てるてる坊主の照子さん 下巻 (新潮文庫 な 47-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101154237

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクションというわけではないが、なかにし礼の身近な実際の家族を題材にした物語。
    題材になったのは、なかにし礼の妻の家族である。その中でも、妻の母親、なかにし礼の義母である石田久子を主人公にして物語は展開していく。物語の中の家族は、磐田照子と名付けられた母親、夫の春男、および、上から春子・夏子・秋子・冬子と名付けられた四人姉妹という構成。長女の春子は、フィギュア・スケートの日本代表としてオリンピックに出場する。次女の夏子はタレントとしてデビュー、舞台やテレビドラマで活躍した後、歌手としてヒット曲を飛ばし、紅白歌合戦にも出場する。
    上記の通り、これは実在の家族を題材にしたものであり、長女の春子のモデルは、グルノーブル・オリンピックに出場した、石田治子。次女の夏子のモデルになったのは、本名・石田良子、芸名・いしだあゆみである。長女がオリンピックに出場し、次女が芸能の世界で大成するというのは、レアなケースだと思う。両方が一流のアスリートなら、例えば、スケートの浅田姉妹や柔道の阿部一二三・詩兄妹などを思い浮かべることが出来るし、両方が芸能人であれば、岩崎宏美・良美姉妹、倍賞姉妹等を思い浮かべることが出来るが、アスリートと芸能人の組み合わせは、にわかには思いつかない。
    なかにし礼としては、「いったいなにが、上の二人を進化させたのか。その進化の謎を探ることが、この小説のテーマであった。」と書いている。そのために、「事実の一つ一つを、丁寧に、雲母を一枚一枚はがすように写生し再現していくことが大事な作業だった」ということも、あとがきで書いている。どこまでが事実で、どこまでがこの小説を構成するためのフィクションなのかは明らかにされていないが、それでも、小説の一つ一つのエピソードに、基になる実際に話があったのだと理解した。
    小説の舞台は大阪であり、小説の中で用いられている会話文は大阪弁。それが、小説ストーリーにテンポの良さを与えており、全体を面白く、さらりと読める。
    調べてみると、グルノーブル・オリンピックの開催は、1968年。いしだあゆみの初めての大ヒット曲は、「ブルー・ライト・ヨコハマ」であり、それを紅白歌合戦で彼女が歌ったのが1969年のことである。本人たちは仮名での登場であるが、小説中には森繁久彌など、実在の人物も数多く登場する。当時の世相を物語った小説でもあるのだ。

  • 春子はライバルのいない全国大会で優勝し、オリンピックを目指せるレベルにまで上達する。夏子もまた照子のもとを離れ、ついに上京する。テレビ出演も増え確実にスターへの道を歩む一方でレコードの売り上げは芳しくなく……若きライバルも増えた春子はオリンピックへ出場出来るのか。そして夏子はあの紅白歌合戦に出場出来るのか。二人の輝かしき娘の魂を金なるものにした肝っ玉母さん・照子の夢が叶う時がくる! 朝ドラ「てるてる家族」原作小説完結編。

    下巻ラスト。意外とあっさり書かれてるんだけど、要所要所では締めてます。夏子の芸能活動のエピソードとかはいしだあゆみさんの実際のエピソードがまじっているのかな? てるてるでは冬子のパンに救われた夏子の涙のところが、ここでは特に救われずに泣いたままだったので切なかった…いつの時代でも親元を離れて一人で頑張る少年少女というのはつらいものがあるのだろう。
    春子のストーリーで特に感動したのは国体で優勝した春子の演技のシーン。ええー雪降ってる屋外で滑るんかいなー!ってびっくりしつつも、読んでるだけで情景がザーッと浮かんで映画を見てるようだった。とても緊張する一瞬、春子が春子とだけと踊っている……まさに孤高のスポーツにして芸術であるところのフィギュアスケートの、演者にしか見られない一瞬を覗いてしまったかのような深みがありました。いやあいいですわ。オリンピックへの切符を掴んだところはドラマでも盛り上がったところだけど原作でもよかったです。
    帯にも書いてあってほーと感心してしまったのは、ドラマでも言ってたけど春男が照子にイースト菌になれって話す前に錬金術の話をするところ。人と人が協力し合うことで人は金になれるっていうの、はーっとしてしまったです。

    とても面白い上中下巻だったけど個人的にはやっぱりドラマがいい!原作はあくまで原作として好きですけどね。今からでもてるてるのシナリオ集とか出ればいいのにな…

  • すっかり春子と夏子のサクセスストーリーとなり秋子と冬子の存在感無しというか、まったくほったらかし。
    国体選手になった秋子や宝塚入団の冬子のエピソードをもっと読みたかった。

  • 昭和の戦後復興期の背景が甦る。オリンピック選手と紅白の歌手という全く異なるジャンルで、一つの家族から輩出するという事実に基く物語。なんといってもバイタリティ溢れる照子さんに負うところ大であるが、家族一人一人が個性があって、皆明るく、幸せを感じているのがいい。楽しいホームコメディであった。20.1.2.1

  • この下巻では、大団円。

  • 実際の家族をモデルにした小説ということで、今だったら、本田さんちかな。

  • 良かったけど、照子さんが自分の夢を子供に押し付けてる感がやっぱり強く、三女、四女はほおりっぱなしなのがキニナッタなー

  • 池田、佐世保などを舞台とした作品です。

  • すぐ読める。上中下の3冊もなくてもいいのに。

  • (感想は上巻のレビューにまとめて書いています)

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著者プロフィール

1938年旧満州牡丹江市生まれ。立教大学文学部卒業。2000年『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『がんに生きる』『夜の歌』『わが人生に悔いなし』等。

「2020年 『作詩の技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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