- 本 ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101152295
感想・レビュー・書評
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三巻目。長崎から帰国した良順。江戸の医学所の頭取となったが、幕府瓦解と内戦の足音が迫る。そのなかで将軍・一橋慶喜の主治医に就く。新撰組の屯所の衛生管理を行い、14代将軍・家茂の最期を看取る。
新撰組が食用に鶏や豚を飼っていた話は知っていたが、滋養のために肉食を薦めた人物が松本良順だったとは知らなかった。病人と健康な者の部屋を区分けしろ、飯場の生ごみの後処理しろ、風呂に入り身体を清潔に保て、などなど衛生管理の考えや定期的な健康診断を男ばかりの集団に根付かせた功績は大きい。
本当に目まぐるしい時代と良順の人生。その渦を俯瞰的に描く司馬の文章が読んでいて心地いい。
ただ、ここはなんとも良順の弟子である伊之助の異能ぶりに惹かれる。驚異的な記憶力の持ち主で語学の天才だった。この時代に蘭語だけでなく英語、中国語、独語、ラテン語ですら読み書きできた。反面、社会性の欠如から周囲とトラブル続きでその言動にイライラする。しかし、幕末にこんな人物が本当にいたのか?と思うほど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
間違って二冊を購入してしまった事実に気づいて意気消沈したのもつかの間、三巻目にきて意外や意外のオールスター出演。本作はてっきり幕末・維新期の違う側面ばかりを追い続けるのかと思いきや、とたんに近藤、土方といった驚きのキャストが登場し、そこへ家茂、慶喜といった名前が躍動して更に厚みを増す仕組み。ますます目が離せなくなってくる。
新撰組とのふれあいの中で印象に残ったのは山崎烝のくだりであった。彼の名は申し訳ないが「燃えよ剣」で触れていたにもかかわらず記憶からこぼれ落ちかけていたのであるが、「鳥羽・伏見の戦いから江戸へ戻る船の上での水葬された」という言葉が引っ掛けてくれた。この部分だけでも再読したいという思いが俄然強い。
本来なら別の司馬作品である「最後の将軍」も読了しているが故に慶喜の登場場面に心躍らされるべきなのであるが、そこは本作品の視点が良順らにおかれているからであろう、家茂のその人柄につい酔いしれてしまった。
「そちは居眠りの名人だ」
にはつい同じく目をうるまされてしまった。
世の中には人に激震を与える人物と緩やかな波紋の如き揺れを与える人物とがいる。そのどちらもがやはり魅力的であり本三巻の締めは明らかに後者によって彩られていた。 -
おもしろくなってきた
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長崎から江戸に戻った松本良順は伊東玄朴らが創立した西洋医学所の頭取となる。そこでポンペ式の授業を取り入れようとするも保守的考えが根強い当時の書生から反発を受けることとなる。その後幕末の動乱の中、京都に滞在していた一橋慶喜の主治医として京都に上る。その後江戸に戻るも、征長戦争のため将軍家茂が大坂に向かうのに帯同することとなる。
一方伊之助は祖父の伊右衛門によって平戸から佐渡へ連れ戻されてしまう。佐渡でも他の漢方医を敵に回してしまうように、人間関係はうまくはいっていない。
伊之助は斜視と性欲の支配によって素晴らしい才能も無にきしている感じがあるな。
幕末の混乱は今じゃ想像もできないくらい酷いものだったのだろうな。 -
いよいよ新撰組登場!俄然面白くなる。
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伊之助は、賢いというより暗記力の高い人であったからこそ、語学の達人となり得、医学も習得できたということだったんだな。所詮医学は勉強する上では暗記一辺倒のとこあるけど、臨床出たらそうもいかないことが、この人物を通してだけでも伝わり、一年後の自分にも重ねてしまった。
当時は色んな流派というか宗派というか、医学というのが普遍的ではなく、裏付けなしに治療を行なっているようで、怖いな、と思った。確かに今も先生によって言うことは違うけれども、根幹は皆同じで、医学教育の重要性を感じた。この状態から、今の医学になり得たのは、先人達の苦労のおかげだと思うのだが、今は伊東玄朴のような医者ばかりで、関寛斎のようなものは少ないのかもしれない。と言うより、伊東のようなものが悪目立ちしすぎて、どの時代も結局医学は発展しても医師の素質は変わらないのだなと思ったら、悲しくなった。
ついに良順が新撰組と出会った。4巻が楽しみだ。 -
転。結はどうなるか。
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22/8/27読了
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どうも小説として起伏に欠けるなぁ。
幕末の人物列伝いう虱潰し的な要素ももしかすると否定できないのかも。 -
右往左往する幕府。伊之助は存在感無し。関寛斎などほかの人物も掘り下げられる。後半、新選組が出てくる。
脱線・小ネタが多く、どこまでが史実でどこからが創作なのかわからない。歴史書を読んでいる感じ。
著者プロフィール
司馬遼太郎の作品





