峠 (上) (新潮文庫)

  • 新潮社 (1997年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (677ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152158

感想・レビュー・書評

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  • 幕末における越後長岡藩の家老、河合継之助を題材とした歴史小説。
    上下巻のうち、上巻では、江戸・横浜への遊学や山田方谷への弟子入り、藩政改革(賭博の禁止や娼妓の禁止など)を中心に物語が進行する。時代としては、徳川慶喜の大政奉還まで。
    以下、感想。
    司馬遼太郎が無名の歴史上の人物である河合継之助を題材にした理由は、上巻だけを読む限りでは見当たらない。確かに、坂本龍馬のような先見の明に富んだ人物として描かれている。また、織田信長のように合理的精神の持ち主であるようにも伺える。
    継之助は、奇抜かつ斬新な思想を持っており、中途半端な行動は起こさない人物のようだ。そして、非常な自信家でもある。
    このような人物像に作者は惹かれたのかも知れない。様々な逸話は読んでいる側としても痛快であった。
    ただ、無名の人物であるが故か、挿話の寄せ集めの感は否めず、この後、どのような物語となっていくのか、歴史にどのような足跡を残したのか、楽しみにしながら下巻に進みたいと思う。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00271991

    【スタッフコメント】
    峠“最後のサムライ 

    徳川慶喜による大政奉還も奏上された幕末。
    小藩・越後長岡藩の河井継之介。
    彼の壮大な信念は、混沌を迎えた日本を変えること

    彼を支え続けた妻との深い愛情。
    そしてリーダーとしての彼を信じ、運命を共にしようとする男たちの熱い絆の物語

  • 同著者によって書かれた予告編を読んでから本編を読むことになった小説というのは初だろうか。短篇集「馬上少年過ぐ」の中の一本として含まれていた『英雄児』 に先に触れることとなり、既にこの作品の存在は十分意識していたが故に主人公の名に触れた瞬間読むことをためらったりもしたのだが、結局出会った順に素直に従った。履歴を紐解くと確かに短編の方が時系列としては先に書かれたらしいが、シバさんはその短編を書いたあとどうしてもきちんと書かねばならない気になったらしい。その辺りの心境を味わうがごとく残りの本作を楽しみたい。

    年末年始に日本列島津々浦々をまわった際、朝に東京を出て夜にいわきへ到着しているとして、その道程にどんな酔狂な選択肢がありうるだろうかと話していたなか友人から出てきた言葉の中に「『峠』ゆかりの地を経てというのはどうか。」というものがあった。これについては「まだ読みきっていないので次回以降に温存すべし」と回答していたこともあり、それもあって戻って来てすぐに着手したという次第。奇しくもまた来月に5日間だけ訪日することとなりそうで、さてこの越後長岡藩には足を踏み入れることになるのだろうか。

    乞うご期待といったところ(笑)

  • 長岡藩の河井継之助を主人公にした幕末小説。徳川三百年とは、徳川体制からどうやって近代の体制に移行できるか、そして日本にやって来た諸外国に追いつけるか、継之助を通して分かりやすく描かれている。

    徳川譜代の長岡藩、その中でも大きくない河井家だが、継之助は時代を理解し、その枠組みの中で、どうやって長岡藩が生き残れるかを考える。江戸へ出て、横浜を訪れ、今度は備前松山に師を訪ねる。

    継之助は、藩主に認められ藩の要職に就き、改革を次々と実行する。目的は財を蓄え、近代兵器を調達し、時代がどのように動くにせよ、スイスのように自立、中立できること。しかる後に、継之助は、横浜に来たスネルから、洋砲と洋銃を調達する。

    大政奉還は、徳川慶喜の奇手だったが、朝廷側の薩摩藩に見切られ、徳川家存亡の窮地に追い込まれる。

  • 再読、★評価は読了後に。
    なかなかに面白い、主人公に共感できるかはさておき、魅力的なお話が展開されとります。やはりこの作家の本領は幕末にあり、加えてこういった歴史の「傍流」にある人の発掘力は認めざるを得ない。またこの時期は最も脂が乗っていたのかも。

