城塞(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.77
  • (155)
  • (232)
  • (269)
  • (18)
  • (2)
本棚登録 : 2087
感想 : 133
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152202

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 司馬遼太郎はやはりすごい。時代の空気感や家康、淀君などの人物像をしっかり描ききっている。だから、立体的に人物が躍動し、その時代を見てきたように物語を読むことができます。危うく史実と見紛うほどのリアリティーがあります。
    家康+本多正純、金地院崇伝、林羅山、天海僧正の悪巧み四人衆の悪辣さにはとても好きになれそうもありません。普通、司馬遼太郎の作品では、最初、主人公が頼りなかったり、仕様もなかったりして親しみがわきます。さらに、その後の成長が見違えるようでファンになってしまうものです。
    しかし、ここでの家康は序盤から政略や策謀に長けてしまっています。さすがの司馬遼太郎をしても家康を悪謀家として描きむしろ徹底した狸親父としての姿が面白さの核となっています。
    今大河ドラマ「どうする!?家康」にハマっています。松本潤が清々しく、頼もしく成長続ける家康を演じています。徳川家康というある種の大物政治家兼武将を幅広く見ることができ、これも大きな楽しみです。上巻では大阪との開戦前夜までが描かれます。中巻が楽しみです。

  • あれ、、これは家康が主人公なのに、家康のことがますます好きではなくなっていく…
    関ヶ原後からの物語で片桐且元が退去するところまでが上巻。
    個人的には有楽町は織田有楽の江戸屋敷があった場所というミニミニ知識が好き。

  • 上巻は鐘銘事件がどう描かれるのかを楽しみに読み進めました。崇伝らのやり取りがたまらない。

    さらに、片桐且元が退去する際に武装し、人質交換するあたりの臨場感。次巻以降の展開にますます期待してしまいます。

  • 『関ヶ原』の内容をまだ生々しく覚えているうちに続けて『城塞』も読む。三成が滅び、徳川が形式的には豊臣の臣下でありながら実態として天下をその掌中にほぼ収めてしまっており京には形骸化しながらも一種の権威というか役割を持つ公家世界があるという複雑な情勢が司馬さんの丁寧で質実な筆致で分かりやすく描かれています。徳川の権勢が豊臣家のそれを凌駕していながらも、それは徳川家というよりまだまだ老人となった家康個人の命に依っているものであり秀吉の死後家康がしてのけたように掠め取られかねないという不安定ななか、徳川に反旗を翻す旗印とも為り得る存在の秀頼を亡き者にするべく、人たらしたる家康が深謀で悪辣な謀略計略をこれでもかと繰り出し、詰め将棋のようにジワジワと豊家を追い込んで行く様が再現されています。秀頼に対する家康の陰湿で執拗な仕掛けは、司馬さんをして「犯罪的」と言わしめるほどで、秀頼への忠義の心故に家康に手玉にとられ結果として家康に利するように踊ってしまう大蔵卿局と大野修理親子と、秀頼大事のあまり害をなしてしまう母淀君の振るまいようは読んでいて辛くなるものがありました。後藤又兵衛や真田幸村を始めとする能力も気力も人望もある武将たちが本領を発揮出来ぬままもはや勝利は望めず後世に恥じぬ戦いをしようと奮戦し次々命を落としてゆく終盤は、読んでいる私も「もはやこれまで」ともう読み続けられない気持ちになりました。大変面白く満足して読了しましたが、とても疲弊しました。大河ドラマ「真田丸」をもう一度通しで見たくなりました。

  • 関ケ原の合戦(1600年)の後、豊臣打倒の野望に燃える徳川家康の調略によって、太閤秀吉の遺児・秀頼とその母(淀殿)が籠る大坂城が炎上するなか、成す術もなく自害して果てる(1615年)までを克明に描かれた歴史長編小説です。“狸親爺“などという愛嬌ある家康像など木端微塵に打ち消してしまう、豊臣への締め付け、陰湿ないじめ、大阪城内での間者の諜報戦など、ありとあらゆる悪辣な手段を講じる弱肉強食の徳川一門に対し、世間知らずの恩顧頼み、その弱みにつけ込まれる情けない豊臣方に驚嘆させられる上巻でした。

  • 40年振りの再読。
    大阪冬の陣•夏の陣で陥落してゆく大阪城と豊臣家を描く。
    淀殿の戦さに対するトラウマと中途半端なプライド、大阪方に策謀をめぐらす家康と崇伝の大悪党ぶり、豊臣家家老の片桐且元の逐電などめちゃくちゃ面白い人間ドラマ。全3巻。

  • 大坂の陣を描いた作品。謀略の限りを尽くして豊臣方を追い込んでいく徳川家康の悪辣振りは嫌悪感を覚えるほど。そして、彼に翻弄される淀君は自ら滅亡の道へと歩んでいきます。最後に一花咲かせようと、死に体の大阪方に馳せ参じた真田幸村、後藤又兵衛ら武将たちの生き様は胸を打ちます。

  • 家康による悪巧みの物語。
    戦国時代の幕引きとなる「大阪の陣」だけど、関ヶ原から十数年後で歴戦の武将はもういない。家康1人が戦国の気風を知っているという書き方になっていて、自軍の若い武将を嘆くところも時代の変わり目というところでしょうか。
    それにしても徹底して家康を悪者にし、豊臣方は無能の集団として描く。近年、これほど無能な「淀の方」は描かれていない。どこで潮目が変わったのかね。

  • 売却済み

  •  大阪の陣をテーマにした小説。文庫本で読むと上中下の3分冊なのだが、この上巻ではまだ大阪の陣は始まらない。随想部分が多い歴史ものというよりは、人物が生き生きと動き回る時代小説のような雰囲気が強い。個人的な好みで言えば、「覇王の家」のようなものの方が好きなのだが、それでもさすが司馬遼太郎の小説、楽しみながら読み進めた。

全133件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

司馬遼太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×