- 本 ・本 (592ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101152219
感想・レビュー・書評
-
NHK大河『どうする?家康』が面白い。松本潤演じる家康の爽やかさ清々しさ。エンタメ間満載です。さて、本作『城塞』では大阪冬の陣、夏の陣が描かれています。司馬遼太郎の作品では主人公のことを好きにならずにはいられない魅力があるのが特徴です。が、それをもってしても、家康は好きになれない。大阪冬の陣の発端となる難癖は「犯罪的」とまで書かれているし、本多正純と共に「奸謀」を巡らせていくさまは神懸っています。また、表だってこれらのイメージをださないようにする狸ぶりはすごい。全国の大名に動員をかけることで、主家殺しの仲間にしてしまうことなどスケールが大きいです。
対比されるのは豊臣家の惰弱さとその中にあって光り輝く真田幸村、後藤又兵衛、木村重成です。これら登場人物のダイナミズムか魅力満載です。
『人間の運命はその人物の性格によって八割がた決まってると言われるが』など歴史から得られる人間学も溜め息をつくほど見事です。
さて次は下巻です。あっけなく終わってしまうのかどうか。司馬遼太郎の描きかたに注目です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
真田幸村や後藤又兵衛の活躍、そして小幡勘兵衛目線の大坂冬の陣が終わり外濠を埋めてしまうところまで。
家康の狡猾さが凄まじい、、、
-
大坂城攻略の執念に燃える家康の言動を〝戦いというよりも極めて犯罪の色彩が濃く、これを犯罪とすればその犯行計画は精密を極めた〟と語られる凄まじいまでの悪辣非道ぶりは、大阪冬の陣の講和条件とした城の外濠(三の丸)を埋めるにとどまらず内堀(二の丸)まで埋めるといった、豊臣滅亡に大手をかける比類のない悪人芸を披露する家康でした。関ケ原で空しく敗れた真田幸村、後藤又兵衛ら豊臣恩顧の武将の覚悟は、城外で死に場所を求めて華々しく散ることでした。豊臣の衰退は淀君の傀儡が起因であり、おのずと崩壊する定めにあったと・・・。
-
売却済み
-
大阪冬の陣を中心に描く中巻。真田幸村や後藤又兵衛の活躍が虚しく、あっけなく和睦となってしまう。
徳川家を守るために徳川家康の暗躍ぶりは、凄い。狸親父の本領発揮というところか。関ヶ原の戦いで敗戦して、豊臣家官僚の質が大きく低下してしまったことも大きな原因の一つ。徳川家康の敵ではなく、負けるべくして負けたという印象だ。 -
徳川方の間諜、勘兵衛を通して大阪夏の陣のドタバタ劇を描く。関が原では石田三成の西軍に味方した大名は領地を奪われることになる。だが、大阪城には淀殿と秀吉の子、秀頼が公家化した様子で侍女と生活をしている。将来にわたり火種になり得る秀頼を、亡き者とする計画を立てる家康であった。
難航不落の大阪城の堀を埋める過程では、大阪側の軟弱化した様子とは対照的に家康の執念が凄まじい。二代目将軍秀忠の凡庸さにあきれる家康と、実は愚鈍ではない秀頼の対比が面白い。家康も高齢のため徳川幕府の将来を憂い、本当の敵はいつ尽きるともしれない己の寿命であると言い切るところがブラックジョークである。 -
真田幸村、後藤又兵衛などをかかえるものの、女に権力を握られているがために滅んでゆく大坂側の哀れさが感じられる。もし、秀頼に発言力があったら、どう歴史が動いていたのだろうか、要所要所の場面で妄想を描きながら、読み進めることができ、非常に楽しめる作品の一つであると思う。
-
中巻では、真田幸村が九度山から出てくるところと、真田丸の前に敢えておとりとしての笹山を残しておいたくだりが鳥肌が立った。
2024.06.09読了 -
数多くの名将・猛将を難攻不落の大坂城に迎え、部分的な戦闘(真田丸など)では完勝。しかしその結果は、一部の堀を埋めて講和(結局全部埋められる)
。
表面的に見るとあまりに不可解な現実ですが、読み進めると当然の帰着のように感じました。すなわち、当時の大坂方の組織的体質と取り巻く環境と考慮するとどう足掻いても戦略的な成功は難しかったのではないでしょうか?
しかしながら優秀な個人がその力を発揮しきれず窮地に陥っていく様子を見ると、もう少し何とかならなかったのかなぁという思いで一杯でした。 -
大坂方の中枢にいる大野修理は、この土壇場にありながら、戦略より政略でいこうとしていた。豊臣家の威光がなお、有効だと信じて。「不幸な計算ちがい」(p266)である。
この大坂方のおバカさんを利用することで、狸おやじである家康の本領が発揮される。冬の陣の和睦の席で、なんと家康は本多正純(上野)に対して「上野も修理にあやかれ」(p522)と修理をたてにたてた。戦国を生き抜いた一代権力者におだてられ、修理は「一大感動を発してしまった」(p523)。もちろん大ウソである。しかしこれが、家康の大いなる布石。バカを中枢に留めておき、真田幸村らの意見が通らぬようにする策略だった。
家康の意図通りになる大坂方。その中枢を見届けたスパイの小幡勘兵衛は「愛想がつきた」(p581)。ここまでアホだとは…である。いくら有能な部下を抱えても、上がバカなら同じこと。日本型組織の現実を見せつけられるようで、生々しい。
著者プロフィール
司馬遼太郎の作品





