人斬り以蔵 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152035

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎 歴史小説中編 八篇
    戦国から幕末の人物像を描く。
    中編とはいえ、それぞれの一生又は半生を追って、リアルな作品ばかりで、その人生から抜けられないので一日一編のペースで読了。

    「鬼謀の人」鬼謀は、優れたはかりごと。
    大村益次郎 維新十傑 日本陸軍創始者 陸軍建設
    天才的軍事戦略家
    その昔感銘を受けた『花神』と同人物の話なのに全く気づかず、自分にがっかり。ぎゅっとなっているので、必要な明治維新に必要され去っていった感じ。大河ドラマの中村梅之助さんは、ビジュアルが似ている事はわかった。

    「人斬り以蔵」
    岡田以蔵 土佐藩士 四大人斬り(!)
    足軽出身を最期まで引きずって、暗殺者として生きる。武市半平太に見出されるが結局はわかり合えていなかったようだ。何処かで読んだようなと思っていたが、コミック「サムライせんせい」だわ。

    「割って、城を」
    古田織部正の影武者 善十 
    この作品は、少し他と違う感じ。茶人で目利き、金継ぎに自身の芸術性を取り込む古田。その策略的な行動を謎めかして書かれている。その策略の一つに衆道まで使う。武士の人生らしくない生き方。

    「おお、大砲」
    中書新次郎 200年大砲を守ってきた一族
    現代にも通じる主題。口頭伝授の不確かさ。過去の遺物の哀愁。江戸幕府の崩壊と哀愁と重なる。

    「言いふらし団右衛門」
    自身の才能を宣伝しまくる武士の話。

    「大夫殿坂」
    兄の死の真相を探り新選組への敵討ち。遊郭でのお遊びが艶かしい。

    「美濃浪人」
    所郁太郎 幕末の医師 かなりの才人だったが恵まれなかった。面白いことに 井上多聞の命を2度助ける。そこに歴史上に現れる。

    「売ろう物語」
    二人の後藤又兵衛 ナマズの又兵衛は武士に生き、柿の又兵衛は 商人として生きる。しかも幼なじみという偶然。

  • 2020/8/17読了。

    歴史上の偉人やその周辺の人々を生き生きと描いており、教科書で学んだ人は確かに生きていたんだなあというリアリティを感じた。

    人がどう生きたかを淡々と書いているだけのようにも読めるが、我々とは違う時代を生きた軌跡というのはそれだけで面白い。
    それだけで、と書くと司馬遼太郎氏の功績を認めていないようになってしまったが、そこは当然に認めている。
    軽妙な語り口や焦点を当てる人選のセンスなど、挙げたらきりがない。
    短編というのが惜しいと思うほどどれも面白かった。

  • 亡くなった祖父の部屋から頂いてきた。

    元々幕末の龍馬を取り囲む人たちが好きなので、以蔵の話を目当てに読み始めたら、あれっ以蔵が出てこない。大村益次郎?と、そこで初めて短編集ということに気づく。
    有名どころやそうでない人たちが幕末や戦国時代を生き抜いた短編集。
    司馬遼太郎の小説は、登場人物が実在するにしろしないにしろ、
    そこに生きていたんだと圧倒的に感じるところが面白い。

    一番刺さった話は美濃浪人。
    井上聞多は知っていたがこの人の生涯のことは全く知らなかった。
    井上聞多が幕末を生き、明治に活躍することができた理由の一つの話だが、井上聞多側ではなく命を救った側の話だから面白い。
    私たちが教科書で学ぶ所謂有名な歴史上の人物たちは、世間的には名もなき人物たちとの交流の上で歴史上の人物たる人になっているのかと思うと感慨深いものがあった。
    これだから歴史は面白い。

  • 時代の変革期に生きた人物像を探った司馬遼太郎氏の全8篇の短編集。土佐の足軽から殺し屋となった岡田以蔵を追った表題作、日本陸軍建軍の祖と言われた大村益次郎の『鬼謀の人』、『美濃浪人』は、井上聞多(薫)の命を救った所郁太郎を、『大夫殿坂』は、兄の仇討のため津山藩を脱藩し、新鮮組伍長(浄野彦蔵)を討った井沢斧八郎を、大坂夏の陣で豊臣秀頼陣下の五将として采配をとり、勇猛果敢に討死した後藤又兵衛の『売ろう物語』など、歴史の裏舞台を追体験できる逸品揃い。

  • 表題の「人斬り以蔵」こと、岡田以蔵を見出だした土佐勤王党の武市半平太、目当てで本書を選んだ。

    中短編、八編 収録。
    そのなかでも、「お お、大砲」と「美濃浪人」が良かった。

    「お お、大砲」の中書新次郎と平山玄覚房との"奇縁さ"には、ほくそ笑んでしまう。
    両者とも縁があってもその後は、それっきりの付き合いで、思い出の中で思い返す程度に留めているのが、却って清々しい気分にさせてくれる。

    「美濃浪人」の井上聞多(井上馨)と所郁太郎も、奇妙な縁がある。
    医者の郁太郎は、二度も聞多の瀕死を救ったのだ。

    この美濃出身の志士、所郁太郎は無名であり、経歴、正体不明の人物である。

    そんな人物を拾い上げて物語にしてしまう、シバリョウさんは凄い!

    有名無名、架空の歴史上の人物の入り乱れを存分に楽しめた。

  • いろんな作品でいろんな以蔵が描かれているけれど、わたしの中の以蔵像はこの「人斬り以蔵」とこれをモデルにしたであろう「おーい!竜馬」の以蔵。
    なぜっていちばんもの悲しいから。悲しいじゃなくて、もの悲しい。
    腕っぷしは強いけど頭は弱く、それゆえに悲惨な人生を歩んでいく。時代も悪かった。
    彼にたいして抱くのは同情でも憐れみでもなく、なにか別種の感情なんだよなぁ。
    なんど読み返してもその感情の正体がわからない。

  • 江戸時代付近は名前とその人がどんなことをしたのかというフワッとした知識しかありませんでした。この本を通じて内面や詳しい動きなど知ることができました。

  • 表題作の他、大村益次郎さんなど歴史上の人物を題材にした短編が合わせて8篇収められていました。

    特に人物の妙を感じたのが古田織部さんを扱った『割って、城を』でした。

    織部焼が好きってのもあるんだけど、そこらへんに転がっているたいしたことのない茶碗を織部さんが己の手に納めて「たいしたもの」と言うことで価値を造りだし、しかもわざと割って金でつなぎ自分の作品としちゃう傲慢さを若いお兄ちゃんが否定するシーンが印象的でした。

  • 上梓されて50余年を過ぎているが、どの年齢において読んでも司馬作品には普遍的な魅力がある。著者が若きころの作品は、後の作品と比して当然に語り口も違うし、艶噺もしきりながら、それがむしろ新しさを思わせたりする。実像との合致のほどは知れないが、大村益次郎の朴念仁ぶりが人物像を一層引き立て、その功績が心に刻まれる。そのほか、近世、近代史のなかで亜流にあった人たちも、作中にどんどん登用され、人知れず時代を動かしてみせる痛快さに酔う。

  • 初めての司馬遼太郎!
    短編物語。岡田以蔵が好きで読んだ。さらに好きになった。幕末大好き。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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