- 本 ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101149127
感想・レビュー・書評
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時々思い出したように、杉浦日向子の絵を見たくなる。
ーそうそう、この風流を、まだ俺はわかるんだぜ
などと、思いたいのかもしれない。
カバー裏の彼女の紹介文を見たり、あとがきの日付をみて、この本が月4Pの連載で、4年の月日で完成したことを知る。だとすると、これを描き始めたのは、25歳の頃だということになる。人生の粋も渋も枯も艶もわかったような絵を、どうして彼女は描くことが出来たのか?
田辺聖子が序文で、
ーこの本にえらび採られている古川柳は、すべて古川柳の代表作ともいえる佳句である。
と言っている。
「仲人を こよみでたたく お茶っぴい」などは、今はない暦やお茶っぴいという単語はあるが、何と無くわかる。「おちゃっぴい へそから出たと 思って居」となると、昔の近所に居た女の子のことを思い出した。
「細見を みてこいつだと 女房いい」となると、細見(さいけん)が何か、わからぬとお手上げだ。なんと遊女名鑑らしい。江戸にはそんなものまであったわけだ。杉浦日向子の女房は、その名にぎゅうっ‥と爪を立てる。おゝ怖。「火箸にて野暮め野暮めと書いて見せ」などは、言葉はわかるが、そんな状況は、現代では絶滅している。「雨宿り 惜しい娘に 傘が来る」もう絶滅はしているが、気持ちはまだ絶滅してはいない。
2017年8月16日読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編まんが集。古川柳を冒頭と末尾に絡め、それをフックに江戸の町人の生活ぶりを切り抜いていく。おおらかで洒落がある。
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江戸時代から続く人間のひきこもごも。
ほのぼのとした日常、恋の歌に嬉しくなる。
「しかられる たびに息子の 年が知れ」
「雷を まねて腹がけ やっとさせ」
「風流江戸ごよみ」や「半七」でも思ったけど、身分の違いや貧富の差が今よりあることで恋愛が一大事になることも多い。
おおらかな一方で感情表現が激しく男女の派手な喧嘩も「あるある」、まさに江戸の花とされているのがおもしろい。
「胸ぐらを 取った方から 涙ぐみ」
「ほれたとは 女のやぶれ かぶれなり」
「細見を みてこいつだと 女房いい」
読みやすい漫画での自然な補足でスッと内容が入ったきてとても読みやすかった。
これがいちばん好き!
「れていても れぬふりをして れらたがり」 -
(2006.08.12読了)(2006.07.09購入)
先日、初期作品集「ゑひもせす」を読みました。「風流江戸雀」は、1988年文芸春秋漫画賞受賞作品とのことです。単行本は、1987年5月に潮出版社から刊行されています。
一篇4頁の中に川柳二首をはめ込んで、江戸庶民の生活を生き生きと描き出しています。「ゑひもせす」と同様、結構、艶っぽい話もありますが、上手に描いています。
川柳を文字だけで読むとどういうことか分かりにくいのが、杉浦さんの描くショートストーリーによってよくわかるようになります。
花の雨 ねりまのあとに 干大根
花見に行って、急に雨が降ってくると、若い女性が着物の裾を上げて急ぐ姿の後ろに、お婆さんが続く絵が描いてあります。
しかられる たびに息子の 年が知れ
母親が息子をしかっている絵に、「まったくこの子は二十歳にもなって!!」という台詞がついています。
絵がなくてもわかる川柳もありますが、杉浦さんの絵によって江戸の庶民の姿がよくわかります。楽しみながら、江戸が学べてしまう。
絵師 杉浦 日向子(本名:鈴木 順子)
1958年11月30日 東京生まれ
日本大学芸術学部中退
1988年 『風流江戸雀』で文芸春秋漫画賞を受賞
2005年7月22日 下咽頭癌のため死去。46歳。
☆関連図書(既読)
「ゑひもせす」杉浦日向子著、ちくま文庫、1990.07.31
(「BOOK」データベースより)amazon
川柳は俗なるものではあるけれど、俗きわまれば雅にいたるもの、何でもない日常の瑣事を詠んで人生の核心を衝くのである。この本にえらび採られている古川柳は、「柳多留」の中でもことさらの佳句で、古川柳の代表作ともいえるであろう。 -
目も耳もたただが口は高くつき
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江戸川柳を題材にした漫画。久しぶりに杉浦さんの本を読む。江戸後期、厳しい身分制度の中でも庶民は楽しむことを忘れていない。江戸の雰囲気、時間感覚、男と女の情など、やっぱり著者は伝えるのが巧い!
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杉浦日向子さんの江戸風物漫画、ほっこりできます。
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古川柳十七文字から浮かびあがる情景を生き生きと描いた作品。中には浮世絵がそのまま動き出したような印象のものもあり,何度読んでも引き込まれる。
著者プロフィール
杉浦日向子の作品





