踊る一寸法師』『陰獣』の7編を収録。

    『石榴』は、傑作『二癈人』と同じような構成の物語であるが、『二癈人』よりもトリックを重視した作品のように思う。

    『押絵と旅する男』は、何とも幻想的な物語、例えるならば『鏡地獄』の系統の作品だろう。

    『目羅博士』も幻想的な物語であるが、博士が犯した殺人のトリックが語られる。また、物語の中に江戸川乱歩自身が実名で登場するのは非常に珍しい。

    『人でなしの恋』は、耽美的で何とも妖しい物語。現代作家では大石圭が同じような系統の作品を書いている。

    『白日夢』は、群衆心理を的確に描いた短編であり、短編の中に凝縮されるものが多いせいか、記憶に残る作品になっている。

    『踊る一寸法師』は、サーカスの持つ怪しさを背景に猟奇的な光景を描いた作品で、本作の中では一番好きな作品である。

    『陰獣』は、短編ばかりの本作の中で、唯一の中編になる。淫靡な要素とミステリーの要素とがバランスを取り、上手く融合されている。作品の中に江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』『D坂の殺人事件』『二銭銅貨』といった作品を彷彿とさせる作品名が登場するのが面白い。

  • 意外と読んでいなかった江戸川乱歩を改めて読んでみた。一作目から引き込まれていって、すごいなあ!ちょっと映像では怖そうだなと思うお話が多いけど、雰囲気頼みにならず、ただ不思議や怖さだけでなく、しっかりお話が組み立ててあって、どんでん返しが2回以上、雰囲気を壊さず新鮮な驚きでやってのけてるから偉大だなと思った。今読んでもこの感動なんだから当時の驚きはすごかっただろうなあ。新作として江戸川乱歩の本を読める当時の人がちょっと羨ましいです。

  • 全集も何度も刊行されているし今親しんでいる和製ミステリの生みの親育ての親で、これが読めるのは嬉しかった。横溝正史や高木彬光などを見つけ出した大乱歩の探偵小説。ミステリといわないところに重みを感じます。


    目次は「石榴」「押絵と旅する男」「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊る一寸法師」「陰獣」です。

    どれも何度も取り上げられていたのでずいぶん前に読んでいました、ストーリーはきちんと覚えてはいないのですが、肝心の解決部分の方を覚えていたのが多かった、残念。

    それで謎解きというより改めて背景になっている幻想的な表現を読むと、当時の珍しい風俗などくっきり鮮やかな手並みで書いてあるのが改めて印象的でした。ジャンルとしては推理小説ですが、多少エロティックだったりグロい所もあって、短編でもずいぶんひねりが効いて面白かった。

    最後に載っているのが長編の「陰獣」
    これは初めて読んだのですが「陰獣」は今では年のせいか恐怖感にも慣れてしまっていたけれど、書き出しから興味深かった。

    私は思うことがある。
    探偵小説家というものは二種類あって、一つの方は犯罪者型とでもいうか、犯罪ばかりに興味を持ち、たとえ推理的な探偵小説を書くにしても、犯罪の残虐な心理を思うさま書かないでは満足しないような作家であるし、もう一つの方は探偵型とでもいうか、ごく健全で、理知的な探偵の径路のみ興味を持ち、犯罪者の心理などには一向頓着しない作家であると。


    「陰獣」にはこの二つのタイプの探偵作家が出てくる。

    殺人事件が起き、それの回顧録をノートに残しているのはもちろん理知的な後者で、自分は全くのおひとよしの善人だと言っている、確かにその通りなので事件に巻き込まれる。

    事件当時世間に受けているのは犯罪を煽情的にこれでもかと書く大江春泥などで前者だった。

    私(善人という作家)は博物館でそっと隣に立った女性に一目でひかれた。言葉を交わしてみると彼女は私の小説のファンだと言って、ときどき手紙が来るようになった。その女性・静子は実業家小山田氏の妻だった。

    相談があるという手紙で出かけてみると、彼女は身の上話をした。
    女学生時代の大恋愛の相手だった平田という男がいまだにつき纏ってくるので恐ろしい。いつもどこかで平田の気配がする。耳を澄ますと天井から時計の音がする。
    平田の筆跡で手紙が来る、その手紙を見ると、平田は今では売れっ子の大江春泥だと書いてあった。
    あの血みどろで悪趣味な小説を書き、そこが世間に受けている春泥だから何をされるか、と怯えていた。

