- 本 ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101149110
感想・レビュー・書評
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149冊目『江戸アルキ帖』(杉浦日向子 著、1989年4月、新潮社)
著者がタイムマシンに乗り江戸の街へと降り立ち、そこで見聞きした情景をイラストと共に紹介するという体のエッセイ。127点ものカラーイスラトが掲載されており、見ても読んでも心の踊る、楽しい江戸紹介本となっている。
深い知識と確かな画力。こういう作家は滅多に出てこない。本当に稀有な存在だったと思う。
〈娘の日のとりとめのなさを、私達は十代後半で忘れてしまうけれど、江戸の女は妻となり母となり老いて尚、忘れないように見える〉詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
鎖国時代、徳川家支配・幕藩体制の中央行政府・江戸は、大阪という『天下の台所』から一方的に消費財の供給を受ける一大消費地であり、武士は薄給でも体面を保つ義務があり、異性との出会いもなく大変だったが、向上心の無い一般町人にはのんびりとした暮らしが保障されていたらしい。一日の仕事は午前だけのせいぜい4時間、観劇や園芸や魚釣りを楽しむ人々。ゼロ成長のもと、没落してもさほど恥ずかしくない。富裕層は養子や番頭に人を得て事業を継続させようとするが、道楽も許容されている。新陳代謝が生体を維持するように、武家も商家も世代交代には実子も訓育するが資質を見極め利発な婿養子や養子を迎え、商家は武家株を買って家格を上げることもできるシステム。
文献史料もさることながら、北斎・広重などの道中記浮世絵など絵画史料があるから、応用してこれだけの想像創作が出来る。人口でも識字率でも常備武装兵力でも世界一の都市であった江戸(黒船の火力にだけはおじた)は文化(大宰治に言わせると文華)でも世界一であったと思う。 -
未来にて、免許証を持てば、過去に遊びに行ける。
絵日記のように、行った先でのちょっとした事。
そして免許を取ったからと言って
何をしてもいい、というわけでもなく。
読み進めていけば、その辺りも分かってくるし
等級があるのも。
しかし、どうやって帰還していたのでしょう?? -
杉浦日向子
江戸アルキ帖
江戸散歩カラーイラスト集。江戸名所をモチーフとした風景画と人物画が多く掲載されている。文庫より大型本で見たい一冊。
若旦那の着流しな感じ、芸者の艶、庶民の明るさなど 江戸人の表情を描かせたら 著者は一番だと思う。力作感がなくて、他愛ない感じが いい。
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1ページの絵と1ページの文章。日付と天気。江戸の町のお散歩ガイド、あるいはタイムトラベル絵日記。ただひたすら江戸の町を歩く。その日の気分で行き先を決める杉浦さんのように、適当に開いたページを読むのも良い。のどかな江戸の町に、自分も降り立った気分になれる。
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カラーのイラスト127点が収録され,江戸の名所を現代からタイムスリップしたように,杉浦日向子が散歩の延長でみてきたようなリポートをする。
読んでいるうちに,こちらまで、そんな場所が今でもありそうな気になってくる。 -
この本を読みさえしなければ。
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週に一度江戸を歩いて、その風景を現代に帰ってからスケッチします。
っていうコンセプトで書いた歴史エッセイ。
清々しい江戸の風景に、ぽつぽつと呟かれる文章に魅かれた。
五年後、江戸時代の魅力にとりつかれたまま史学科に入学、研究も江戸文化になった。
この本を読みさえしなければ。 -
免許を得て江戸へ。
免許によって行ける範囲が変わるという。
ほしいな、免許。
江戸を訪れた日の絵日記形式で読みやすかったです。 -
杉浦日向子の見てきたような江戸風景の漫画と小文。魅力ある文章を書ける作者にはあまりにも少ない量の小文であるのが難点
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のっけから何の断りもなしに日本橋へ「行って来た」と、シレっと言ってしまう師匠。タイムトラベル、免許、管理局という単語が忍び込んできて、SFなんだろうけど、師匠のは完全に紀行文だ。カラーイラストは、本当に江戸の町へ行って見て来たような感じ。日本橋が現代と江戸の出入り口になるということから、徒歩か猪牙舟だけが頼りで、自ずと行動範囲が限られるのが残念。師匠が旅するのは江戸中期から後期にかけて。この年代を選んだのは、やはり江戸文化が「枯れている」からか。速読してはもったいねー。ゆるり、楽しみながら読みてーものだ。
著者プロフィール
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