その禄わずか四十俵の小倅から、今や陸軍総裁となった勝。
しかし朝廷に対する慶喜の恭順の意は通ぜず、薩長倒幕軍の東征はとどまるところを知らない。幕府軍には脱走兵が続出、江戸の運命は風前の灯となった。
勝一代の名文、和平への心血を注いだ一書を携えて、官軍総参謀西郷隆盛の許へ赴く山岡鉄舟。二百六十年の大権を握った徳川幕府の最期、江戸開場の日は刻々と迫る。
(当書裏表紙あらすじより)
司馬遼太郎の幕末モノはほとんどを読破しています。
だから幕末の少々判りにくい変遷も大体判っています。
でもこの本の主人公は勝海舟であり、どちらかというと歴史の表舞台ではなく裏にいたことが多い人。
京都中心に動いている歴史なのに、当の主人公は遠い江戸で謹慎中。自然、世の中の移り変わりを描いていても又聞きのような形。
だから4巻までが読みにくかったのかもしれません。
もっとも表舞台にいないからと言っても、そこを面白く読ませるのが力量だ、ということも言えるので、そういう点でいえば司馬遼太郎作品は上手く書かれていたんだな、と改めて感じました。
幕末のことは大体知っている、と言っても、実は江戸無血開城のことは良く知らなかった、ということが今回判りました。
そしてその頃のことを書いているのが本巻です。
知らないことが書かれ、物語が展開していくと面白さはグッと増しました。
面白くなるとグイグイと引き込まれ、結果的に読むスピードも速くなっていきました。
このまま一気に最終巻まで読んでしまいたいですね。