赤い月〈下〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101154275

感想・レビュー・書評

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  • なかにし礼『赤い月 下』新潮文庫。

    一種の戦争小説だろう。主人公の波子を物語というよりも、氷室の物語という色合いが強いようにも感じた。生き延びるため、欲望のためには他人をも犠牲にする波子。贖罪のために命を捨てる決意をする氷室。しかし、運命は皮肉なものだ。波子の呆気ない最後と氷室の数奇なる運命には驚いた。

    小樽から一家で満州に渡った森田家は関東軍の庇護を得て、造り酒屋となり、栄華を極める。しかし、ソ連軍の侵攻により全てを失った波子は二人の子供を連れ、過酷な逃亡へ。夫の勇太郎と再会したのも束の間、勇太郎は強制労働の果てに病で命を落とす。収容所で過酷な日々を送る波子は二人の子供を守るために再び自立の道を選択する。

    波子の密告によりロシアのスパイであることが判明したエレナは保安局員の氷室の手により殺害される。波子は、自責の念から阿片に身体を蝕まれ、廃人同然となった氷室を救おうとする。

    本体価格590円(古本100円)
    ★★★★

  • 敗戦後の満州国での日本人の過酷な暮らしと波子を中心とした男と女の愛憎劇。

  • 落胆するほどではないが、重点がぼやけ、期待はずれの感。
    主人公の波子は作者の母親がモデルらしく、激しい人間ではあるが、役不足でなく、主人公として力不足です。薄い。
    あと、その他当時の戦況、氷室の人物像、日本という国家への思い、作者が小説内にちりばめたい要素が多く、散漫になってるのが原因か、あまり感想が出てこなくて、とりあえず他人のレビュー読んでみたりした・・・やはり私と似たような感想の人が中にはいる。(同調を求める)

    小説家としての力量はどうかと思うが、アヘン中毒の禁断症状の狂気の氷室の言葉は詩的で、作詞家の本領はここで発揮される。ロシアのスパイであったかつての恋人エレナの首を、自分の手で切り落とした過去のある氷室。「あぁ、首が飛ぶ、エレナの首が飛ぶ。首は風船になった。風船は真っ赤な血に濡れて、ふわふわと、空に浮かぶ。風船は夜空の月になった。赤い月になった・・・」 タイトルでもある「赤い月」はここに由来する。冷たくて、怖くて、美しい狂気が見えた。
    本書の作者であり、作詞家でもあるなかにし礼に触れたくて選んだ作品。次は「兄弟」を読むつもりでこれ先に読んだけど、次読むかどうかは微妙・・・

  • 1

  • 満州について知りたくて史料として購入。
    引き揚げ時の過酷な描写は、買ってまで読んだ価値がありました。
    ですが全体的に説明口調で、本の世界や人物にのめりこめませんでした。
    作家になりたてのころに描かれたのでしょうか。

    自分の読むジャンルが偏ってるかもだけど、戦時の母親ってどうしてこう、男に目がない肉食獣として描かれるんですかね?
    貞淑で夫や子供思いの女性は、あの時代を生き抜けなかったと?
    波子さえいなければ、氷室やエレナだってもっとましな結末を迎えたろうに…。
    子供二人を日本に連れ帰ったことは立派だけど、いつまでも男にちやほやされたいこの母親には、胸が悪くなる嫌悪感を抱きました。

  • 激動の時代を生き抜こうとした奔放な波子を表も裏もすべて描ききったといえる作品。なかにし礼の自伝的作品であるけれども、この母親のたくましさとエゴイストな部分が隠すことなく描かれている。当時まだ14歳だった娘美咲の母親を汚く感じる気持ちがよくわかる。波子は10代から自分の愛したい人を愛し、その中で子どもも愛し、すべてを背負って生き抜いた女であったとおもう。満州の当時の悲惨さが波子の心の揺れ動きをますます引き立てていく。夫が死んでなお、また別の男を愛する波子に女の情と悲哀を感じた。常盤貴子主演の映画もぜひ観てみたい。

  • 上巻に記載

  • もの凄い人生の後半

  • 上と同じく壮絶
    昔は想像がつかないような事が
    たくさんあり戦争は本当にあってはいけないこと
    心にしみこみます

  • 06.3.16

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著者プロフィール

1938年旧満州牡丹江市生まれ。立教大学文学部卒業。2000年『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『がんに生きる』『夜の歌』『わが人生に悔いなし』等。

「2020年 『作詩の技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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