  • 前半は面白くない

  • 久しぶりに司馬遼太郎の本読んだらすごくおもしろかった。主人公の河井継之介に関してはまるで知らなかったけど、素晴らしい人物。7万4千石の長岡藩の中の牧野家の家臣だが、先見の目を持ち、陽明学の考えに基づいた行動は見ていて非常に気持ちがよい。
    というか、この本、幕末の話だけど、幕末って朱子学的な考え方と陽明学的な考え方の対立にも見える。また、どんなに先見の目があり、考えがあっても人間には立場というものがあるというのが河井継之介を見ているとよくわかる。
    統治者からすると朱子学を官学にしたくなるのは非常にわかるが、陽明学を基本とした学問にしたら、もっと日本という国の将来は変わっていたと思うし、現代にもその影響はあったと思う。まぁ陽明学を基本の学問としたら正直江戸幕府はあんなにも続かなかったかもしれないが。朱子学の流れというのは現代にも続いている気がするのだが、それがこう感覚的に日本が廃れてる根本的な原因にもなっているのではないかと思ってしまう。保守的な変化を好まないトップの奴らは本当に嫌いだ。
    別にこの本は朱子学だ陽明学だって内容じゃないんだけど、そこのところがすごく読んでいて興味深かった。おれの大好きな三島由紀夫もそういえば陽明学が好きだったな。
    上巻にてすでに大政奉還しそうな勢いだったけど、下巻はどういった話になるのだろう。すごく楽しみ。
    正直幕末って色々なドラマがあるよな~。前読んだ燃えよ剣は新選組サイドの話だったし、今回の河井継之介は譜代大名の家臣だし、革命側の薩長の話も読んだら楽しそうだ。
    現代こそ河井継之介的な人間が必要でしょ!ってすごく思った。

  • 継之介が参考にしていた陽明学というものが気になる。変化の激しい怒涛の時代において人はどうあるべきか、それはこの物語の時代である幕末に限らず現代でも考えるべき事なのではないでしょうか。花魁の小稲さんが本当にいい女で際立っていた。読んでいて継之介は本当に先見の明があると思っていたけれど、それはあの時代にはとんでもない発想だったんでしょうね。それだけの能力を今の日本人は持っているかしら。

  • 最近は、司馬遼太郎の書く 男に、興味がある。
    河井継之助の物語。
    長岡藩で、もだえる。信濃川を登って行くと、
    江戸がある。
    器が大きすぎて、小さなことにこだわらない。
    というか、不器用な人であるが、常に原理を求める。

    急ぐ心。心の命ずるままに、行動する。
    その心を、したて上げて行く。
    欲しいのは、知識ではなく、どう行動するのか。

    侠客の侠の字は、ニンベンに挟むとある。
    左右の子分に挟まれ、それを従える。

    ツラで、全てを察する。ツラで、相手のこころのキビを分かるようになる。

    本画は志を表すが、席画は、才気をあらわす。

    オレの生命は一個の道具だ。
    道具なればこそ、鍬はよく土を耕し、カンナはよく板をけずる。
    オレもオレの生命を道具にこの乱世を耕しけづる。

    酔生夢死。なすこともなくこの世に生き、そして死んで行く。
    その覚悟をする。

    河井継之助は考える。
    激動の時代に、国をまもり、国を発展させるためにどうするのか?
    武士は 刀を大切にして あがめるようにしているが それで良いのだろうか?
    銃が登場することで、刀の意味はなくなっていく。
    近代的な戦争が始まっているのに,刀で立ち向かおうとする無意味さ。

    藩を近代的にするために、チカラをつける。
    賭博、売春をやめさせる。
    コメから 金への貨幣制度への変換。
    自立した考え方。
    富国強兵の政策が あまりうまく 展開されていない。

    オンナについて 小稲、織部、おすが。妹八絵。
    男の領域に口を出さず、うけとめる。
    河井継之助はなぜ女郎買いが好きだったのか。

    大政奉還をした 慶喜は どのようなことをイメージしたのか。
    そして,それに継ぐ 老中たちは。
    結局は 次の時代のイメージが 充分に形成されなかった。
    ナポレオンのような フランスの皇帝制。

    天皇と将軍というものの 人の評価は。
    尊王という思想は 水戸藩が 形成したながれだった。楠木正成。
    攘夷を唱えていた 薩長は、少なくとも 江戸幕府を倒すための方便だった。
    鳥羽伏見での 大きな転換点は どこにあったのか。
    薩長には シナリオライターがいた。

    覚悟の差異。薩長には 命を張る覚悟を持っていた。
    河井継之助は、そのような覚悟を持っていた。

  • 実力で家老になった河井継之助。
    大政奉還も成り、これから更に激動の時期に入っていくのだね。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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