    たびたびあっているうちに静子と深い恋愛関係に堕ちてしまった。借りた土蔵の二階を静子の趣味でしつらえ遊戯と称して関係を持つようになる。
    二人が夢中になって遊び耽っている間に、静子の夫の死体が隅田川に流れ着き乗り合い汽船のトイレで発見された。

    恨んでやる殺してやると手紙に書いてきた春泥が実行したのか。
    しかし彼は人嫌いで世間に顔を見せるのを極端に嫌い転居を繰り返していたが、事件の後ふっつりと後を絶ってしまった。

    さぁ、静子は?春泥は?犯人は?私の日記は克明に経緯を記してあったがその後春泥は見つからず、脅迫の手紙も来なくなった。

    事件の様相は二転三転、最初に書いたように、善良な作家である私は、腑に落ちない時間の矛盾に気が付く。


    残りの6篇も、オチが鮮やかなもの、もの悲しい結末をにおわせるもの。思いもよらない真実が隠されていたもの。酔っ払いの悪い冗談で辱められた男の胸のすく復讐譚など。やはり面白かった。
    再読して乱歩の世界に浸ることができた。

  • 久々に乱歩を読みたくなったので。少年探偵団シリーズしか読んだことがなかったが、通常の短編も非常に面白い。
    乱歩と筒井康隆が交友を持っていたというのは知らなかった。

  • 傑作選の前に読んだ。

    どれもとても面白いが、やはり「芋虫」と同じく、切なさ、哀しさを感じさせる「陰獣」が素晴らしい。

  • 2018年キュンタのしおり欲しさに購入し、一年積んで読了(^^;)薄暗く、妖しく、恐くてゾクゾクするのに、乱歩の世界にどっぷりと浸る事が心地好く感じる(^-^;)この感情は何だろう。

  • 2020/06/28〜6/30

    【感想】
    初めて江戸川乱歩読んだ
    奇妙、不気味という印象

    「石榴」
    話の流れがすごく面白かった!
    でも、絹代の証言がかなり疑問
    ・万右衛門は黙っていたのか喋っていたのか
    ・抱擁(P55)する距離まで近づいたなら主人か否かわかるだろう

    このふたつが気になって後半入ってこなかった、もっとしっかり読めばわかるのかなあ?

    「押絵と旅する男」
    奇妙だけど引き込まれてしまう
    老人も押絵の話も蜃気楼みたいだなあ

    名作選の中でいちばんすき

    「目羅博士」
    導入のサルの話が個人的に好き

    まるで相好が変わって、顔じゅうが皺くちゃになって、口だけが、裂けるほど、左右に、キューッと伸びたのです(P141)
    →不気味さを強く感じる表現だな、と

    ※ルンペン=浮浪者

    「人でなしの恋」
    面白かった、読みやすかった
    恋愛感情の表現が繊細で恋愛小説書いて欲しくなるwww

    「白昼夢」
    不気味、に尽きる

    「踊る一寸法師」
    気分悪くなってしまった

    「陰獣」
    面白かった
    事実が最後までわからない、ここまで読み応えがあるのにもやっとさせるのすごいなあ

  • だいぶ前に買って積んでた本。
    友達が乱歩にハマってるらしく話題に上がったのでやっと読みました。
    子供の頃に読んだ気がするのがちらほら。でも覚えてないものですね。
    乱歩の思惑通りの場所でハラハラワクワクして、見事に楽しませられたかんじ。

  • 前から読んでみたかった。プレミアムカバーのデザインが綺麗で買いました。全部良かった。人間の欲深さ、業の深さを感じました。世界観が最高で読んでいると入り込んでしまいます。まだまだ読みたい。

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著者プロフィール

江戸川乱歩(えどがわ らんぽ)
1894年10月21日 - 1965年7月28日
日本を代表する小説家・推理作家。三重県生まれ。ペンネームの江戸川乱歩は、小説家エドガー・アラン・ポーに由来。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任した。代表作に『D坂の殺人事件』、『陰獣』、『孤島の鬼』、『怪人二十面相』、『幻影城』、『探偵小説四十年』など。少年探偵団シリーズは絶大な人気を博した。

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